宇宙(そら)に続く丘

プレリュード小学校1年C組のしりとりちーが案内する宇宙への道
みかんの丘は不思議へ通じるワームホール

夜の更けて冬星座

2010年11月30日 00時20分59秒 | 

しんしんと冷えてきた。観測デッキはまだ本格的な冬支度をしていない。時計の針は午後10時を少し回った程度だが、飛行機にも邪魔されたし、そろそろ帰ろうかな。そう決めてカメラを望遠鏡から外した。後片付けを済ませて竹取庵に鍵を掛け、荷物を持って車に向かう。

見上げると満天の星。まだ撮って。空はそうせがんでいるように思えた。振り返ると竹取庵の向こうに冬星座。ああ、本当に冬が来るんだ。分かったよ、もう一枚。今夜の記念にと、持っていた荷物を地面に置いて三脚を広げ、小さいほうのカメラに対角線魚眼のレンズを付けた。

灯の消えた竹取庵。この天文台は、僕が離れると眠りに付く。星空の下で。また明日逢おうね。そう別れを告げて丘を下りた。

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秋の夜空のパックマン

2010年11月29日 00時13分19秒 | 宇宙

秋の星空はさびしいとよく言われる。明るい星が少ないせいなのだが、星図を見ると星雲や星団はずいぶん沢山ある。その中で今日はカシオペア座にあるNGC281という散光星雲を狙うことにした。

この星雲はまゆ星雲やオメガ星雲などと同じ、星のゆりかごのひとつだ。誰が付けたのか「パックマン星雲」の愛称を持っている。昔はやったゲーム、パックマンの形に似ていることから付いた名だ。しかし、口径200ミリの望遠鏡で、カメラ感度2500露出7分程度ではまだまだパックマンには見えない。地球からの距離は9500光年。前に撮影したまゆ星雲の倍近い距離だが、結構大きく写る。ただ、撮影システムのネジがあちこち緩んだのか、最近どうも星が流れる。15分露出の画像は悲惨だった。
それともう一つ。以前にも愚痴をこぼした事があるが、みかんの丘の上は沢山の定期航空路が交差している。だから、空のどこかにいつも飛行機の明かりが見え、エンジン音も途切れなくと言っていいくらい聞こえる。この夜もこんな記念写真を撮ることが出来た。

本当に、何も星雲のど真ん中を通ることは無いと思う。ただ、この写真、図らずも「周辺減光」の様子が良く読み取れる。飛行機の航跡は元々同じ明るさのはずだから、望遠鏡の筒やカメラのケースが端に行くほど光を隠す様子を知ることが出来る。

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縞が無いまま

2010年11月28日 11時01分28秒 | 

朝から晴れていた。今日は写真が撮れると思っていた。ただ、家の用事がいろいろ有って、結局丘に上がったのは午後も3時を回った頃だった。一階の工事を少し進めた後観測デッキの屋根を開ける。風が冷たい。空全体に薄いもやが掛かっているように思えた。何となく空全体が明るい。

風はそれほど無かったがとにかく冷える。望遠鏡の整備を怠っているのは分かっていたが、この寒さではやる気が起こらない。写真写真。言い訳代わりに自分にそう言い聞かせて空を見上げた。やはり最初に撮るのは久々の木星だろうか。せっかく真上に居るのだし。そう独り言を言って8センチ屈折にカメラを取り付けた。案の定揺らぎがほとんど無い。これなら撮れるかな。ただ、こんな事を言うのも言い訳がましいが、拡大投影用に使っている焦点距離5ミリのアイピースにこの夏カビを生やしてしまった。頑張って掃除をしたがガラスの表面のカビの芽が取れない。お陰で映像の切れが落ちたように思う。

それはともかく、今年の木星は間が抜けている。そう、縞が1本消えて文字通り間が抜けているのだ。9月に初めて見つけて愕然としたが、あれから3ヶ月近くたっても復活の気配は無い。まあ、縞を作っているのはアンモニアの雲なのだから形が変わるのも無理ないことなのだが。

今年の木星は縞の無いまま終わるのかな。ちょっとさびしいけれど来年に期待。

 

D:80ミリF600ミリフローライト屈折+Or5ミリ拡大投影法 CanonEOSMarkⅡ ISO3200 1/13秒×11枚コンポジット+衛星画像(ISO1600 1/2秒) 

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星はともかく

2010年11月25日 04時52分36秒 | Weblog

月は昇ってしまった。まだ、観測デッキからはその姿が拝めないが、大型の双眼鏡を通してみても、もう星雲は幽かにしか見ることが出来ない。後見るものといえば、真南に輝く木星と星団くらいしかない。おまけに北西の季節風が強くなり始め、望遠鏡で拡大した木星はせせらぎの中だ。厳しい寒さをしのぐために竹取庵の屋根をぎりぎりまで閉じ、後は時折星を眺めながらたこ焼きやお汁粉を楽しむことにした。

空が次第に明るくなってゆく。消えかけていた薄暮が、今度は東のほうから息を吹き返してくる。その中で木星だけが存在を主張しているようだった。結構楽しんでもらえたようだし、ここまでかな。荷物をまとめて丘を降りる僕らを、十七夜が見送ってくれた。

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月の出までの星空

2010年11月23日 22時17分54秒 | Weblog

以前から約束していた家族連れをみかんの丘にお招きした。移動性高気圧が西日本をおおった勤労感謝の日。明るいうちに丘からの景色や竹取庵を見てもらい、軽い食事を済ませた後、観測デッキで日暮れを待つ。今夜の月齢は16.9。月の出の時刻は午後6時5分だ。

竹取庵の北東には大きな木が数本あり、月明かりをさえぎってくれる。しかしそれも長くて数十分だ。薄暮はまだ終わっていなかったが、空には秋の天の川が浮かび始め、東の空におうし座のシンボル「すばる」も昇って来ている。この星空が後どれくらい眺められるのだろう。そう思いながらみかんの木の間に立てたカメラのシャッターを切った。

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秋の天の川

2010年11月06日 00時19分54秒 | 

穏やかな夜だった。風もほとんど無い。ダウンジャケットに身を包み、傾きを増して行くはくちょうをのんびりと眺めながら赤道儀のカチカチと言う修正音を聞いていた。赤道儀はらせん星雲を撮影し終え、次の目標を追いかけている。至福の時だった。
とその時、パソコン上のガイド星が急に暴れ始めた。自動追尾のロックが効かないのだ。あわてて撮影を中止し、あちこち点検したが異常は無い。原因不明。已む無く撮影をやめてカメラを望遠鏡から外す。ちょうど空にうす雲が掛かり始めていた。止めろと言うことかな、と無理やり納得してパソコンを閉じた。
頭の真上には秋の天の川。夏に比べるとずいぶん地味だ。最後にこれでも撮ってみるかなと、カメラにレンズを取り付けて赤道儀に載せた。カメラ感度は2500のままで露出1分。淡い天の川がたどれるだろうか。明るい星が少ないために星座を追いにくいが、真ん中の少し上にはアンドロメダの大星雲。右端には昴が見えている。真ん中で存在を主張しているのはカシオペア座の二重星団だ。
さてそろそろ帰ろう。。明日は仕事だ。時刻は10時を過ぎている。屋根を閉めようと望遠鏡のロックを外したところで気が付いた。そうだ。赤道儀のバランスを取るのを忘れていた。重さに耐えかねたモーターが滑らかに回転できなくなっていただけなのだ。基本中の基本。ああ、馬鹿。ため息をつきながら丘を降りた。

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宇宙の「らせん」

2010年11月05日 12時44分46秒 | 宇宙

長い間天気が悪かった。もう青空は戻ってこないんじゃないかと思ったりした。でもようやく開けた青い空。心は躍ったが、現実のスケジュールはなかなかそれに合わせてくれない。晴天を2回やり過ごした後の昨日、朝から晴れている。よし、今夜は星を撮るぞと出勤前に決めてカメラを車に入れた。
仕事が終わるのを待ちかねて車を走らせ、みかんの丘に着いた時、時計の針は午後8時を少し回っていた。エチオピアの美女アンドロメダ姫が出迎えてくれる。竹取庵の屋根を開けて望遠鏡にカメラをセット。今日狙うのはほぼ真南に浮かぶみずがめ座の惑星状星雲「らせん」だ。この星雲は、僕らの太陽と同じくらいの大きさの恒星が一生を終えて爆発した姿だと言う。距離650光年と地球に一番近く、調査もいろいろ進んでいる。星雲のガスを放出して縮んだ中心の星の周りに、最近塵の円盤が見つかった。そこからはX線も出ていると言う。爆風を受けた中心星の近くには、もう何も残っていないはずだった。天文学者たちの推測では、爆発の影響をほとんど受けなかった恒星系辺境の彗星たちが今、重力の均衡を失って中心星に落ち込んでいるのではないか。X線はその時失われた位置のエネルギーの代償だと言う。

星の死後、みなし児とも言えるほうき星たちがX線を発しながら、元の星の骸(むくろ)へと次々に落ちてゆく。それはまるで、母の死を悲しんで、泣きながらその後を追う子供達にも見える。「らせん」。そんなタイトルの映画も有った。ただ、星の死には怨念も悲しみも無い。有るのは次の生への希望だけだ。

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