彼は森の奥の小屋の中で
一人で人形を作っていた。
彼は今度
マリオネット達を舞台で披露するために
無心で作っていた。
ある人形のモデルに
彼は村の美しい娘さんに
モデルになってもらえませんか?
と、
思い切ってお願いしたのだ。
彼女はにっこり笑って承諾してくれた。
彼は天にも昇る心持ちだったが
顔に出すまいとこらえていた。
人形が完成した日
娘さんはこう言いました。
「お困りなことはありませんか?何だか落ち込んでおられませんか?さみしくありませんか?話し相手は要りませんか?」
彼は心の中で
「さみしかったです。話し相手ほしいです。時々酷く落ち込みます。今もそうです。助けてほしいと想います。一緒にお茶を頂いたり話し相手になってもらえたら僕は本当に嬉しいのです。」
そう言いたかった。
しかし彼の口から出た言葉はこうだ。
「大丈夫です。僕は落ち込んでなんかいません。平気です。元気でがんばります。」
心の底では
たまには一緒に話してほしいと想っていても
彼には素直にそんな言葉を打ち明ける勇気はなかったのです。
出来上がった彼女をモデルにした人形を
彼は小さな椅子に座らせた。
そして人形に、むかい
こう言いました。
「僕なりの流儀なんだ。強がりを言うのはね。(笑)」