Tomotubby’s Travel Blog

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ニース時代の「金魚」を発見 ~金魚をめぐる旅 その5~

2005-12-23 | Henri Matisse 特集
前にえらそうに「知る限り、アンリ・マティスは「金魚」を題材にした作品を8作描いています」などと書いたのですが、もう一つ発見してしまいました。Tomotubby は、未だこの絵の実物を見たことがなく、一度は達成したかのように見えた偉業、全世界金魚完全制覇の夢は脆くも崩れました。

その絵はモルディブが発行した切手に使われていました。小国が自国とあまり関係ない絵柄の切手を発行して外貨を稼ぐことがありますが、これもその類でしょうか。モルディブといえば、昨年の今頃、ひどいことになっていましたが、こういう切手を買ってあげることで国際援助するのは、自然な感じでいいな。と思います。



切手には「水槽の前の女」1921~1923年とあり、所蔵は不明。ご存知の方がおられたら、教えてください。絵は画風からしてニース時代のもので、先にこのブログで言及した8作品よりも後に描かれた絵です。

面白いな。と思ったのは、金魚鉢が足のあるグラスタイプであることです。前回

フランスで描かれた6作品→ビーカータイプの金魚鉢
モロッコで描かれた2作品→足のあるグラスタイプの金魚鉢
であることを述べましたが、早くもこの図式は崩れました。むしろ、

人が描かれていない6作品→ビーカータイプの金魚鉢
鑑賞者としての人が描かれている2作品→足のあるグラスタイプの金魚鉢
という図式が成立しているのかもしれません。「金魚とパレット」に置いては、パレットを持つ画家の指が描かれてはいますが。もう一歩踏み込むと、

絵の鑑賞者(私達)→絵の中の金魚の鑑賞者→足のあるグラスタイプの金魚鉢の中の、金魚
絵の鑑賞者(私達)→絵の中の、ビーカータイプの金魚鉢の中の、金魚
という図式なのかもしれません。

この絵で目立つのは、背後のオダリスク文様です。そこは南仏ニースの一室に違いないのですが、この模様のせいでモロッコと同様に「東方的な空間」と化しています。つまり、否が応でも「オリエント」を意識せざるを得ない空間の中で、金魚を鑑賞するという東方的、東洋的趣味を行う人を描き、その行為、趣味、つまりは「オリエンタリズムの表出」を、間接的に絵の外で私達が鑑賞しているのです。これはモロッコで描かれた2枚の絵と同様の構図です。

それに対して、これまでフランスで描かれた6枚の絵は、金魚以外に「オリエンタリズムの表出」が見られません。金魚以外のモチーフは花瓶に活けられた花であったり、自作の彫刻で、むしろ静物画の伝統を引き継ぐものです。金魚のみが「オリエント」の象徴といってもよく、絵の外の鑑賞者である私達は、直接「金魚」を見つめて「オリエント」と交感するのです。

このことは、絵の題名にも如実に顕れています。前者の「間接鑑賞タイプ」の絵の題名には「テラスのゾラ」「アラブのカフェ」「水槽の前の女」と金魚(Poissons Rouge、或いは Goldfish)の単語が出てきません。これに対して「直接鑑賞タイプ」の絵の題名には、ことごとく金魚の単語が表れています。画家マティスにとっては、主題が、金魚を鑑賞する行為であるか、金魚そのものであるかが、はっきりと区分けされているようです。

この後、1920年代、ニース時代のマティスの向かうのが「オダリスク」という題材です。つまり南仏のホテルの部屋に「東方的空間」を現出させ、それを描く「間接鑑賞タイプ」の絵を追求していくことになるわけです。

つづく


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (プラスさん)
2005-12-23 17:37:16
こんにちは。

フラリと遊びに寄らせて頂きました。
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ぉぃでませ (Tomotubby)
2005-12-25 09:15:50
よぅこそ
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