注釈の注釈による超現実詩小説
棺詰工場のシーラカンス
【六四】蛙が海馬のあたりに卵を
人間の頭蓋の中心あたりでは海馬【七三】が遊泳しているのだが、ヤシモト顧問の海馬のように、ふくらんだ腹の内膜に蛙が吸盤を貼りつけて卵を産みつけていることもある。その蛙は、音楽家のチャン・メイホアによって胡弓から弾き出された音玉じゃくし【七四】が耳の中に泳ぎ入って変態したもので、すでに三十六世代目にあたる。人が覚えるある種の感情は、音玉じゃくしから伸びた足が蛙のものとして成長しきる時期と一致するため、〈満足〉と呼ばれている。卵が音玉じゃくしに孵化すると、チャン・メイホアの曲が脳のひだ【七五】をぬって再び泳ぎ回るので、ヤシモト顧問はリズムに合わせて肩を揺らさずにはいられない。
リンク元【五三】
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