無明抄

もの言わざるは腹ふくるるわざ・・。かなわぬまでも一市民の発言

戦後民主主義の断末魔

2013-04-11 | 蟷螂斧:私的時事論談

最近、ある若者が「民主主義なんてダメだ、独裁の方がまし」というのを聞いて驚くと同時に、考えさせられた。

今の「北の国」を決して笑えない軍国主義下で暮らし、あの戦争を直接体験して生き延びた戦中世代はもちろん、その経験を見聞きし追体験してきたいわゆる団塊世代にとっても、平和と民主主義の重要さは自明のことであった。
新憲法下で、どん底の貧しさから右肩上がりに急成長する時代を生きて、想像もしなかった「豊かさ」にたどりつき、不平不満がありながらも平和と民主主義に象徴される戦後レジームの恩恵を十分に享受してきた世代から見れば、「民主主義より独裁の方がまし」などと言うのは正気の沙汰とは思えない。

しかし、今の若者、団塊の子や孫の世代から見ればどうか。
「平和」はずーっと当たり前で、むしろ退屈ですらあるかもしれない。
また、「民主主義」が何をしてくれただろう?
年金改革問題に代表されるように、戦後レジームはあらゆる場面で制度疲労が進み破綻に瀕しているにもかかわらず、「議会制民主主義」は党派利害や利権構造に振り回されて何一つ改革することができない。
身の回りには過剰なほどの商品、サービスがあふれる中、右肩あがりの経済は破綻し、格差社会の中で先行きが見えない。
達成すべき大きな理想や理念も見当たらない。
先の世代が満喫した戦後レジームのツケが大きく将来に立ちふさがる。
彼らにとって、戦後レジームはすでに自分たちの今と将来に立ちふさがる「アンシャンレジーム」でしかないのかもしれない。

かって世界中の若者や知識人を支えた理想、大きな物語であった「社会主義」という理念が、ソ連の崩壊によって最終的に色褪せてしまい、世界全体が理念喪失のままさまよっている。その空白を宗教的原理主義や偏狭なナショナリズムが埋めようとしている。

日本でも、軍国主義のおぞましさも侵略と戦争の時代の悲惨も教えられずに育った世代が、石原新太郎や百田尚樹らの、一昔前なら公言することすらはばかられたような時代錯誤の国家主義に魅せられ、派手な攻撃的言動でメディアを引き付ける橋下流ポピュリズムに閉塞感のはけ口を求めている。
一方、政治家たちは、目先の党派的利害や数合わせの離合集散ばかりにうつつをぬかし、本来、まず政党として結束する基本であるべきこの国や社会のあるべき未来像とそれに向かうための政策理念を何一つ語れない。

そんな中で、岸信介の怨念を背負った安倍首相が、大日本帝国の栄光を取り戻すべく、ナチスの手法を駆使して政治権力を手中におさめてしまった。

現状を思えば思うほど暗澹たる気分に陥るばかりだ。 


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