宇宙(そら)に続く丘

プレリュード小学校1年C組のしりとりちーが案内する宇宙への道
みかんの丘は不思議へ通じるワームホール

星空のもうひとつの姿

2017年01月27日 22時28分44秒 | 宇宙

レンズを赤外線用のカメラに付け替えて空に向ける。そしてレンズの前に赤外線だけを通すフィルターシートと言うものをそっと載せた。ファインダーを覗いてみるが真っ暗。当たり前か。露出はいったいいくらにすればいいのだろう。とりあえずカメラ感度1600で絞り4とし、2分半シャッターを開いてみた。しかしこれではほとんど何も写らない。その後何度も露出を変えて撮影してみたがいい結果が得られなかった。そこで目で見える赤い光も少し通すSC66と言うフィルターに換え、カメラ感度を3200にアップしてみた。そしてシャッターを切ると、3分半後にオリオンの三ツ星を取り囲むようにぼんやりと光る帯がカメラのモニターに現れた。

そう、これがバーナードループ。ずっと前から捉えたかった水素分子の雲だ。ただピントが甘い。光は波長が長いほど屈折率が低い。だからピントの位置を少し手前にずらす必要がある。そうしたつもりだったのだが目分量ではうまくいかない。このままピントを追い込みたかったが明日は仕事だ。無闇にピント位置を変えて撮りまくるよりも、改めて昼間に明るい被写体で試し撮りをしたほうが良い。今日はこのまま帰ることにした。

という訳で家に帰って、普通に撮った写真に赤外線の写真を重ねてみることにした。ところがこれがまた難しい。撮像板の大きさが同じカメラに、同じレンズを取り付けて撮影した写真は難なく重なるだろうと高をくくっていたのだが、微妙に合わない。悪戦苦闘して「比較明合成」で重ね合わせ、さらにどうしてもズレてしまう部分をカットしたのがこの写真だ。

こうしてみると水素ガスの雲はオリオン周辺だけでなく、天の川全体に広がっている。中でも赤い玉のように見えるのがいっかくじゅう座のバラ星雲だ。そしてここにガスが集まったためにその周辺が希薄になっている。まあ、ピントは甘いけれども何とか肉眼では見えない水素ガスの雲を撮影できた。この写真が寒い夜に見上げた星空のもうひとつの姿だ。これから赤外線撮影の訓練をして、空一面を撮ってみたらどんなになるだろう。画像処理をしていてそう思った。 

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久々に屋根を開ける

2017年01月27日 01時10分37秒 | 宇宙

長い間日本列島を支配していた冬型の気圧配置が緩んで移動性の高気圧が西日本に差し掛かろうとしていた。月は無い。しかもたまたま今日は休みだ。今日撮らなければ撮る日が無い。カメラバッグを車に積んで夕方までに家の用事を済ませると、日が沈む前に車をみかんの丘に走らせた。連日の激しい労働。疲れているはずなのに体が軽い。そうだ。星を撮るために丘に向かうのは本当に久しぶりだった。
丘に着くと黄昏を終えた空が迎えてくれた。満天の星。急いで竹取庵に入って観測デッキの屋根を開ける。長い間この作業をしていないのに気が付いた。潮風でモーターの電源の一つが外れかかっている。屋根の鉄骨もあちこち錆ていた。いい加減に塗らなければと思いながら10年近い歳月が流れてしまった。

やっと開けた空では冬の星座たちがかまびすしい。待ってろ。今撮ってやる。赤道儀に火を入れ、パソコンを開いてオートガイダーのウインドウを開く。まずは小さいほうのカメラCANON EOSkissX4をピギーバックで取り付けた後、ガイド星を導入して動作確認。よし、作業手順は忘れていない。カメラ感度1600で露出は30秒とした。狙うのはここだ。

この星座の周辺では水素ガスが渦を巻いているという。その渦の一つ、「バーナードループ」を写し撮る。それが今夜の目的だった。ずいぶん前からの夢。そのために赤外線撮影用のカメラを買い、フィルターだっていくつも買ったのだから…

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ひそやかな天体ショー

2017年01月10日 08時10分20秒 | 

冬の代表的な星座のひとつ「おうし座」の中の最も明るい星アルデバランが月に隠される。この「星食」と呼ばれる現象は、ネットなどでかなり前から話題になっていた。もちろん天文関係の仲間たちの間での話だ。
地球が自転しているため、空の星たちは太陽も含めてすべて東から西へと動いていく。これを「日周運動」と呼ぶが、月は地球の周りを回っているために、この日周運動に抗うように少しずつ東向きに移動する。と言っても日周運動の速さには及ばないが。これを地上から見ると月が星々の上をゆっくりと滑って行くように見える。空には星が無数にあるため月が星を隠す現象は珍しい物では無いが、肉眼でも見える星、まして0.9等と明るく、名前まで付いている星の星食となると比較的珍しい。

このアルデバランの食は岡山では9日深夜の23時54分頃始まり、翌10日の1時3分頃終わる。昨日はみかんの丘に大工仕事に上がったが、空が雲に覆われていたためそのまま帰ってしまった。しかし午後10時過ぎ、気になって空を見上げると雲の切れ間から月が見え隠れしている。あれ、見えるのかな。そこで撮ってみようと家に入った。ただ撮ると言ってもろくな機材が無い。大昔に3,600円で買ったファミスコ60を大きいほうの一眼レフに繋ぎ、三脚を使わず手持ちで撮影する事にした。星食を手持ち撮影する。このためカメラの感度を800としてみた。月だけならシャッタースピード1200分の1くらいで撮れる。しかし、その露出ではたしてアルデバランが写るだろうか。
不安に思いながら食の始まりを待ったが、時刻が近づくにつれて雲が増え、23時40分頃には全くの曇り空になってしまった。やっぱりだめか。がっかりしたものの、諦めて寝ることも出来ない。そこで食が終わる午前1時の10分ほど前に外に出てみると、え、雲がほとんど無い。よしよしと家の中に取って返してカメラを持ち出し月に向けた。シャッタースピード1250分の1とは言うものの焦点距離は400ミリある。やたら沢山シャッターを切って、その中からカメラブレの少ないものを選び出したのが上の写真だ。

判るだろうか。月のほぼ真下に小さくぽつんと浮かぶ白い点が。さすが光度0.9等のアルデバランだ。あれほど明るい月のすぐそばでちゃんと存在を主張している。撮影時刻は2016年01月10日01時04分30秒。月の後ろから抜け出して30秒ほど経ったときの写真だ。

ただ、一般の人にしてみるとこの星食は大変に地味だ。空に有る小さな光る点があるときフッと消えて、やがて月の裏から出てくる。日食や月食の、あのドラマチックさに比べると本当にひそやかなショー。翌日の新聞もテレビも、取り上げている社はどこにも無かった。

 

ところで、仕事が忙しくてちっとも上がれないみかんの丘だが、それでも竹取庵の大工仕事は少しずつ進んでいる。昨日は午後3時頃から3時間ばかりの作業で増設中の寝室の壁の一部に化粧材を貼り付け、天井の一部に断熱材を取り付けた。

ここまで遅くなった工事だが、仕事がそろそろ軌道に乗ってきたため、これまでより少し進むことになるだろう。と、いつもの楽観的な見通し論。まあ、いつかは出来るだろう。

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お正月のランデブー

2017年01月02日 19時14分45秒 | 

師走を忙しく過ごして何とか年を越し、今日は正月も二日目。昼間は買い物をしたり壊れていた家の小物を直したりで時が過ぎ、黄昏も終わったころに家の裏でゴトゴト音がする。出てみたら野良猫だ。僕の姿を見たら慌てて逃げて行った。逃げることは無いのにと寂しく思いながらふと空を見上げると…

家の西にある古墳の上に月齢4の月が掛かっている。そのすぐ横に明るく輝く金星。そうか、ランデブーだ。大みそかに空を見て、あと少ししたら二人の神様の密会だな、そう思ったのを思い出した。家の中に取って返してカメラとミニ三脚を持って出る。レンズはとりあえずカメラに付いていた標準ズームと300ミリの望遠。ミニ三脚を車の屋根に載せてズームレンズを空へ。画角をどうしようかと迷ったが、あまり広いと無粋なものが写ってしまう。なので古墳の木々を入れこんだのが上の写真だ。ランデブーと分かっていても細々した用事で丘には上がれない。悔しいけれども晴れているのがせめてもと思った。露出を変えて3枚とった後レンズを300ミリに換える。このレンズはキャノンの純正ながら廉価版で、口径が小さくキレも今一つだ。とは言いながらここまで写し取ってくれた。

まあ今夜はこんなところかな。金星が少し扁平なのは、今この惑星が太陽から見て60度ほど離れているために拡大すると半月の形をしているからだ。ただ、本当に撮りたいのは太陽系の神様ではない。嫌われ者のオリオンだ。そのために赤外線フィルターを3枚も買い、試し撮りもしながらなかなかチャンスが来ないのだ。それまでの心の繋ぎと言っては二人の神様に失礼かもしれないが、アルテミスとビーナスのランデブーは以前にも撮影している。あとおよそ1か月。そうすればオリオンがちょうど良い位置に来てくれる。その時アルテミスは一度膨らんでもう一度細くなっているはずだ。と、自分に言い聞かせて家に入った。

 

何人かの方から、一番上の写真は月の暗い側が見えているのに、下の写真ではそれが無いとご指摘を受けました。上の写真に写っている月の暗い部分は、地球の照り返しを受けて影の部分が明るく見える「地球照」と呼ばれる現象です。地球照は暗いので、これを写し取ると明るい部分が白く飛んでしまします。なので露出の違う二つの写真を合成して、2日に見た通りの月を表現してみました。

地球照をこれ以上見えるようにすると本当に月がのっぺり白くなってしまします。人間の目ではこれが両方ちゃんと見えるんです。人間の目って、つくづくすごいなと思います。

コメント (4)
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