無明抄

もの言わざるは腹ふくるるわざ・・。かなわぬまでも一市民の発言

オバマの勝利、過度の期待は禁物?

2008-11-12 | 蟷螂斧:私的時事論談
オバマ勝利の最大の立役者はブッシュに違いない。
それはともかく、オバマの勝利は、確かにある意味でアメリカ民主主義の復元力を示したし、ブッシュ的独善外交や市場原理主義からの軌道修正などが進むだろう。ケネディー以来の英雄扱いも分からないではないし、世界が期待するのも無理は無い。

しかし、過度の期待は禁物である。
オバマが、繰り返し叫んだスローガンは「一つのアメリカ」であり、人種的偏見やさまざまな困難をナショナリズムによって超えたとも言える。
そのアメリカとは、世界にとって、どんな国だったか?
ある意味では、もっとも正直かつあからさまにアメリカ的に振舞ったブッシュのおかげで、アメリカの正体に気づいてしまった今では、
「オバマ? ン? だいぶましかな、でも所詮アメリカだからな」と思ってしまう。

「自由と民主主義」を高々と掲げはするが、その実自国の国益のためには独裁政権だろうがなんだろうが支援する一方、気にいらない政権は、それがたとえその国の民主的選挙で選ばれようがお構いなしに、謀略を使い、暗殺さえ企てて転覆を図る。資金がなければ麻薬取引で秘密資金を稼ぐ。
イスラエルが何度国連決議を無視しようが、核開発をしようがおとがめなし、どこまでもかばうけれど、気にいらない国の核開発には先制攻撃さえやりかねない。
アメリカが、何もブッシュに限らず、少なくとも戦後ずっとやってきたことは、そういうことだった。
オサマもタリバンも、元はと言えばアメリカが手先とするために育てたのだし。

オバマも、イラクからは早期に撤退するけれど、(さんざん引っ掻き回しておきながら、もはやアメリカにとってお荷物だから?)、アフガンに集中すると言っている。
そのアフガン戦線では、パキスタンへの国際法を無視した(いまさら?)越境攻撃を含めて、無数の一般住民、子供や女性が「テロリスト」攻撃の「付随的被害」として殺戮されている。
オバマは、誤爆や巻き添えで殺された人々や家族にわびるだろうか?
とうていそうは思えない。

オバマに、そして自由と民主主義のためにテロリストと敢然と闘うアメリカ人たちに尋ねてみたい。
ニューヨークのアパートの一室にテロリストが潜んでいるという情報を掴んだら、何の躊躇もなく、そのビルにミサイルぶち込んで「掃討」するのか、と。
一緒に何十人、何百人かが吹っ飛ばされても、それは凶悪なテロリストからアメリカを守るための「付随的被害」に過ぎないのだと。
イラクで、アフガンで、そして世界中でアメリカがやっていることは、そういうことではないのか。
アメリカ人以外の民衆の命など虫けら同然とみなしていると言われてもやむを得まい。

はたして、初の黒人大統領、アメリカ民主主義が人種差別を克服した証として登場したはずのオバマは、アフガン人、イラク人、パレスティナ人の命がアメリカ人と同じ重さを持つことに思いをはせることができるだろうか。

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