宇宙(そら)に続く丘

プレリュード小学校1年C組のしりとりちーが案内する宇宙への道
みかんの丘は不思議へ通じるワームホール

星空のもうひとつの姿

2017年01月27日 22時28分44秒 | 宇宙

レンズを赤外線用のカメラに付け替えて空に向ける。そしてレンズの前に赤外線だけを通すフィルターシートと言うものをそっと載せた。ファインダーを覗いてみるが真っ暗。当たり前か。露出はいったいいくらにすればいいのだろう。とりあえずカメラ感度1600で絞り4とし、2分半シャッターを開いてみた。しかしこれではほとんど何も写らない。その後何度も露出を変えて撮影してみたがいい結果が得られなかった。そこで目で見える赤い光も少し通すSC66と言うフィルターに換え、カメラ感度を3200にアップしてみた。そしてシャッターを切ると、3分半後にオリオンの三ツ星を取り囲むようにぼんやりと光る帯がカメラのモニターに現れた。

そう、これがバーナードループ。ずっと前から捉えたかった水素分子の雲だ。ただピントが甘い。光は波長が長いほど屈折率が低い。だからピントの位置を少し手前にずらす必要がある。そうしたつもりだったのだが目分量ではうまくいかない。このままピントを追い込みたかったが明日は仕事だ。無闇にピント位置を変えて撮りまくるよりも、改めて昼間に明るい被写体で試し撮りをしたほうが良い。今日はこのまま帰ることにした。

という訳で家に帰って、普通に撮った写真に赤外線の写真を重ねてみることにした。ところがこれがまた難しい。撮像板の大きさが同じカメラに、同じレンズを取り付けて撮影した写真は難なく重なるだろうと高をくくっていたのだが、微妙に合わない。悪戦苦闘して「比較明合成」で重ね合わせ、さらにどうしてもズレてしまう部分をカットしたのがこの写真だ。

こうしてみると水素ガスの雲はオリオン周辺だけでなく、天の川全体に広がっている。中でも赤い玉のように見えるのがいっかくじゅう座のバラ星雲だ。そしてここにガスが集まったためにその周辺が希薄になっている。まあ、ピントは甘いけれども何とか肉眼では見えない水素ガスの雲を撮影できた。この写真が寒い夜に見上げた星空のもうひとつの姿だ。これから赤外線撮影の訓練をして、空一面を撮ってみたらどんなになるだろう。画像処理をしていてそう思った。 

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久々に屋根を開ける

2017年01月27日 01時10分37秒 | 宇宙

長い間日本列島を支配していた冬型の気圧配置が緩んで移動性の高気圧が西日本に差し掛かろうとしていた。月は無い。しかもたまたま今日は休みだ。今日撮らなければ撮る日が無い。カメラバッグを車に積んで夕方までに家の用事を済ませると、日が沈む前に車をみかんの丘に走らせた。連日の激しい労働。疲れているはずなのに体が軽い。そうだ。星を撮るために丘に向かうのは本当に久しぶりだった。
丘に着くと黄昏を終えた空が迎えてくれた。満天の星。急いで竹取庵に入って観測デッキの屋根を開ける。長い間この作業をしていないのに気が付いた。潮風でモーターの電源の一つが外れかかっている。屋根の鉄骨もあちこち錆ていた。いい加減に塗らなければと思いながら10年近い歳月が流れてしまった。

やっと開けた空では冬の星座たちがかまびすしい。待ってろ。今撮ってやる。赤道儀に火を入れ、パソコンを開いてオートガイダーのウインドウを開く。まずは小さいほうのカメラCANON EOSkissX4をピギーバックで取り付けた後、ガイド星を導入して動作確認。よし、作業手順は忘れていない。カメラ感度1600で露出は30秒とした。狙うのはここだ。

この星座の周辺では水素ガスが渦を巻いているという。その渦の一つ、「バーナードループ」を写し撮る。それが今夜の目的だった。ずいぶん前からの夢。そのために赤外線撮影用のカメラを買い、フィルターだっていくつも買ったのだから…

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囚われの銀河たち

2014年10月27日 00時01分02秒 | 宇宙

こと座は西に傾いて、替わって秋の星々が舞台に上がってきた。ただこの季節の空には、夏や冬のような目立ったスターが多くない。有名なアンドロメダ座の大星雲は何度も撮ったし、M33も二重星団もファイルに有る。何にしようかと迷った挙句、カシオペア座の南の端に有るNGC147、NGC185という二つの星雲を狙う事にした。資料で見るとこの二つはアンドロメダ星雲の伴星雲だという。伴星雲と言う事は小さく淡い楕円星雲だろう。そう思いながら筒先を向けた。

カメラ感度1600、露出6分20秒。これでは露出が足りないのかな。カメラのモニターを見た時は何も写っていないと思った。分かるだろうか。左上にうっすら見えるのがNGC185。右下にもう少しはっきりしているのがNGC174だ。伴銀河にもいろんな歴史が有るが、多くは独立した銀河だったものが近くを通ったより大きな銀河に取り込まれ、重力の鎖で繋がれ、自分の持つ星やガスを吸い取られて、中心に有った僅かな星の固まりだけになったかわいそうな星雲。言わば囚われの銀河だ。50億年後には僕らの天の川銀河にも同じ運命が待っているかも知れない。

空はいつまで経っても曇りそうにない。時刻は午後10時前。東の空には冬の星座が顔を出し始めていた。帰りたくはないが、明日はゲストを連れてこのデッキに戻ってくる。いい加減には仕舞わないと。

最後に今夜の記念ショットを撮ってみた。なんだかどこかの天文雑誌の表紙のようだ。明日もどうぞ晴れますように。

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夕暮れ時の天の川

2014年10月26日 01時26分22秒 | 宇宙

日が沈み、空の明るさが褪せて来るにしたがって、星が少しずつ現れはじめた。今日の一番星は頭の真上、こと座のベガだ。やがてデネブ、アルタイルと、夏の主役が次々にステージに登場する。天の川は今頭の真上に横たわっていた。望遠鏡の背中の雲台には、魚眼アタッチメントを載せた小さいほうのカメラが構えている。天空にまっすぐ伸びた天の川を撮るためだ。本当は真っ暗な空でこれを狙いたかった。しかし天候がそれを許してくれなかった。黄昏は残っていたが、今撮らなければもう今年のチャンスは無い。粒子を抑えるためにカメラ感度は800とし、少しでもボケを減らすために親レンズの絞りは8まで絞っている。これで露出は4分だ。淡いけれども何とか写し取れた。

さあ、次は何を撮ろう。コンピュータ画面の星図を眺めながら考えたが、なかなか決まらない。うちの子はどう。少し西に傾いた織り姫が声を掛けてきた。そうか、ドーナツ星雲M57。小さ過ぎて今までターゲットに入れていなかったが、試しに撮って見よう。大きいほうのカメラを20センチ反射に取り付けて、織り姫の機の向こうに遊ぶ娘を探した。

この星雲は平行四辺形の形をした織り姫の機の向こう側、二つの星のちょうど中間に居る。太陽くらいの大きさの星が一生を終えて、身の回りのガスを吐きだした姿。まるで卵の殻のような綺麗な形のガスは、横から見るとドーナツやリングのようにも見える。この望遠鏡の直焦点では小さくしか撮れない。

このままではつまらない。拡大撮影をしようと観測デッキの引き出しを探したが、暗がりの中では見つからなかった。いい加減にデッキの機材も整理しなければ。まあいいか、来年提出の宿題としよう。と言う訳で、宿題ばかりが増えてゆく。さあ、次は何を撮ろう。

 

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流星痕?

2014年01月06日 06時43分33秒 | 宇宙

昨年末と言うか、一週間前に上げた梁を金具で固定するのに思いの外手間取って、今日3本立てるはずの束を2本打ち込んだところで日が暮れてしまった。竹取庵の上には月齢4の月が輝いている。今夜は来客が有るし明日から仕事だ。いい加減に帰らなければならない。ただ、この空をこのままにして帰るのはあまりにももったいない。かと言って手元には標準ズームを付けた小さいほうのカメラしかなかった。せめて今浮かんでいる月と今日の成果を一緒に撮影して気持ちを収めよう。

竹取庵から持ち出した三脚にカメラを付けて撮影した一枚。モニターに現れた画像を見ると、月の左側に白いひげが生えている。この時は飛行機雲かなという程度で何も思わなかった。それよりも、あたりを照らす月を見ているうちに以前からやってみたいと思っていた目論見が頭をよぎる。日周運動の動画だ。竹取庵の向こうに沈んでゆく月。もちろん今日は時間的に月没までは無理としても、どれくらいの間隔で撮影すれば動画っぽく見えるのか、そのデータだけでも取れないだろうか。この理屈が自分でも、帰りたくない言い訳に過ぎない事は分かっていた。

レンズは標準ズーム。ワイドいっぱいでも18ミリまでしか無い。みかん畑の東の端に三脚を立ててカメラを載せる。カメラ感度1600、絞り3.5、露出20秒。撮影間隔3分。そう決めてシャッターを押す。最初の1枚で気が付いた。月の左側のひげが成長している。

え、飛行機雲、それともレンズの汚れかな。
撮影の合間にカメラの前に行ってレンズを確認したが、それらしい汚れも無い。不思議に思いながら撮影を続けるうちに月のひげは消えていった。インターバル撮影を1時間余りしたところでタイムリミットとなり、帰宅して来客対応の後画像処理。出来上がったのがこのgif動画だ。

丘にいる時気付かなかった事がいろいろと思い出される。画像でも分かるのだが、三分間隔の撮影の間に空を飛行機が縦横に飛んでいる。動画の中の長く伸びた光の筋が飛行機だ。しかしそのどれも飛行機雲を残していない。そう、月のひげは飛行機雲なんかじゃない。それに、日周運動に合わせて西に動いている。そしてようやく思い当った。これは流星痕ではないか。

宇宙の塵が地球の大気に飛び込むと、大気との摩擦熱で燃え上がり、流れ星となって僕らの目に見える。その塵の組成や大きさによって、時に飛行機雲のような煙を残す事が有る。その高度はおよそ100キロ、10万メートルだ。航空機の飛行高度はせいぜい1万メートルだから、高さはその10倍。そこには飛行機雲を作る水蒸気はほとんど無い。しかも飛行機雲にしては短すぎる。間違い無かった。知らずに捉えた流星痕。ただ、撮影中、いくら目を凝らしても夜空にそれらしい雲は確認できなかった。20秒という露光が捉えた星屑のメッセージだ。
とそこまで考えて気が付いた。これだけの流星痕を残すほどの流れ星を見逃していたのだ。ああ、残念!

それはともかく、日周運動をgif動画にするなら3分間隔の撮影は荒すぎる。次は1分間隔にしてみよう。ただ、3分間隔24枚のこの動画ですら2.2MBもある。1分間隔、もっと大きな画像。それを実現出来てもここにアップできるかどうか、これはやってみなくては分からない。

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こんどこそ

2013年10月09日 19時34分00秒 | 宇宙

去年北アメリカ星雲を狙ったのは11月。あの時は天の川がすでに西に傾き、しかも空には靄も月も有った。しかし今夜は違う。被写体は大気の影響を一番受けにくい天頂。靄も月も無い。これで外せば笑いものだ。

カメラをアップいっぱいの135ミリにしてズームリングをセロテープで固定する。2分の試し撮りをして画角を決めたあと、カメラ感度1600、露出10分でシャッターを開いた。カメラは10分露出した後約10分掛けてメモリーカードにデータを転送する。1枚撮るのに20分。これを3枚撮って、うち2枚を重ねたのが上に写真だ。
大きいカメラほどの滑らかさは無いが、こいつとしては会心の出来かな。それにしてもこの辺りは賑やかだ。星の色が様々ならガスの色もさまざま。やっぱり銀河の回転面だけの事は有る。次回大きい方のカメラで狙いたいとも思ったが、小さい方のカメラにもプライドがある。この天体はここまでかな。

ところで改めて見ると北アメリカ星雲は大きい。写真の上で測ったら、直径が2度57分も有った。月の直径が約30分だからざっと6倍になる。初め予定してた300ミリのレンズではデネブと一緒には撮れなかった。

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宿題を片付けなければ

2013年10月07日 21時39分57秒 | 宇宙

観測デッキの屋根を開ける。しずしずと開けば格好が良いが、安物ウインチのせいか竹取庵の屋根は、毎回「ガキン、バキン」と壊れそうな音が出る。その騒音の中で黄昏の空は広がっていった。透明度は高いが雲がやたら散らばっている。撮れるかな。雲が有っても晴れの区域が大きければ星は撮れる。しかし、量が少なくてもまんべんなく散らばっていると、数分の露出の間にも必ず雲が邪魔をする。今日はどうだろう。

ここにある3つの反射望遠鏡はどれも未整備。何とかしなければと思いながらそのままになっていた。ただ今日の撮影に望遠鏡は使わない。今夜撮影を予定しているのは以前宿題としていた星雲だ。この宿題を片付けなければ季節が変わってしまう。その相手がかなり大きいため、望遠鏡より視野の広い望遠レンズのほうがうまくいく。それだけに雲は邪魔。心配をよそに空が明るさを失っていった。

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アンドロメダ銀河 50億年のちの加害者

2012年10月10日 00時12分31秒 | 宇宙

そうだ、今夜はアンドロメダを撮ってみよう。
初めの計画は全部白紙に戻してお隣りの銀河を狙うことにした。とは言え、アンドロメダ銀河は以前撮影している。それ以降機材が新しくなったわけでも条件が変わった訳でも無い。どうしよう。まあ、思い立ったのだし、機材のテストのつもりでやってみることにしよう。

1階の居間に下ろしていた8センチの屈折を持って上がって赤道儀に取り付け、20センチ反射にカメラを繋いでバランスを取る。バランスウェイトの軸がすっかり錆びていた。可愛そうに。観測デッキは隙間だらけ。強い海風が吹けば潮気が中まで入ってくる。それをもう何年もメンテナンス無しで使っているのだ。ごめんね。もう少し暇が出来たらチューニングする。
8センチにガイド星を導入して自動ガイドに入ろうとしたが赤道儀が言う事を聞かない。接続を確認したうえ、コネクターを差し直して再起動。今度は動く。潮風が赤道儀内の回路まで侵入して結線を侵しているようだ。やれやれ。

騙しながら撮影したが、パソコンのモニター上でもガイド星が暴れる。仕上がった写真は案の定、星像がぽってり膨らんでいた。仕方無いか。上出来とは言えないが、これが今夜のアンドロメダ星雲。次第に僕らに近づいている巨大銀河だ。そのスピードは毎秒122キロだという。今この銀河との距離はおよそ239万光年で、衝突は50億年後。衝突とはいっても、軽トラックにダンプがぶつかってくるようなものだ。優劣ははっきりしている。しかも、衝突のかなり前から、想像を絶する引力で僕らの天の川銀河は形を変えられてしまう。太陽の周りで星が次々に生まれ始め、仮に地球が形を保っていたとしても、出来たばかりの星が放つビームに地上は焼き尽くされるだろう。それとも先に年老いた太陽に飲み込まれるかな。

ふふふ、ノストラダムスも想像しなかった終末がやがてやって来る。それは西暦5000万世紀への大予言だ。ただ、この予言はけっして外れない。

 

友人とのメールの中で、ふとそんなにきれいな数字になるのだろうかという疑問がわき、改めて計算してみました。このままのスピードだと、衝突するのは正確には58億7297万4000年後です。ただ、接近するとスピードが上がるので、やっぱり50億年あまりで衝突しそうです。

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星は死して殻を残す

2011年02月26日 23時49分33秒 | 宇宙

最後に星を撮影してもう1カ月が経ってしまった。ようやく訪れた撮影日和。この天気、夕方まで持つかなと半信半疑で上がったみかんの丘はもう春の匂いがしていた。日が落ちるまで大工仕事をして、天気はどうかなと外に出てみると薄もやながら久々の星空だ。これはいけるかなと竹取庵の屋根を開ける。まだ明るさの残る空に冬の星座が鮮やかだった。
東の空には早くも春の星々が顔をのぞけている。これはまずい。実はこの冬こそ撮ろうと思っていた星雲があった。雄牛の右の角の先、メシエカタログの1番「カニ星雲」だ。今まで何度も狙いながら思うような画像が撮れず、ずっと宿題となっていたのだが、このままではまた撮れず終いになってしまう。望遠鏡にカメラを取り付けて感度を2500にセット。この星雲は結構明るい。この感度で撮れるはずだ。ただ20センチでどこまで出るのだろうか。露出を2分、3分、5分と撮っていく。その3枚を画像処理して重ね合わせたのがこれ。大望遠鏡のようにフィラメントと呼ばれる光の筋をそれほどはっきり写し取ることは無理だったが、まあ何とか良い事にしよう。望遠鏡の改造が功を奏したようだ。

この星雲は今から1000年近く前に大きな星が大爆発を起こした名残りだ。超新星爆発という名は、何も無い様に思われていた場所に、いきなり明るい星が現れるということからきている。この星は地球から7000光年とかなり離れてはいたが、爆発の輝きは夜の地上を煌々と照らしたという。見てみたい。どんな情景なのだろうか。ほとんどの星は最後を迎える時大なり小なり爆発を起こす。それは大きい星になればなるほど激しい。爆発のシステム自体が小さい星と異なるのだ。星は死して爆発の名残りの殻を残す。そしてその殻は今でも膨らみ続けている。

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M78星雲

2011年01月10日 00時55分24秒 | 宇宙

オリオンの三ツ星の左上に淡く光るガスの塊がある。M78だ。望遠鏡の光軸調整はいまひとつ完全なところまで追い込めなかったが、とりあえず星を撮ってみたいという願望のほうが先に立って筒先をオリオンに向けた。望遠鏡の何をどういじったのかと言うと、20センチ望遠鏡の筒の口に付いている小さな鏡を支えるスパイダーと呼ばれる支えの棒を、薄い金属の板のものと交換したのだ。うまくいけば明るい星から出ていた4本の角が細くなって画像が鮮明になる。今回はそれに加えて、筒の奥にある主鏡の縁にも黒いリングを入れて見た。その結果が早く知りたかったのだ。

そこで最初に狙ったのがM78だったという訳だ。この星雲は以前ピントが動いてうまく撮影できなかった曰く付きの星雲だ。M78と言えばウルトラマンの故郷として有名だ。この星雲の中にある、地球の60倍の大きさの惑星がウルトラの星というわけだが、残念な事にこの星雲は星間ガスの集まりで、ここにあるのはみんな生まれたばかりの星たちだ。だからここにウルトラの星は無い。実は原作者はウルトラの星をM87と設定していたのだが、台本の印刷屋さんがM78と誤植してしまったという裏話がある。

それはさて置き、薄もやのお陰で長時間露光が出来ない分星雲も薄くしか写らなかった。しかし、確かに星は小さく写っている。星雲のディテールも前よりはよく出ている。ただ、光軸のわずかなズレが仇となってひずんでしまった。冷えてきたし、細かな調整は次の機会と言うことにして置こう。

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宇宙はシャボン玉

2010年12月09日 00時28分08秒 | 宇宙

観測デッキに寝転がって、ぼんやりと星空を見上げていた。

 

僕らの住む宇宙は、10次元空間に浮かぶ3次元空間の膜だそうだ。それも、何にもないところから突然生まれ、急激に膨らんで今の大きさになったと言う。ずいぶん頑張って想像してみた。何となく、いつか竹取庵の観測デッキで飛ばしたシャボン玉が思い浮かんだ。ストローの先で生まれ、次第に大きくなるシャボン玉。やがてストローから離れ、ふわふわと揺れながらみかんの畑の上を、風に乗って運ばれてゆく。その膜の表面に漂うのは、虹色の模様ではなく無数の銀河だ。

 

この宇宙は本当にそんな姿なのだろうか。思いも付かない広大な10次元空間に漂う、小さなシャボン玉の表面の、さらに小さな小さな銀河の一つ。その光の渦巻きの端くれの、もっと小さな空間で、ある時ガスの中から星が生まれ、その星の周囲を回るわずかな土くれの上に、僕らは生を得た。シャボン玉がストローを離れてからその時までに、140億年近い時間が流れていた。本当だろうか。

 

宇宙は、自分を見てもらうために僕らを産んだと言ったヨーロッパの科学者がいた。それは違うと思う。もし自分の姿を見せたいならば、それが目的ならば、僕らは特等席に生まれていたはずだ。こんな宇宙の辺境に居るはずが無い。

 

僕らはきっと、偶然に偶然が重なって、何かの弾みで生まれたんだ。だから宇宙は、僕らをかき消すのに何のためらいも無いだろう。僕らは、シャボン玉の表面にほんの一瞬生まれた、虹のひと色でしか無いのだから。

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銀河の領域

2010年12月06日 00時12分08秒 | 宇宙

黄昏が収まり掛けていた。日暮れの後の薄明かりを天文薄明という。なんで黄昏ではいけないのか、僕には理解できない。が、それはさておき、本来の暗さを取り戻しかけた南の空にくじら座が見える。岩に繋がれたアンドロメダ姫を夜毎襲ったというこの化け鯨の領域には、やたら銀河が見える。今夜はその中の一つ、M77に望遠鏡の筒先を向けることにした。

メシエカタログ77番。くじら座の中で4番目に明るいδ星の近くにあるこの星雲(画像左)は、19世紀の中頃になって、地球から遠く離れた銀河であることが確認され、さらに20世紀に入って中心部が激しく活動して強い赤外線やジェットを噴出していることも分かってきた。そこには巨大なブラックホールがあるという。この銀河と僕らの地球との距離はおよそ6000万光年。それなのに中心部は8等級という明るさを持っている。そこから発せられる強い光やジェットは、ブラックホールに落ちて行く星たちの悲鳴なのだ。

この悲劇の銀河のすぐ近くには、渦巻き銀河をほぼ真横から見た形のNGC1055が見える。この二つの銀河は実際の距離も22万光年と比較的近いが、M77のご近所さんはNGC1055だけではない。この画像を見ても他に5つの銀河が確認できる。実際、このあたりにはM77のお仲間が数十個有り、くじら座銀河群と呼ばれている。こうした銀河群は空のあちこちに有るが、その距離と位置のデータを元に、一つ一つを3次元の座標に落としていった女性天文学者が居る。その気の遠くなるような地道な作業が、今の宇宙の大規模構造といわれる姿を明らかにした。

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秋の夜空のパックマン

2010年11月29日 00時13分19秒 | 宇宙

秋の星空はさびしいとよく言われる。明るい星が少ないせいなのだが、星図を見ると星雲や星団はずいぶん沢山ある。その中で今日はカシオペア座にあるNGC281という散光星雲を狙うことにした。

この星雲はまゆ星雲やオメガ星雲などと同じ、星のゆりかごのひとつだ。誰が付けたのか「パックマン星雲」の愛称を持っている。昔はやったゲーム、パックマンの形に似ていることから付いた名だ。しかし、口径200ミリの望遠鏡で、カメラ感度2500露出7分程度ではまだまだパックマンには見えない。地球からの距離は9500光年。前に撮影したまゆ星雲の倍近い距離だが、結構大きく写る。ただ、撮影システムのネジがあちこち緩んだのか、最近どうも星が流れる。15分露出の画像は悲惨だった。
それともう一つ。以前にも愚痴をこぼした事があるが、みかんの丘の上は沢山の定期航空路が交差している。だから、空のどこかにいつも飛行機の明かりが見え、エンジン音も途切れなくと言っていいくらい聞こえる。この夜もこんな記念写真を撮ることが出来た。

本当に、何も星雲のど真ん中を通ることは無いと思う。ただ、この写真、図らずも「周辺減光」の様子が良く読み取れる。飛行機の航跡は元々同じ明るさのはずだから、望遠鏡の筒やカメラのケースが端に行くほど光を隠す様子を知ることが出来る。

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宇宙の「らせん」

2010年11月05日 12時44分46秒 | 宇宙

長い間天気が悪かった。もう青空は戻ってこないんじゃないかと思ったりした。でもようやく開けた青い空。心は躍ったが、現実のスケジュールはなかなかそれに合わせてくれない。晴天を2回やり過ごした後の昨日、朝から晴れている。よし、今夜は星を撮るぞと出勤前に決めてカメラを車に入れた。
仕事が終わるのを待ちかねて車を走らせ、みかんの丘に着いた時、時計の針は午後8時を少し回っていた。エチオピアの美女アンドロメダ姫が出迎えてくれる。竹取庵の屋根を開けて望遠鏡にカメラをセット。今日狙うのはほぼ真南に浮かぶみずがめ座の惑星状星雲「らせん」だ。この星雲は、僕らの太陽と同じくらいの大きさの恒星が一生を終えて爆発した姿だと言う。距離650光年と地球に一番近く、調査もいろいろ進んでいる。星雲のガスを放出して縮んだ中心の星の周りに、最近塵の円盤が見つかった。そこからはX線も出ていると言う。爆風を受けた中心星の近くには、もう何も残っていないはずだった。天文学者たちの推測では、爆発の影響をほとんど受けなかった恒星系辺境の彗星たちが今、重力の均衡を失って中心星に落ち込んでいるのではないか。X線はその時失われた位置のエネルギーの代償だと言う。

星の死後、みなし児とも言えるほうき星たちがX線を発しながら、元の星の骸(むくろ)へと次々に落ちてゆく。それはまるで、母の死を悲しんで、泣きながらその後を追う子供達にも見える。「らせん」。そんなタイトルの映画も有った。ただ、星の死には怨念も悲しみも無い。有るのは次の生への希望だけだ。

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星屑にうもれた繭

2010年10月16日 08時36分33秒 | 宇宙

天の川にはあちこちに、まるで腕を伸ばしたアメーバのような細く長い暗黒帯がある。その黒いガスの塊からやがて次の星々が産まれるのだ。本当はそれは広い夜空のどこででも起こっている事なのだろうが、天の川では背景の星明りがそれを浮かび上がらせているだけなのかも知れない。
そのひとつ、IC5146。通称まゆ星雲。それは、はくちょう座の端を流れる天の川に作られた産室で、神が紡ぎ上げた繭そのものだ。僕の機材では鮮明な映像を十分捕らえる事が出来ないが、この画像の中には3つのガスが写し出されている。まず、星屑を黒く隠す暗黒帯のガス。次に自分ではまだ光ることが出来ず、周りの星の明かりを受けてぼんやりと青く見えるガス。最後が自ら赤く光るガス。赤い光は温められた水素が発している。

次回はその暗黒帯を含む全体を撮ってみよう。また宿題が増えた気がした。

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