宇宙(そら)に続く丘

プレリュード小学校1年C組のしりとりちーが案内する宇宙への道
みかんの丘は不思議へ通じるワームホール

敗北

2012年05月21日 19時50分04秒 | 

日本列島を横切る金環食帯。日本中が日食の話題で盛り上がっていた。しかしみかんの丘はその帯から少し外れている。太陽は完全なリングにならない。せっかくのチャンスだ、なんとしても太陽が完璧なリングになる帯の中心線上で見たかった。紀伊半島が良いか静岡辺りが良いか。前日まで悩んでいたが、絶望的な天気予報を目にして撮影場所を急遽家から比較的近い高知県四万十市にシフトした。高知県は中心線が通らない。それでも金環食帯の中にあるには違いないのだ、と自分に言い聞かせて前日に自宅を出発した。

瀬戸大橋を渡り長いトンネルを抜けて高知県に入るとまもなく車のフロントガラスに雨粒が当たる。気持ちが一気に暗くなった。やっぱり駄目か、そう思いながら四万十川近くのホテルへ。翌朝6時半に起きて四万十川の河川敷に観測セットを組んだ。

 

しかし、雨こそ降らないものの一面の雲。上海日食の苦い思い出が蘇ってきた。ああ、どうしてこんな天気に…

そうこうするうちにあちこちから観測成功の知らせが入る。その中には我が家からのものも有った。あきらめて家で見ればよかったのだろうか。がっかりして望遠鏡からカメラを外し、その望遠鏡を赤道儀から外して車にしまった。と、その時、河川敷に集まっていた人から「見えた!」と言う声が上がった。見上げると雲がわずかに切れてそこに明るく輝くリングが浮かんでいる。え、見えるぞ。あわててセットを組み直し、12センチの筒先を太陽に向ける。その間に月は太陽の上を滑って左下に動いていた。シャッターを切る事が出来たのは金環食が見えてから何分も経ったころ。

ああ、あの時あきらめるんじゃなかった。望遠鏡を仕舞っていなければ雲間のリングを捉えられたのに。それは自ら招いた敗北だった。

太陽の右端にこの前撮った大黒点の片割れが写っています。

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巨大黒点

2012年05月12日 22時13分39秒 | 

おととい、時々このブログにメッセージをくれる星仲間から、太陽に巨大黒点が現れたと連絡があった。金環食まであと9日。日本中が騒いでいるこの最中にお日様はまた新しいトッピクを加えようと言うのか。ほほう、それは見せてもらわなければ。と言うわけで、今日の土曜日、みかんの丘に上がる時一緒に12センチの屈折望遠鏡を持って行った。日食の撮影に使おうと家でバラしていたやつだ。

竹取庵の観測デッキに持ち上げ、専用にしているミザールの赤道儀と一緒に組み立てる。30倍の倍率になるアイピースを差し込んでそーっと覗いてみると…
おっ、本当だ。でっかい黒点が一個見える。ほかにも端のほうに小さい黒点が2対。よしよし、アイピースの横に小さいほうのカメラを取り付けて撮影。カメラ感度200、シャッタースピード3200分の1。写し取った画像の黒点部分をアップしてみた。

口径12センチながらアクロマートのため多少解像力は落ちるが、それでも黒点の周りのフィラメントらしい白い筋も見える。この画像は静止画なので分からないが、白い筋は見る間に動いて行った。フレアーの欠けらだろうか。ああ、大きいほうのカメラを持ってくるべきだった。

全体がガスで出来ている太陽は、赤道部分で自転速度が一番早い。ほぼ25日だという。金環食が起こる21日まであと9日だから、地球から見える面にこの黒点はもう居ないかもしれない。もし残っていたら黒い月が黒点をじわりじわりと隠して行く様が見えるだろうか。楽しみが一つ加わった。当日はどうぞ晴れますように。

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雲のチェッカーフラッグ

2012年05月10日 20時31分49秒 | Weblog

まだらな雲が西から東へかなりの速度で流れていた。この写真は露出がわずか2秒半。なのに下の景色に比べてずいぶん雲が流れて写っている。それほど上空の気流は速いのだ。黄砂はいつまでたっても少なくならないし、明日から仕事だ。雲を散りばめた空がチェッカーフラッグに見えてきた。そろそろ帰らなくては。

屋根を閉めて竹取庵に鍵を掛け、車に回ったところでみかんの丘の番犬太郎に逢う。ごめんねもう帰るよ。おばさんによろしく。手を振って丘を後にした。

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埃まみれの農耕神

2012年05月09日 00時17分29秒 | 

土星は英語でsaturn「サターン」という。この読みゆえにかなりの人がこの星をsatan「サタン」悪魔の星だと思っている。もちろんそうでは無い。saturnはローマ神話の農耕の神saturnusの英語読みなのだ。
高度40度を超える高みに昇ってきた農耕神に8センチを向けて覗いてみる。2年前にこの星を撮影した時、自慢の輪は真横を向いていた。それはまるで串刺しになった団子の様に見えた。それが今傾きを得て美しい姿を見せている。そう、これでこそ土星だ。ただ全体に何となく薄茶色い。黄砂の影響がこんな所にまで及んでいるのだ。それはカメラのモニターを通してみると更に顕著だった。
仕方が無い。現れはじめたまだらの雲間を縫って70枚ほど撮影する。その中から良さそうな10枚を選んで重ね合わせたのがこれ。
茶色い上に、コントラストが低い。それを少し画像処理してみたがどうだろうか。



ローマ帝国の農耕の神様は、今不毛の地ゴビ砂漠の砂埃にまみれている。綺麗な姿は後日機会が有れば撮ることにしよう。

 

使用機材:ミザール80ミリフローライト屈折望遠鏡
       ペンタックス5ミリツァイスサイズアイピース
       キャノンEOS5DmarkⅡ
       タカハシEM200Temma2

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スーパームーンのお出まし

2012年05月08日 00時37分52秒 | 

ベールをかぶった空はそのまま夕暮れとなり、やがて月の出を迎えた。今日は十五夜。しかも、事も有ろうにスーパームーンだ。地球は太陽を中心にほぼ真円の軌道を描いて回っている。しかし月の軌道はかなり楕円。だから地球から見て月は遠い時と近い時がある。その近い時の満月をスーパームーンと言うのだそうだ。
確かに今夜の月はでかい。月と地球の平均距離は38万4400キロメートル。なのに今は35万7000キロしか無い。このためいつもより当然明るい。まったくいい迷惑だ。その明るい照明がベールに反射して空一面が薄茶色くもわもわとしているではないか。星なんかほとんど見えないのだ。

 

1時間半ほど待ってみた。その間に土星は高度を上げてくる。真上に近ければベールも薄くなるかも知れない。今の時期、月の通り道は低い。スーパームーンは薄茶色のベールを横切りながら斜めに昇ってゆく。この写真の上のほう。少し左側に見えるのが土星だ。これならいけるかもしれない。8センチ屈折にカメラを繋いでみた。

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ゴールデンウィーク最終日

2012年05月07日 00時39分20秒 | Weblog

今年のゴールデンウィークは久々にこよみ通りのお休みをもらった。4月28日からの三連休と5月3日からの四連休だ。とりあえずドアを完成させるという命題が有ったため、この間昨日までに3回も丘に上がって来た。もちろん毎回カメラは車に積んではいたが、来客が有ったり天候が悪かったりと、星を撮る機会にはどうしても恵まれない。
このままではせっかくの大型連休を星無しで過ごすことになるではないか。いやだ。心の健康のためにそれだけは避けたい。と言うわけで、今日は何が何でも星を撮るつもりでやって来た。天気予報は雨のち晴れ。
晴れ。そう、確かに晴れなのだが、あたり一面春霞のようなベールに包まれている。島影もはっきりとしない。

まあいいさ、星雲や星団を撮影しなければいいのだ。3週間前に最接近したばかりの土星を写そう。そう決めていつも通り大工仕事に掛かる。ノミで玄関ドアの蝶番を埋め込む切込みを付けながらふと考えた。僕はいつまでここで大工さんをするんだろう。竹取庵を作り始めた時、完成は4年後と決めていた。なのにもう12年。まだ作り続けている。僕は何をやっているんだろう。どこまで作ってもまだ先が有る。なんだか自分がだまし絵の中の人物に思えてきた。

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