正月休みにひいた風邪を引っ張って10日が過ぎた。竹取庵が気になりながらも、厳しい季節風の中でなかなか足がそちらに向かない。そうこうするうちに1月も半ばを過ぎてしまった。今日は夕方部分日食があると言う。
朝外に出てみると抜けるような青空が広がっていた。見せてあげるよ。空がそう微笑んでいる。だが、欠け始めは午後4時46分。もちろん仕事中だ。しかも忙しい時間帯。かなり迷ったあげく、やっぱり小型の望遠鏡とカメラを持って車に乗った。
夕刻が迫るにつれて上海の苦い思い出がよみがえる。晴れてくれるだろうか。窓の外の空がどうしても気になる。
午後4時半、会社の屋上に上がると千切れ雲が太陽の周りに群がっていた。風はそれほど無い。カメラを構えて待つうちにその雲が次第に散ってゆく。それとともに太陽が右下からゆっくりと欠け始めた。
うっすらと掛かる靄の中を、赤く染まりながら沈み行く欠けた太陽。初めて見る光景だった。一緒にいた仕事仲間が、一言、やっぱり神秘だ。そうつぶやいた。
口径60mmf400屈折(トミー・ファミスコ60) カメラ感度:50 シャッター速度1/2500(Canon5DmarkⅡ)