宇宙人に攫われた。
会社の屋上で日の丸弁当を広げていたら閃光に包まれ、気がついたら宇宙の果ての檻の中。
俺を攫った宇宙人は、いかにも宇宙人。グレイとかゆうタイプ。
奴らの目的は?なんでまた俺みたいな平凡なサラリーマンを?
最初は刑務所みたいな収容施設かと思ったけど、そのうちどうやら動物園みたいな場所だとわかってきた。
広い檻の中、俺同様に攫われてきた中国人やらタイ人やらが雑居して。ここはアジアの地球人って括りらしい。
別の檻に多種多様な人種、民族が収容され、離れた檻にはキリンやらゾウやら。昆虫・魚類・植物も展示されている。
連日、グレイの親子やらアベックやら俺たちを見物して大喜び。この盛況ぶり、この星は今、地球生物ブームみたいだ。
ま、地球人が別の惑星で物珍しい生物を見つけてごっそり持ち帰ったら、似たようなバカ騒ぎだろうが。
十数年も経った或る朝、懇意にしていた中国人の老人が檻から連れ去られた。入れ替わりに中国人の青年が放り込まれる。
老いるとお払い箱に?ヤバイぞ、俺も。最近、白髪目立ってきたし。
そして数年後。ついに俺はグレイたちに檻から連れ出された。た、助けて・・・。
しかし連れて行かれたのは、一人には広すぎる快適な檻、しかも食い物まで超豪華ときたもんだ。どうなってんの?
さらにその翌日、檻の中に若い娘が入れられた。それがまた日本人形みたいな楚々とした美少女っ。
「君、名前は?」
「サクラです。屋上でお昼を食べてたら攫われて」
いろいろ話してみると、サクラちゃんも日の丸弁当食ってて攫われたことや、俺は彼女の父親より年上ってのがわかった。
「どうなっちゃうのかしら、私たち」
「大丈夫。君のことは俺が守るから」
なんて言ったものの根拠なし。ホントどうなっちゃうんだろう?
数日後、学者っぽいグレイ数名が檻に入ってきた。
「実ハ貴方タチ二人、最後ノ日本人ニナリマシタ。オ気ノ毒デス」
最後の日本人?いったい地球で何が?なにやらかしちまったんだようニッポン。
「日本人ノ絶滅回避ノ為、オ二人ニ繁殖行為オ願イシマス」
ハンショクコウイ~?朱鷺かよっ。がしかし日本民族の存亡がかかっているなら致し方あるまいっ。ねえ、サクラちゃん・・・
「・・・ゼッッタイ無理!!」
エ~そんな~(泣)、さらばニッポニアニッポン。
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即席ラーメン以外作ったことがないと語っていた若者が、次々と片手で卵を割ってボウルに流し込んでいく。
濡れ布巾で粗熱をとったフライパンに、菜箸で溶いた卵を流し入れると一気にかき混ぜて半熟にする。
木葉形を整えて白磁の皿へ移すと、目にも鮮やかなオムレツが完成、巨大モニターにアップで映し出される。
その手際のよさに会場がどよめく。
「いや美味そうだ。早速、味見を・・・う、美味いっ!ふわっふわのトロットロ。まさしくプロの味です!」
会場から盛大な拍手。
簡易キッチンから司会者の案内でステージ中央に移動した若者は、虚ろな目をしたまま夢遊病者のようだ。
「ではムッシュ野々村さん、彼にかけた催眠術を解いてあげてください」
呼ばれて舞台そでで訳知り顔で見守っていたムッシュ野々村が中央に移動、若者の耳元で指パッチン。
途端、若者は鳩が豆鉄砲を食らったような顔で目を覚ますと周囲をキョロキョロ。
司会者が若者に催眠術にかけられてオムレツを作ったことを説明する。
「ボ、ボクがこのオムレツを?まさか・・・食べてみても?・・・う、美味い!信じられない」
割れんばかりの拍手。若者がADに促され退場する。
「会場の皆さん、そしてお茶の間のみなさん、催眠術師王者決定戦、ムッシュ野々村さんの驚愕のパフォーマンスをご覧いただきました。さあレオナルド馬さんはコレを上回る催眠術を披露できるでしょうか?」
勇壮な音楽が鳴り、ステージ奥中央にスモーク、その中からムッシュ野々村同様鋭い眼力に髭面のレオナルド馬が登場する。
「ではレオナルド馬さん、お願いします」
不敵に笑うレオナルド馬。
「わたしのパフォーマンスはすでにご覧いただきましたぞ」
「え?」
レオナルド馬はムッシュ野々村の鼻先で指パッチン。
ムッシュ野々村は鳩が豆鉄砲を食らったような顔でキョトン。レオナルド馬が笑う。
「フハハハハ、皆さん、若者にプロの料理人になるように催眠術をかける催眠術師になるようにムッシュ野々村氏に私は催眠術をかけていたのです!」
衝撃の事実に会場がどよめいた。
「えっと・・・ということは・・・おめでとうございます!この勝負、レオナルド馬さんの勝利ということで」
会場から拍手。笑顔のレオナルド馬が両手をあげて応える。その時、
「ちょっと待ったあ!」
ムッシュ野々村が割って入った。
「若者に催眠術をかけるように催眠術をかけたと思わせるように催眠術をかけたのは俺だもんね!」
レオナルド馬も黙ってはいない。
「若者に催眠術をかけるように催眠術をかけたように催眠術をかけたと思わせるように催眠術をかけたのは俺だもんね!」
ムッシュ野々村も引かない。
「若者に催眠術をかけるように催眠術をかけたように・・・」
司会者が両者を制する。
「子供のケンカのようになってきたところで、催眠術師王者決定戦、これにてお開き。また来週!」
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しこたま飲んだ帰り、24時間営業のコンビニの灯に誘われて一人立ち寄った。
「らっしゃっせ~」
店内には若い男性店員が一人、だるそうにモップがけをしている。チリチリの茶髪、耳にはピアスが連なっている。いかにも深夜のバイトだ。
店内に客はボク以外いない。
惣菜コーナーで塩焼きソバを手にとった。
店内をぐるり、レジに向かおうとして足が止まった。雑誌の成人コーナーの一冊、その表紙で微笑む女性は、なんとボクが大大ファンの巨乳AV女優ではないか。しかも悩殺巻頭グラビア+袋綴じだってえ?!
相変わらず店内に客はボク一人。店員は茶髪ピアス。
よしっ。ナウ、ゲッ、チャンスっ。
エロ本をむんずと掴むとレジへ。「すんませ~ん」と声をかけた。
店員は目を細くして掛け時計を見上げ、レジ奥向かって声を張りあげた。どうやら交替の時間らしい。
「ちょっとお待ちくださ~い。木村く~ん!」
店員がモップとバケツを手にレジ奥へ引っ込むと、入れ替わりに木村くんと呼ばれた店員が現れた。
「お待たせいたしました」
目の前で微笑んでいるのは、すこぶる美人の女性だ。この店に寄るたび、前から気になっていた女性。
「こちら、温めますか?」
エロ本に気づいた瞬間、その清楚な笑顔が凍りついた。羞恥のあまりボクは顔から火を噴いた。そして思わず、
「お、お願いしますっ」
数秒、時間が完全に止まった。
いや、本は温めなくていいです・・・そう声を掛ける勇気もないままに。
「しばらくお待ちください」
美人店員はまず塩焼きソバをレンジへ。
意を決したようにお馴染みのコンビニ制服のボタンを外して胸を開くと、白いブラがチラリ。
白磁器のように艶やかな胸の谷間にエロ本を差し入れてムギュウウウ。
焼きソバとエロ本が温まっていく・・・
ああ、鼻血が出そう・・・
「チン」
ボクはホカホカの焼きソバとエロ本を受け取った。
「お待たせいたしました。またどうぞ」
頬を染めた彼女がまた微笑んでくれた。
あれから一週間。
あの晩の夢のようなできごとは現実だったのだろうか?
焼きソバは食ったし、エロ本は楽しんだし、コンビニに立ち寄ったのは事実だが、アルコールのせいで随分妄想が加わっているのかも。
ちょうど一週間後の同じ時間、ボクは居ても立ってもいられずコンビニに行った。
レジには木村さん、あいかわらず綺麗だ。先週と同じように客は他にいない。
「いらっしゃいませ」
また微笑んでくれた。
ボクは雑誌コーナーに一直線、週刊誌を一冊掴むとレジへ向かった。エロ本じゃなく一般の棚の週刊誌。
「こちら、温めますか?」と彼女。
ボクは準備していた言葉を彼女に伝えた。緊張のあまり上擦った声だったけど。
「温めないでください。他の誰の本も温めないで」
うつむいて答える彼女の声もまた上擦っていた。
「アナタにしか温めたことありません。アナタだけ」
ボク、だけ?見る見るボクの心が温まっていく。
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ボクは悲鳴をあげた。
エナメル線みたいな光沢を帯びた線状の物体が肛門から顔を出して身をくねらせてウネウネ・・・
「ギョエエエッッッお尻からハリガネムシがっ」
・・・と、そこで目が覚めた。なんだ、夢か。
見回すと周囲は薄暗い。物音に気づいて父が覗いた。
「お、目を覚ましたな、タカシ。おまえ、三日三晩眠りこけてたんだぞ」
指を確かめると、咬まれた傷痕が微かに残っている。
「父さん、もしかして学校にはインフルエンザってことに?」
父が怪訝そうな顔でボクを見つめる。
間違いない、カマキリに咬まれたんだ。そして三日後、目を覚ましたところから・・・
シャアアアア!
一週間省略して父に鎌を振り上げた。
「アホか、おまえ」
ゲンコツを食らう。夢の中より痛い。間違いない、今度は現実だ。
翌日から学校に行った。
食欲旺盛になることもなく、動体視力も身体能力もアップすることなく、平々凡々の今までどおりの高校生活だった。
そりゃそうだ。やっぱりスーパーヒーローもモンスターもみんなつくりごとなんだ。
現実に虫に咬まれたら、腫れたり熱が出たりが関の山ってところだ。
そんなわけでボクはフツーに高校を卒業、フツーの会社に就職して、フツーに恋愛、フツーな女性と結婚した。
「アナタ・・・赤ちゃん、できちゃったの」
妻の報告にボクは舞い上がった。フツーに父親になるって、やっぱスゴイじゃないか。
そんなわけで、ついついその晩は飲み過ぎてしまった。
深夜、目を覚ますと隣に寝ているはずの妻の姿がない。
不審に思い、身体を起こそうとするが体がシビれて動けない。
え?なんで?
・・・なんで台所から包丁を研ぐ音なんか聞こえてくるんだ?
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カマキリに咬まれた。
手をすっこめて飼育箱に目をやると、箱の中からカマキリの黒い瞳がギロリとボクを睨み返してきた。
人差し指の爪の脇に咬み痕がある。指を咥えると血の味がした。
「おいタカシ、ゴロゴロしてないで手伝ってくれんか」
日曜日の朝、父から手伝いを頼まれた。取引先関係の移転を手伝う仕事なんだとか。
今度焼き肉に連れてってやるって言うので、二つ返事でOKした。
行った先は、古びた研究室の建物、そこから書類やら器具やらを運び出すのが仕事だった。
中には実験動物の飼育箱なんかもあって、そのひとつを不用意に抱えて咬まれてしまったのだ。
指先を確かめるともう血が止まっていた。たいしたことなさそうだ。
「お~い、一緒に運んでくれい」
父が書類棚を半分抱えて声を掛ける。
「コレ運んだら手伝うから」
次々と手伝わされるうちに咬まれたことなんてすっかり忘れてしまった。
思い出したのは夜、指先がシクシク痛み始めてからだった。ひどい頭痛、やたら汗が出る。
ヤバイぞ、コレ。あのカマキリ、まさか・・・
そのまま意識が薄れて部屋のベッドに倒れ込んだ。
目が覚めると周囲が薄暗かった。朝なのか?夜なのか?物音で気づいた父が部屋を覗いた。
「お、タカシ、目が覚めたか。寝惚けた顔してるなあ。無理もない、三日三晩寝てたんだからな」
三日三晩?指先を見るとすっかり腫れが引いていた。頭も痛くない。
三日も学校休んだらさぞみんなも心配して・・・
「学校にはインフルエンザってゆっといたから」
おいおい父さん、適当だなあ。
しかし!しかし、この展開・・・もしかしてスパイダーマン!!みたいな?
その後、一週間。
周囲を騒然とさせる信じがたい食欲でむさぼり食った!
動体視力がアップ、猛スピードで飛ぶハエをキャッチ!
体育の時間にスゴイ身体能力でジャ~ンプ、級友唖然!
・・・そういう非日常的な椿事は一切おきなかった。
平々凡々な今までどおりの高校生活。
いや、何かの拍子に能力が覚醒したりして・・・
シャアアアア!
意を決して父に鎌を振り上げて襲いかかった。
「アホか、おまえ」
きっつ~いゲンコツ一発。
ダメか、やっぱし。虫に咬まれたくらいでヒーローになったりモンスターになったり、そんなの映画だよな、やっぱし。
便意を催した。フツーに変わりなく。大きくため息ひとつ、トイレに向かった。
ほどなく。
ボクは悲鳴をあげた。
エナメル線みたいな光沢を帯びた線状の物体が肛門から顔を出して身をくねらせてウネウネ・・・
「ギョエエエッッッお尻からハリガネムシがっ」
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ひとりぽっちのおじいさんがいました。
せっせと働いて年をとって、さあ夫婦水入らずで旅行でもと思った矢先、おばあさんが亡くなってしまったのです。
せめておばあさんとの思い出の写真をプリントしようとおじいさんはお店に行きました。
「いらっしゃいませ、当店の写真は100年プリントです。100年経っても色褪せませんぞ」
100年プリント?自分はあと何年生きられるというのでしょう。
「もっと少ない年数のはないかのう」
「ございません。こちらが自信を持っておすすめできる唯一のプリントです」
仕方がないので、思い出の写真を100年プリントで注文しました。
おじいさんはひとり暮らしには広すぎる家を売って、新しい小さな家を買いに行きました。
「いらっしゃいませ、小さいながら快適な100年住宅です。100年経ってもびくともしません」
「もっと少ない年数の・・・」
「ございません」
仕方なく、100年住宅で暮らし始めました。
まもなく、足腰の弱くなったおじいさんは、身の回りの世話をしてもらうためにロボットを買いに行きました。
「いらっしゃいませ、こちらのロボット、なんと100年ロボです。100年経っても故障知らずの働き者です」
おじいさんは尋ねもしないで、100年ロボを買って一緒に家に帰りました。
100年ロボはホントに働き者のスグレモノでした。
朝起こしてくれるのも、三食の準備片付けも、掃除洗濯、お風呂の介助も全部やってくれました。
夜だって、おじいさんが眠くなるまで思い出話に100年ロボは耳を傾けました。
毎日、毎日。
毎晩、毎晩。
何年経ったでしょう。
とうとうおじいさんは100年ロボに看取られて亡くなりました。
おじいさんの遺言どおり、100年ロボは船の上からおじいさんの灰を海にまきました。
そして次の日。
100年の大半は残っています。
100年ロボは100年住宅で、姿の見えなくなったおじいさんを毎朝、起こします。
見えないおじいさんに、見えない食事のお世話をして、見えないお風呂のお世話をします。
そして、見えないおじいさんをベッドに横たえると、録音したおじいさんの昔話を流して聞き入るのでした。
毎日、毎日。
毎晩、毎晩。
何年も、何十年も。
そしてとうとう、おじいさんが100年ロボを買って、ちょうど100年が経ちました。
見えないおじいさんをベッドに横たえた100年ロボは、おじいさんに優しく話しかけました。
「おじいさん、とうとう100年経ちました。100年間、本当にありがとうございました」
そして、ベッドに寄り添い、胸のカバーを開いて電源スイッチをオフにすると、ロボットの目から光が消えました。
翌朝。
予備電力で右手が自動的に作動、100年ロボは電源スイッチをいつもと同じようにオンにしました。ロボットの目が光ります。
「おじいさん、おはようございます」
昨日までと同じように見えないおじいさんを起こして、お世話を始めました。
100年を過ぎた途端、100年プリントが色褪せないように。100年住宅が崩れないように。
ずっと。ず~っと。
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恥ずかしいんですけどあたし、おムネが小さいんです。
人妻なのにまるで十代の女の子みたいに。申し訳程度に膨らんだ上にレーズンがチョコンて。
夫は「このほうが好きだよ、カワイイ感じで」って言ってくれるんです。
でもこないだ、夫の消し忘れたパソコンに、お気に入りのエッチ動画がずらり並んでたんです。巨乳もの動画ばっかり。
そうなんです。夫もやっぱりオッパイ星人だったんです。
そんな時に、突然テレビが切り替わって宇宙人が出てきたんです。
ジャラブ星人です。
人類よりもはるかに進んだ科学をもってるのに使いみちがおまぬけな感じの宇宙人なんです。
テレビ画面下のお申し込み電話番号にかけて、ジャラブ同盟に加入するかわりにオッパイをおっきくしてほしいってお願いしてみたんです。
ジャラブ星人ったら、
「プスプスプス。お安いご用です、奥さん。ただし、巨乳の女性の胸と奥さんの胸との交換手術になりますがね」
なんて言うんです。巨乳が要らない女性なんてこの世に・・・いるんです。親友のジュンコです。
うちに遊びに来るたびに、
「男の視線はココばっかり、そのくせ巨乳女はバカっぽいとか言ってさ、それに走ったら右へ左へポヨンポヨン、いいことないよ全っ然」
なんてグチばっかり。でもそれって本心かなあ。あたし、思い切って相談したんです。
ジュンコったら「いいよ!やったあ」なんて、あっさりOK、やったあ。
で早速、ジャラブ星人が手術してくれて。
すごいんです、ジャラブ星人って。30分後にはもう、あたしの貧乳がジュンコへ、ジュンコの巨乳があたしへ。
うわあ、ナニこのボリューム感。ああ、夜が楽しみだわあ。
「オヤ、どうしたんだ?なんだかおっきくなったんじゃないか?」
その日の晩、あたしのおムネをモミモミしながら夫が言うんです。
「女性週刊誌の豊胸体操ってやってみたのよ。少しは効果が出たのかしら」って、ごまかすあたし。
「スゴイじゃないか。いっただきま~す」って、むしゃぶりつく夫。
夫ったらいつもの何倍も激しくせめてきて、あたしったら思わずいつもより大胆になってあんなことやこんなことや。
嵐みたいな一回戦が終了。
二人とも汗びっしょり、息もあがっちゃって。
それなのに夫ったらあたしのおムネを赤ちゃんみたいにチュパチュパ。ええっもう二回戦?
そのときです。夫が顔をあげて言ったんです。
「ア!思い出した!この味、ジュンコちゃんのオッパイじゃないか!!」
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「タカシ君、正解です。答えかたも立派ですね。みんなもタカシ君のように答えましょう」
先生の賞讃の言葉、教室中で拍手。ボクは有頂天で教室の後ろをふりかえる。
ずらりと並んだ保護者の中で、ボクの父さんがいちばん背が高くて、誰よりもカッコよかった。
父さんがボクにニッコリ、白い歯がまぶしいくらいに光って周りが霞んだ。
学校から帰る時だってみんながボクに声をかけた。
「タカシ、いいよなあ。オレの父さんとダンチじゃ~ん」
「タカシく~ん、アタシもあんなお父さん欲し~っ」
最高の気分で家に帰った。
「タカシ、おかえり。どうだった?参観授業」
仕事着のままで夕食の仕度しながら母さんが尋ねた。
「ウン、やっぱ参観日はダンディー父さんに限るね」
居間でくつろいでいた父さんがカッコよく振り向いた。
「オイオイ、タカシ。まるで今週でお払い箱みたいな・・・」
母さんは黙ったままレンジの中を見つめている。
ボクも連絡帳を探すふりをした。
「返却・・・か。なあ、タカシ、今夜もやるか?ブラックジャック」
「うん、やるやる!今夜は負けないよ、ボク!」
母さんがニコッて笑った。ちょっとだけ寂しそうに。
ボクにはホントの父さんがいない。
まだ小さかった頃フイといなくなったとか。それで母さんは必要に応じてレンタル父さんを借りる。
参観授業ならできるだけ見栄えのいいダンディー父さん、見栄を張る必要などない週にはマイホーム父さん、といった具合。
日曜日に店に行くと、ダンディー父さんを返却した。
ボクが新作父さんのコーナーでフレッシュ父さんたちを見ていると母さんが言う。
「三カ月もすれば準新作父さんに、半年もすれば旧作父さんになって安くなるんだからね」
母さんのケチ。仕方なく、旧作コーナーをひとりで見て回った。
「タカシくん、タカシくんやないかっ。大きゅうなったなあ。わてや。お笑い父さんや」
旧作コーナーの隅っこからお笑い父さんの声。
最初は楽しいけど、のべつまくなし喋られてもお腹いっぱい。
「タカシくん、待ってえな。どこ行くねん」
足早に立ち去ると、母さんを探した。アレ?旧作コーナーのどこにも見当たらない・・・。
まさか。
まさか、母さん、アソコに?
奥に仕切られた18禁コーナーに近づくと、ヒソヒソ声が聞こえる。母さんだ!
まさか母さん、今度借りるのは、絶倫父さん?!
「ええ、学校で先生に褒められたって喜んでたわ」
「ほう、さすがだなあ。オレはタカシが元気なだけで嬉しいよ」
・・・エ?
ボクの父さんって、もしかして・・・
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国会議事堂上空に忽然と超巨大円盤が現れ、永田町を覆い尽くした。
日本中のテレビ画面が一斉に切り替わり、宇宙人の上半身が映し出される。
「我々はジャラブ星人だ。我々の科学力は遥かに進んでいる。地球人も我々、ジャラブ同盟に入るのだあ」
その姿はウルトラマンのザラブ星人にそっくりだ。かなり胡散臭い。
議事堂に隣接する首相官邸では、首相もまた画面を見つめていた。
「無抵抗のまま、侵略者に服従などありえんっ。敵の科学力、恐るるに足らず・・・」
その言葉が聞こえたかのように、ザラブ星人が肛門そっくりの口から笑い声を上げた。
「プスプスプス、では我々のチカラを見てもらおう」
ジャラブ星人がなにやら抱えあげる。小型の孵卵器?中にはタマゴがひとつ。どう見ても普通のニワトリのタマゴだが・・・
「驚くなかれ、 コレは『お父さんタマゴ』なのだあ」
お父さんタマゴぉ?
「何故コレが『お父さんタマゴ』か?早回しのVTRを作ったのでそちらをご覧になるのだあ」
早回しVTRスタート、アッと言う間にタマゴが割れてヒヨコ登場、若鶏になり、何の変哲もない雄鳥となり・・・
「ただのニワトリじゃないか」
「ただのニワトリじゃないか、と思ったろう?プスプスプス、ココで我々の恐るべき医学によって雄鳥に性転換手術を施して雌鳥に変えるのだあ!繁殖能力のある、本物の雌鳥にだぞ」
手術前、手術後の映像。確かに雄鳥と雌鳥である。
「さてココで登場、タイムマシン!我々はタイムマシンで時間旅行も自由自在なのだあ。雌鳥を連れて雄鳥だった頃の時間に戻って二羽を交配、イヤ~ン」
雌鳥に乗った雄鳥がバサバサ、画面にはしっかりモザイクがかかっている。
「かくしてこの雌鳥が有精卵を産み落とす・・・そしたら、そのタマゴを孵卵器に入れて、さらに生まれる前の時間へ行って置いてきて完成。つまり、ココにあるのがそのタマゴというわけなのだよ!」
なるほど、お父さんのはずが自分になってしまうという無限ループのタマゴってわけか。ニワトリが先かタマゴが先か・・・
「どうだね?我々の医学も科学もスゴイだろ?プスプスプス」ジャラブ星人、大威張りだ。
怪訝そうな顔つきで首相が尋ねた。
「で、取っ掛かりは?その無限ループ、最初に一体どっから作り始める?」
ジャラブ星人がうろたえる。
「そ、それは・・・企業秘密だ。知りたかったらホレ、我々ジャラブ同盟に加入しなさい」
ジャラブ同盟か・・・首相はふと、こんなおマヌケな宇宙人となら同盟を結ぶのも悪くないかも、なんて思ったのだった。
ジャラブ同盟が異星人による侵略などではなく、宇宙人による衛星放送サービスに過ぎないことがわかるのはまだ先の話。
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「たっだいまあ!」
「ひぃぃぃぃっ!」
帰宅を告げる父の声に続いて、母が楳図かずお漫画みたいな悲鳴を上げた。
長女初子、次女留子も玄関に駆けつけ、共に蒼白となった。
父がカエルになって家に帰る!!
しかも人間ほどの巨大ウシガエルである。元々カエル同然の体型ではあったものの、まさか本物になろうとは。
父「会社で昼飯のあと居眠りしちゃって・・・目が覚めたらこのザマだよ」
初子「なるほど食べてすぐ寝たからウシガエルに・・・イヤそれってウシでしょ」
留子「目が覚めたらヘ~ンシ~ン!グレゴール・ザムザじゃん」
父「ザムザぁ?ソイツはどうやって人間に戻ったんだあ?」
留子「イヤ怪我して虫のまんま死んじゃったみたいな・・・」
父「オイオイ、何とかしてくれよ、家族だろ~」
落ち着きを取り戻した風情の母が父に問う。
「とりあえずご飯にします?お風呂になさいます?」
父「えっと、じゃあ風呂・・・」
初子「嫌ァ!カエルの入ったあとのお風呂なんて」
留子「アタシも勘弁、生臭いし」
父「親不孝者っ」
母「お父さん、癇癪を起こすとホラ、背中のブツブツから油が沁み出てますよ」
父「・・・アッ」
母「どうなさったんです?」
父「お昼に居眠りしてたとき、夢を見たのを今思い出したんだ!魔法使いのおばあさんがオレに魔法をかけた夢!」
母「あなた、でかしたわ!人間に戻れるの?」
父「ああ、戻れる、戻れるとも。魔法使いのおばあさんの話だと、心から愛する者とディープキスを交わすと元の姿に戻れるらしい」
心から愛する者とのキス?
初子「お父さん、ごめんなさい。アタシ、実は好きな人できちゃって。ヴァージンキスは彼と・・・ゴメンナサイ!」
留子「お姉ちゃん、ズルイ!お父さんとディープキス、それって近親相姦でしょ、やっぱ母さんでしょ、この場合」
父「頼む~母さ~ん」
母「子供産んで以来あっちのほうはご無沙汰だし・・・今、心から愛しているのは韓流スターの・・・ゴメンナサイ!」
父「なんだオマエまで。この薄情者~っ」
初子「王子様とか韓流スター、ジャニーズならともかく、キスしてもお父さんに戻るだけ、そりゃ無理でしょ」
留子「ちなみにお父さん、お昼以降になんか食べた?」
父「そりゃ食うさ、動く物に反応してつい舌がシュッて。ハエでしょ、クモでしょ、ゲジゲジ、ゴキブリ、ナメクジ・・・」
母・初子・留子「私たち、カエルのままのお父さんが好き!!」
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招き入れられた施設はNASA管制室にそっくりだった。まさかわが国にこんな宇宙局施設が秘密裡に存在しようとは。
責任者らしき博士が足早に現れた。
「タカシ君だね?夜分ご足労いただき誠に失礼。早速だが、これを聞いてくれたまえ」
博士の合図で音声が流れる。
『お~い、タカシ~、父さん明日、地球に還っから~』
父の声だ。三年前の日曜、『ちょっくらスーパー銭湯行ってくっから』と言い残し、肩に手拭い、サンダル履きで出てったきり音信不通の父の声。
「父は今どこに?」
「宇宙だよ。宇宙のどこかしらか通信してきてるんだ。話してくれるね?父上と」
「ええ、まあ。しかし父はウケさえすれば平気で嘘をつくような人間です。信じちゃダメですよ」
「とにかく宇宙からの通信なのは確かなんだ。じゃ回線をつなぐよ」
『父さん、聞こえる?』
『・・・・・・おっ、その声はタカシじゃないか。元気そうだなあ』
『銭湯行くんじゃなかったのかよ。なんで宇宙にいんだよ』
『それそれ、サウナん中でたまたま話したイプシロン星人と意気投合しちゃってさあ、一緒に飲もうってなって』
『宇宙人と飲みに?』
『地球だけで飲んで帰るつもりが、ついついハシゴで宇宙の果てだよ。いや~楽しいの何の』
『何やってんだ』
『いやだからスマンスマン。土産買って還っから。宇宙の寿司折りは地球のとひと味違うぞお』
『要らねえよ、んなの。飲みすぎて体、壊してんじゃないの?』
『ちょっと手術したが前より元気だ』
『手術?どっか悪かったのかよ』
『いや、悪いってわけじゃなくて・・・スゲーんだぜ、イプシロン星人。で、身体のパーツをいろいろ移植してるうちに・・・』
モニタ画面に映像が浮かぶ。
まるでカミキリムシ怪人の着ぐるみを着たような父の姿・・・イプシロン星人そのものじゃないか。
『どうだ?カッケーだろ、タカシもどうだ?』
『何やってんだよ。信じらんないよ』
『いいぞおイプシロン星人。こうやって十万光年隔ててタイムリーに通信できるのも、明日地球に還れるのもイプシロンの科学力あってこそだ』
『無理だろ、んなの。光の速度を超えることは不可能・・・』
『アインシュタイン、なんぼのもんじゃいっ』
宇宙局施設内全員が戦慄した。酒飲み親爺に地球の物理学を根底から否定されようとは。
『でタカシ、明日イプシロン星人の友達百人連れて地球還っから。人類もイプシロン同盟の仲間になっちゃおうぜ』
そ、それって、もしかして新手の侵略?
タカシがため息をひとつ。
『いい加減にしろ父さん、全部嘘だろ』
『あ、バレてた?うっそピョ~ン!!ウケたか?タカシ~。ハイ、それではここで問題です。嘘つきのうそピョンはホントでしょうかウソでしょうか?シンキングタ~イム!』
『やっぱりな、このクソ親爺っ』タカシが通信を叩き切った。
通信の相手は本当に父さんだったのか?そして明日、地球はどうなっちゃうのか?
その答えは、明日。
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ある日の夕餉どき、ガラガラと玄関戸を開けて父が帰ってきた。
「たっだいまあ!」
母(53)と賢太郎(25)、新二郎(22)が驚いたのは言うまでもない。
ふいと家を出て行ったのは二十年前。以来消息不明の父が戻ってきたのだから。
「今日も忙しくってな。お、今夜はカレーだな」
「あ・・・あなた!」
「美味そうだなあ、母さん、大盛りで頼む」
「父さん!」
賢太郎が立ち上がり父を睨みつけた。父よりもずっと背が高い。
「出ていくのも突然なら、帰ってくるのも突然。無責任過ぎやしないか」
父が賢太郎を不思議そうに見上げた。
「おまえ急に背が高くなったな。声変わりまでして。どこかおかしいんじゃないのか」
弟の新二郎も立ち上がる。やはり父より背が高い。
「おかしいのは父さんのほうだろ。二十年経てば大人にもなるさ」
「新二郎、おまえまで変わり果てて」
「すっトボけてないで謝ったらどうだい。女手ひとつで苦労した母さんや、進学をあきらめた兄さんに!」
ぽかんとして突っ立っている父に賢太郎がキレた。
「謝ってほしいものか。親爺はとうに死んだんだ。出て行ってくれ」
「賢太郎、父さんの話も聞いて・・・」
「母さん、聞く必要などないさ。言い訳を並べられても腹が立つだけさ。さあ出て行け!」
父の頬を涙が一筋伝った。母子は父が泣く姿など見たこともなかった。
「家族にこんな仕打ちを受けるとはな。ああ、出て行く。出て行ってやるとも」
玄関の戸をピシャリと閉め、父は姿を消した。
「追うんじゃないぞ!」
おろおろしている母と新二郎に釘を刺すと、賢太郎は黙々とカレーを口へ運んだ。
程なく玄関戸が開く音がした。まさか?と母が覗くと、見知らぬ初老の男が立っていた。
「先程伺った者はご主人でしょうか」
母がうなずくと男は語り始めた。
「私は彼の担当医です。路上生活していたご主人は数年前心ない若者たちに襲われて瀕死の重傷を負われたのです。身体の傷は癒えたのですが脳に障害が残りましてね、記憶障害ってご存知ですか?ご主人の場合、まず記憶喪失、そして短期記憶障害です。一日経つと昨日の記憶を失ってしまうんです」
新二郎、賢太郎も母の傍らで聞き入った。
「入院中のご主人が先日一日だけ記憶を取り戻されたのです。二十年前の幸せだった一日を。そして病院を抜け出してこちらへ・・・。素性がわかった以上、入院を続けるか、お引き取りになるかはご家族の判断です。十分にご相談ください」
翌日午前中、賢太郎は担当医に相談の結果を電話で告げた。否、相談の余地などない三人の合意を。
夕餉どき、ガラガラと玄関戸を開けて今日も父が帰ってくる。
父「たっだいまあ」
母「おかえんなさ~い、あなた~ん」
賢太郎「パパ、おかえんなちゃい」
新二郎「バブー」
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矢菱「皆さん、こんにちは。今回の秘宝館は特別企画といたしましてジェームズ・ボンドさんをお招きいたしました。
というのも、日本では作者没後50年で著作権が切れましてパブリック・ドメインとなるんです。007シリーズの原作者イアン・フレミング氏が亡くなったのが1964年。つまり今年から日本の小説家がジェームズ・ボンドを自作作品中に登場させるのもOKだし、勝手に007シリーズの続編を書いてもかまわないわけです。
とは言うものの、映画はプロダクションが権利を持ってるんで映像はマズイんですけどね。それに宿敵スペクター&ブロフェルドも事情ありきでダメなはずです。
でもまあ、せっかくジェームズ・ボンドがパブリック・ドメインになったんなら、この秘宝館に御本人にご登場願おうってんで本日お呼びした次第です。あ、早速いらっしゃいました!」
ボンド「♪ダンダカダンダン、ダッダッダッ、ダンダカダンダン、ダッダッダッ♪」
矢菱「はいカット~。ボンドさん、それマズイっすよ」
ボンド「マズイ?俺のテーマ曲だぜ」
矢菱「いやいや。映画音楽の権利は別なんで。普通に出てきてもらって」
ボンド「普通?マイネームイズ、ボ~ンド、ジェイムズ・ボ~ンド」
矢菱「あ、その言い回しもかなりマズイ。普通に喋ってもらえます?」
ボンド「ややこしいなあ。はいコンニチワっと」
矢菱「秘宝館にようこそ。そしてパブリック・ドメイン化、おめでとうございます」
ボンド「そう言われても自分、とっくに死んでるし」
矢菱「は?お亡くなりになってる?」
ボンド「だって俺、第二次世界大戦の帰還兵なんだぜ。そんな奴、あんたの身近にいる?いても思いっきり爺さんだろ」
矢菱「そりゃそうですけど」
ボンド「1957年ロシアから愛をこめてた時点でも三十台後半、59年ゴールドフィンガーと闘ってた時点で体力的に限界だなあって引退すら考えてたし。年齢ははっきり書いてないけど、今90超えてるのは間違いないぜ、俺」
矢菱「いや~そう言われると急に爺さんに見えてきた」
ボンド「そもそも酒好き美食好きで病気持ち、早死に一直線って設定なんだぜ。それが小説のボンドだっつーの」
矢菱「いやあ、話せば話すほどジェームズ・ボンドもの、書きづらくなってきたなあ。では、このへんで」
ボンド「え?もう終わり?おいおい、終わりなら女抱かせろよ~」
矢菱「だからソレ、映画だっつーの!」
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センター試験三日前っ。
っつうのに、焦るばっかり。ちっとも勉強が手につかない。
ああ、救いの神よ・・・
と、その瞬間。後ろの押し入れがガラガラっと開いて男が闖入した。
な、なんなんだコイツ?まさか神様?
いやいや、こんな風采のあがらない中年男、神様じゃねえだろ。
「なんだ素っ頓狂な顔して。いや~それにしても若い。い~なあ、若いっつうのは」
ソイツはボクをしげしげと見ながらニヤニヤしている。
黒ずくめの薄汚れた服、ボサボサ髪に無精髭。
「まさか・・・泥棒?」
「人聞き悪いなあ。ま、とにかく時間がねえんだ。とりあえずコレ。ホレ」
書類封筒をボクに手渡す。何だ、コレ。
・・・年度センター試験・・・模範解答・・・
エ?コレ・・・三日後に実施されるセンター試験の模範解答じゃないか!!
「本物かどうか?は、まあアレだな。これでしっかり勉強せい。じゃなっ」
男は押し入れに戻り、フスマを閉じた。
「な、なんだよ、アンタ」
慌ててフスマを開けると衣裳ケースなどギッチリ、通路なんてない。どうなってんだ?
残されたのは模範解答の封筒だけ。
あらためて中身を確認する。間違いない。で、コレってホンモノ?
そしてセンター試験前日。
地学の最終チェックを終了、鉛筆を置いた。受験科目すべての丸暗記を終えたのだ。
ムフフフ、志望校合格間違いなし。なんて幸せ者なんだ、ボクは。
ガラガラッ
押し入れが開いて、数名の男がわらわら登場。今度は誰だ?
銀色コスチュームの男どもがボクを取り囲む。
「未来警察だ。コイツを知ってるネ?」
板状端末に写真が映し出される。こないだの男!しかも添えられているのはボクの名前!
「コイツ・・・もしかしてボク?」
「そう。未来の君はタイムマシンを盗み、模範解答を手に入れ、試験前の君に渡したのだ。きわめて重大な不正だよ」
端末にタイムマシンを盗まれた研究所と博士の映像が映し出される。お茶の水時空研究所・・・野々村博士・・・
「そういうわけで模範解答の記憶は君の脳から消し去らねばならない」
ボクは取り押さえられ、腕に注射を打たれる。
「三日前からの記憶はすべて消える。薬の影響で半年前の記憶からアヤフヤになるけどご勘弁」
半年前の記憶?それって半年前からの受験勉強がパアってこと?
「お気の毒さま。ま、それこそが君の未来なんだよ。アディオ~ス」
未来警察が押し入れへと去っていく。
ひとり取り残されるボク。
な、なんだったんだよ、一体!
頭が朦朧とする・・・眠い・・・目が覚めたら全部記憶を失ってるんだろうな。
睡魔と闘いながらノートを開く。鉛筆を握り締める。
そして・・・最後の悪アガキ・・・
『お茶の水時空研究所・・・野々村博士・・・』
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え~あけましておめでとうございます。
とうにお正月過ぎておりますが、今年もこんな調子でゆっくりのんびり参ります。
ある年の師走のことでございます。
その年の国営放送朝ドラのヒロインを務め、大ブレークした超天然娘がおりまして、
その娘、ラジオの深夜放送で思いつきでこんなことを喋ったんです。
「日本全国民が初詣で拉致問題を解決してくださいって神様にお願いしたら解決するんじゃないかしら・・・」
このトンデモ発言がアッという間にネットで拡散、大評判となったのであります。
例年のごとく日本中で約1億人が初詣に出掛け、てんでバラバラの願いごとをしてもかなったりするわけですから、
1億人みんなが願えば神様としてもかなえざるを得ない、とまあ、そんな理屈でございます。
手放しに賛同する者もおれば、何もやらないよりいいじゃないか程度の者も、ただ単に面白半分の者もおったりで、
そのうち両手を合わせて祈る合掌ポーズで氷水をかぶって参加の意志表明をするネット動画なんてえのがアップされる馬鹿騒ぎに発展しました。
大晦日の紅白歌合戦では、大所帯の美少女アイドルグループが歌の終りに全員一斉合掌ポーズ、大人気ゆるキャラさえも合掌ポーズ、大トリの大御所演歌歌手までもが合掌ポーズであります。
そんな騒ぎの中で年が明け、日本中の神社へ国民が我も我もとド~ッと押し寄せました。
流行に乗って猫も杓子も同じ願いごとを唱えたわけであります。
さてさて、その結果やいかに?
・・・正月が過ぎ、春を迎え、夏になっても、なんら例の国に変化はありません。
やはり神だのみじゃダメなのか?
1億人が願ってもダメならそもそも初詣なんて、してもムダなんじゃないの?
そんなあきらめムード漂いつつ、風も涼しくなってきた某日、ついに例の国が動きました!
わが国政府に非公式ながら、例の国の使者が接触してきたのであります。
「日本国民1億人の願いとお聞きになって将軍様も痛く心を動かされております。ところで初詣の推定人数は1億人、お賽銭の平均は450円ほどと聞いております。つきましてはその450億円分のお願いに応えるカタチで問題の解決に当たるということで・・・」
さすが例の国、問題解決はすべて金(キム)次第、もとい金(かね)次第、ということで。チャンチャン。
こんなブログなんぞにまさかサイバー攻撃はないだろうなあ。
こんな感じでめでたい矢菱、今年もよろしくお願いしま~す。
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