桂木嶺のGO TO THE THEATER!~Life is beautiful!~

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若手花形、隼人・橋之助・萬太郎・種之助・米吉らが大躍進!明治座「南総里見八犬伝」が熱いです!

2017-05-24 02:00:44 | 劇評

 

きのうは明治座の昼夜通しを見てまいりました。どちらも充実した内容でしたが、特に素晴らしかったのは夜の部の「南総里見八犬伝」の通しでした。愛之助、鴈治郎らの奮闘ぶりも心に残る一方、若手花形の隼人・萬太郎・橋之助・種之助・米吉・福之助・新悟そして壱太郎の活躍がめざましく、未来の歌舞伎界を担うかれらの試金石として、十分に成功した内容となりました。ぜひたくさんの方に、この若者たちの奮戦を見ていただきたいと思いますし、時分の花として咲きほこる美しさ、躍動感を感じ取っていただきたいと思います。

特に進境著しいのが、隼人・萬太郎・橋之助・米吉で、この4人がそろう四幕目の第三場は未来の歌舞伎界の縮図として、心に刻み付けられるほどの一大絵巻でありました。八犬士として、互いを探し求め、ようやく出会う場面で、名乗りを堂々とあげるのですが、これが胸のすくような快演。隼人の堂々とした風貌、萬太郎の鮮やかな力感と口跡のよさ、橋之助のスター性、米吉のきりりとした横顔に、熱い感動がこみあげてきました。若いながらも、りっぱに歌舞伎の絵巻物を見せるような魅力にあふれた一幕であり、それぞれの力量が拮抗しているので、大変見ごたえがありました。大詰も八犬士(愛之助ら)と鴈治郎扮する扇谷定正がまたの再会を約して分かれる場面も、華やかな大歌舞伎であり、一幅の絵として立派でありました。ここまでの話をトントンと進ませる、今井豊茂の脚本・演出もすぐれており、古風な味わいを大切にしつつも、愛之助や若手花形の個性をぞんぶんに生かしていて見事です。

また、わき役も思い切った抜擢が続いており、目が離せません。上村吉弥の妖怪の霊などは大奮戦。かれにとり殺される犬村大角(種之助好演)の妻・雛衣の折乃助、玉梓の方を演じる千壽など、清新な配役に、歌舞伎役者の層の厚さと充実を感じます。橘三郎の里見義実、松江の金碗(かなまり)大輔・のちのゝ大(ちゅだい)法師、寿治郎、松之助、歌女之丞も誠実な演技で魅了します。再演を重ね、推敲を重ね、いっそう充実した舞台となることを期待しています。

昼の部にも触れましょう。こちらは愛之助奮闘公演の趣。「月形半平太」は新国劇の傑作ですが、歌舞伎の舞台に洗い直し、現代に問う内容となって秀逸。ことに、桂小五郎役の片岡亀蔵が重厚な演技で締め、壱太郎の芸妓梅松、新悟の染八があでやかに華を添えます。愛之助の半平太は憂国の士でありつつも、女と酒にふけるデカダンぶりを凄艶な魅力で演じています。最後の大立ち回りも新国劇を彷彿とさせる男っぽさと壮絶さ。絶唱が胸に響きます。

「三人連獅子」は愛之助が家元を勤める楳茂都流でのめずらしい踊り。愛之助の父獅子、壱太郎の母獅子、種之助の仔獅子が力演。華やかな打ち出しとなりました。

久々に訪れた明治座でしたが、また清新な配役と斬新な企画で、すぐれた歌舞伎を世に送り出してほしいと願いつつ、帰途につきました。