宇宙(そら)に続く丘

プレリュード小学校1年C組のしりとりちーが案内する宇宙への道
みかんの丘は不思議へ通じるワームホール

オリオンの剣

2010年01月30日 02時02分24秒 | 宇宙

星の写真を撮るのに月明かりは邪魔だ。だから望遠鏡にカメラが載せられるのはひと月のうち半分ちょっと。しかもその間に雨が降ったり強い風が吹いたり、条件が揃っていても仕事が忙しかったりすると、撮影はお預けとなる。
中天に掛かる十四夜を眺めながら、ため息をついて会社を出た。今夜は風が無い。透明度もいい。それなのに眩しく輝く丸い月。
こんな夜は撮り貯めた写真の画像処理をする。パソコンのフォルダーにあるオリオン星雲。半月前に撮ったものだ。そのひと月前に撮った物と合わせると露出の違う写真が5枚揃う。これを使ってこの大星雲の姿を浮かび上がらせよう。そう決めた。
悪戦苦闘の7時間。その結果がこれ。先に紹介したNGC1981と大星雲M42、それにその下に輝く2等星ハチサは、肉眼で見ると小さな三つの星の並びに見える。堂々たる大三ツ星に対して小三ツ星の名が付けられている。星座絵ではこの小三ツ星は狩人オリオンの腰にぶら下がる剣だ。その剣の正体は、生まれたての星に照らされて光を放つ星間ガスなのだ。

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魔法の国入り口

2010年01月21日 00時24分39秒 | 宇宙

オリオンの大星雲と言われるのはM42。その鳥が羽を広げたような見事な姿に目を奪われて、つい見過ごしてしまいそうな天体がいる。NGC1973、大星雲のすぐ北側にひっそりとたたずむ散光星雲だ。シャッターを少し長く開いていると、そこに不思議な模様が浮かび上がってくる。
卵形に青い光を放つガスの真ん中で真横に伸びる暗黒帯。僕にはこれが宇宙空間がほころびて魔法の国の入り口が開いているように見える。その上に重なる散開星団NGC1981は、まるでその口から飛び出してくる妖精たちだ。
オリオン座周辺のガス雲では、新しい星が次々に生まれている。生まれて間もない星たちは高い温度で青白く輝く。その光とほとばしる粒子はガスのベールを払い,さらにお互いを押しのけあう。そうして星たちは広がって行くのだ。
ガス雲は星を作る工場。本当に魔法の国なのかもしれない。人類がその国を旅する時が来るのだろうか。

口径200ミリF4反射、Canon5DMarkⅡ感度3200、LPS-P2フィルター、露出610秒2枚コンポジット

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これが見納め

2010年01月20日 12時21分36秒 | 

星に興味の無い人でも知っている冬の星座の代表格オリオン。この星座でもっとも明るい星ベテルギウスが最近話題に上っている。明日にでも大爆発を起こして超新星になるかも知れないと、ある新聞が大きく取り上げたためだ。この記事自体、よく読むとあちこちに嘘がある。センセーショナルな記事とは大体そんなものだ。。
オリオン座のα星ベテルギウス。明るさがマイナス1.3等から0.0等の間を行き来して、脈動型半規則変光星などという難しい名前をもらっている。生まれてまだ一千万年に満たないのにもう寿命が尽きかけているのだ。図体がでかすぎて燃え方が太陽のような普通の星とは異なり、寿命がうんと短いのだ。ちなみに太陽の寿命は100億年といわれている。
最近明るさの変動が激しく、寿命が終わりに近づいたとNASAは言う。ただ、地震の予知と同じで、それが何時起こるのか誰にも分からない。本当に一週間後かもしれないし、千年先かもしれない。マイナス等級の星が爆発したらどんな光景になるのか。もし見ることが出来たら天文ファン冥利に尽きるというものだ。何時爆発してもいいように機会があるごとに撮影することにした。
一期一会。これが見納めと毎晩空を見上げる。

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地球照、月は鏡

2010年01月19日 12時49分15秒 | 

クリスマスツリー星団を撮影した翌日も空は晴れていた。ただ風が前日より強い。明日は仕事だし、今日は写真を撮るのをやめて帰ろうと外に出た。
夕暮れの西の空に細い月が掛かる。月齢2.1。これくらい細い月も美しい。欠けている部分がはっきりと見えていた。太陽に照らされた地球の輝きを受けて、月の影の部分が明るく見える。地球に照らされているから「地球照」という。
昔から人々は月を鏡になぞらえてきた。しかし、月面の反射率は意外に低い。7パーセント程度だという。それに比べて地球の反射率は30パーセントを超えている。表面を月には無い白い雲が覆っているためで、38万キロも離れた月面をこれほど照らすのはそのためだ。
この地球照がここ数年明るくなってきたという。それだけ雲が増えてきた、ひいては地球が暖かくなってきたということかもしれない。反射率39パーセントという観測もある。そういえば、満天の星空という日が、昔に比べて少なくなったような気がする。
地球照の明るさを観測して地球の気候変動を知ろうという試みも行われている。そう、やはり月は地球を映す鏡なのかもしれない。

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不思議の領域

2010年01月18日 12時35分25秒 | 宇宙

実は、クリスマスの前にぜひ撮影したい場所があった。
オリオンと二匹の猟犬が形作る冬の大三角。そこに頭を突っ込んでいるのが空想上の生き物一角獣だ。その角の周りには、背景の天の川を隠して黒く広がる暗黒ガスの帯がある。フィルターを掛けて長い時間露出するとぼんやりと赤く写るその水素ガスの領域に、一箇所青いガスをまとったきらめく星達がいる。それがNGC2264、クリスマスツリー星団だ。
厳しい季節風が一段落した先週の土曜日、雲だらけの夕空にどうしようかと悩んだ挙句、夜になって重い腰を上げた。しかし丘に上がってみると一面の星空。ああ、来て良かった。
カメラを20センチの望遠鏡に取り付けて屋根を開ける。頭の上を冬の天の川が流れていた。風は無い。望遠鏡を星団に向け、中心の輝星を頼りに自動追尾に入る。
10分の露出で3枚、5分の露出で1枚。それを重ね合わせたのがこの写真だ。
青いガス雲をツリーに、一番大きい星をトップスターに見立てると、そこにはキャンドルに赤く染まった雪原に立つ一本のクリスマスツリーが見えてくる。画像下のほうに黒く入り込んでいるのはコーン星雲だ。
天の川に流した絵の具。ここは冬の夜空の不思議領域だ。

2010.02.15 より大きな画像に差し替えしました。

ビクセンD:200mmF:800mm反射 LPS-P2フィルター Canon5DMarkⅡ感度3200 露出各600S、300S

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神秘的な夕日

2010年01月15日 21時53分15秒 | 宇宙

正月休みにひいた風邪を引っ張って10日が過ぎた。竹取庵が気になりながらも、厳しい季節風の中でなかなか足がそちらに向かない。そうこうするうちに1月も半ばを過ぎてしまった。今日は夕方部分日食があると言う。
朝外に出てみると抜けるような青空が広がっていた。見せてあげるよ。空がそう微笑んでいる。だが、欠け始めは午後4時46分。もちろん仕事中だ。しかも忙しい時間帯。かなり迷ったあげく、やっぱり小型の望遠鏡とカメラを持って車に乗った。
夕刻が迫るにつれて上海の苦い思い出がよみがえる。晴れてくれるだろうか。窓の外の空がどうしても気になる。
午後4時半、会社の屋上に上がると千切れ雲が太陽の周りに群がっていた。風はそれほど無い。カメラを構えて待つうちにその雲が次第に散ってゆく。それとともに太陽が右下からゆっくりと欠け始めた。
うっすらと掛かる靄の中を、赤く染まりながら沈み行く欠けた太陽。初めて見る光景だった。一緒にいた仕事仲間が、一言、やっぱり神秘だ。そうつぶやいた。

口径60mmf400屈折(トミー・ファミスコ60) カメラ感度:50 シャッター速度1/2500(Canon5DmarkⅡ)

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欠けた望月

2010年01月01日 10時28分32秒 | 

明けましておめでとうございます。

さて、このブログを読み返してみると、昨年の竹取庵は結構華々しかった。かぐや姫の遷座、自動ガイドシステムの導入、光害カットフィルターの組み込み。今年はどんな年になるのだろう。
昨夜、大晦日から元日に掛けては満月だった。ふつう満月は30日ごとに空に掛かるが、月と地球の位置関係から望遠鏡で見るとたいていどこかが少し欠けている。しかし昨夜の満月は、まったく欠けたところの無い完全な「もちづき」だった。
古代藤原の何某は、望月を己が世になぞらえて歌を詠んだというが、昨夜の月はまさにそれだったのだ。その無欠の満月に影が差し始めたのは午前4時前。影は次第に広がり、午前4時22分に最大となった。
現代の天文ファン達は元日早々の天体ショーと陽気に騒いでいたが、古代ならばパニックになるところだ。今年の秋口から初冬にかけてこの地上に何事も無ければよいがと、ふと陰陽師のような事を考えた。

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