宇宙(そら)に続く丘

プレリュード小学校1年C組のしりとりちーが案内する宇宙への道
みかんの丘は不思議へ通じるワームホール

星座はめぐる

2008年12月30日 11時55分33秒 | Weblog
おじさんの告別式は近くの町で行われた。驚くほど多くの人が訪れ、みんながそれぞれの涙を流した。みかんの丘で初めておじさんに会った頃の事を思い出し、僕も涙が止まらなかった。
おじさんとおばさんは終戦後戦地から戻ってここを開墾した。それ以来60数年、この丘はおじさんの家族をはじめ多くの人を迎え、多くの人を送り出した。そして今僕がここに腰を落ち着けようとしている。

僕がしなくてはならないのは出来るだけ早く竹取庵を完成させることと、丘にみかんを絶やさない事。
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おじさんの死

2008年12月28日 13時04分04秒 | Weblog
次の年の初夏、みかんの木は一斉にたくさんの花を付けた。丘が甘酸っぱい匂いで包まれる。その頃僕は病院の処方した薬が功を奏して病状が回復に向かっていた。みかんの丘の木々が僕を祝福してくれているように思えた。
おじさんはタバコをふかしながら僕の回復を喜んでくれた。僕が出来るだけ早く屋根を載せるから、それまで元気で居て欲しいと頼んだが、おじさんは黙って答えなかった。
それからひと月ほどして訪ねると、台所の前におばさんがぽつんと居る。おじさんはと聞くと病院だと言う。病名は肺ガンだった。かなり前から悪かったそうだ。

僕が訃報を聞いたのはそれから2週間後のことだった。享年89歳。
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時だけが過ぎて…

2008年12月25日 23時26分21秒 | Weblog
実は、夏頃から気付いていた。ノミを使うと槌を持つほうの手首が痛い。なぜだか判らない。それがわかったのはその年のみかんが実る頃。病名はリウマチだった。
ウソでしょ、ね、まだ若いのに、する事がいっぱいあるのに。
やがてひざもひじも腫れ上がり、僕はとうとう職場の階段すら昇り降り出来なくなった。それでもまわりの声援の中、必死で仕事を続けた。そしてみかんの丘にも出掛けていった。何も出来ないというのに。
竹取庵は網をかぶったまま黙って僕の復帰を待っていた。戻らなければ…

深まる秋の中、丘を時だけが過ぎてゆく。
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二度と飛ばないように

2008年12月23日 22時05分45秒 | Weblog
夏のある日曜日、おじさんからまたまた電話があった。竹取庵にネットを掛けてもいいかと聞く。台風が接近していた。二度と屋根が飛ばないようにしたいと言うのだ。
僕の天文台はおじさんの夢でもあった。その夢が壊れるのを防ぎたいのだと思った。
行ってみると、おじさんとお孫さんが巨大な網を用意して待っている。息子さんの勤務しているゴルフ場から廃物をもらってきたのだそうだ。3人で建物を網で包んだ。もう飛ぶ事は無さそうだが、これでは外の工事が何も出来ない。
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飛んだことになった

2008年12月21日 21時35分40秒 | Weblog
それから1ヶ月ほどたった土曜日の朝、またおじさんから電話があった。屋根が飛んだという。あわててみかんの丘に行ってみると、なんとせっかく作った仮屋根が上下ひっくり返って竹取庵の北側の離れたところに軟着陸している。
杉の木を倒すほどの風が吹くみかんの丘だ。かなり注意をして作ったつもりだったが、床と屋根をつなぐ7本の垂木は全て引きちぎられていた。
ただ屋根自体はどこも壊れていない。上下を元に戻してロープをかけ、ゆっくりと二階に持ち上げて元に戻した。こんどこそ頑丈に取り付けたのは言うまでも無い。
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かりそめの屋根

2008年12月19日 11時27分23秒 | Weblog
春が過ぎ、みかんの丘に雨の季節が近づいてきた。竹取庵はこれまで工事を終わるごとにブルーシートを掛けて帰っていた。しかし、いくらこまめにカバーをしても風であおられ、また、シートの傷みで水が漏れてしまう。そこで、二階の壁が出来ているところだけでも屋根を作ろうと思った。
垂木を組み合わせて波板を打ち付ける。屋根の無い所は波板を直接取り付けた。無駄な出費ではあったが、工事が長引いて木材が劣化するよりはましだ。特にシロアリ被害を食い止めるためにも仕方のない経費だと思った。
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霧の中で…

2008年12月17日 13時47分51秒 | Weblog

みかんの丘は海のそば。季節によっては海霧が立ち込める。ある冷え込んだ日、丘は一面の霧に包まれた。太陽の位置さえ分からない。幻想的な風景を楽しみながら作業に入る。
霧の正体はもちろん細かい水の粒だ。しばらくすると材料も体も濡れてきた。寒さに作業の手を止め、ふと思い立って竹取庵を離れてみた。なんだかおとぎの国に出てくる魔法使いの小屋、竹取庵を遠くから見るとそんな風に見える。嬉しくなって写真を撮り、作業に戻る。

魔法使いの小屋を作る大工、なんだかかっこいい。空想だけがどんどん膨らんでゆく。僕は馬鹿だな、金槌を握りながらそう思った。

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頂上まであと少し

2008年12月15日 15時37分48秒 | Weblog
竹取庵に常設される望遠鏡は45センチニュートン反射と28センチシュミットカセグレン反射、それに20センチ短焦点ニュートンの3本。このうち28センチと20センチは同じ赤道儀を共用する。そのペディスタル(土台)が、建物の南側に露出したレンガ煙突を思わせる柱の中にある。
ペディスタルそのものは12センチのブロックを正方形に積み上げ、中にコンクリートを流し込んである。その周囲を鉄筋コンクリートとレンガで巻いて行くのだが、レンガ積みがこんなに大変な作業だとは思わなかった。でも、それもあと少しで終わる。
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かわいい戦士達

2008年12月12日 02時47分55秒 | Weblog
竹取庵の建設は仕事があるので週末にしか出来ない。それも毎週必ず来る事が出来るわけではない。それでも少しずつ建設は進んでいた。その中世の砦の様な建設現場を、本当の砦として使っている戦士がいることをある日知った。おじさんとおばさんのひい孫たちだ。
近くの町に住む彼らは、両親の休みにここに連れてきてもらうのが任務だった。聞けば砦への出勤日数は僕よりはるかに多い。

どうぞ怪我などしませんように。そしてこの子達のためにも、竹取庵を早く作り上げてやりたい。楽しそうに遊ぶ二人を眺めながらそう思った。
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一階は居間

2008年12月09日 10時45分52秒 | Weblog
シロアリ対策をようやく終え、二階の桁に掛かった。テラスから眺めると、おぼろげながら一階の様子が見えてくる。レンガ積みのペディスタルとブロック積みのペディスタルの間は、狭いながらも居間。その向こうの右側には台所とトイレを作る。左は裏口への通路だ。
とは言いながらもブルーシートの掛かっていない手前はいまだ雨ざらしのまま。いつになったら屋根が出来るのだろうか。

心だけははやるが休みも資金も計画達成には程遠い。
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もう一つの災難

2008年12月07日 14時41分23秒 | Weblog
台風の被害から立ち直って工事が進み始めていたとき、ふと床の上の段ボール箱がボロボロになっているのに気付いた。板切れを詰めていた箱だ。不思議に思って箱を移動させようとしたら底が抜けてシロアリが現れた。まさかの出現だった。調べてみると、被害は床のコンパネの下や根太にまで広がっていた。
シロアリ対策はそれなりにやってはいたが、ダンボールこそシロアリの大好物である事を知らなかったのだ。この箱はしばらく地面に置いていた。その間に侵入し、箱の底から床に移動したのだ。
床のコンパネを全て剥がしてシロアリ防除を行う。幸い食害は表面だけだった。改めて全ての木部にシロアリとキクイムシの対策をしたのは言うまでも無い。
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観測フロアの囲い壁

2008年12月04日 13時51分55秒 | Weblog
みかんの花が散って小さな実が出来る頃、竹取庵の工事も少し進んでいた。二階の観測フロアの周りを囲む壁が形を現してきたのだ。この壁の上に梁を載せ、その上に可動式の屋根が載る。
工事が終わると毎回ブルーシートを掛けて帰るが、風ではためくしもちろん防水も中途半端。早く屋根がほしい。残り半分。この半分が仕上がるとその下で生活が出来る。

そう思いながら季節はまた、真夏へと向かっていた。
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みかんの苗

2008年12月02日 00時08分26秒 | Weblog
みかんの丘に異変が起きていた。一面に植えられているみかんの木の、ところどころで葉が黄色くなって枯れ始めている。
どうしたんだろうと調べてみると、どの木の根元にもカミキリムシやキクイムシが入っていた。原因はあの、杉の木を倒した台風だった。ものすごい風が海から塩を運び、土の質を変えてしまった。根を張ったみかんの木は逃げられない。勢いが弱ったところを虫達に襲われたのだ。
枯れてしまった所に新しく苗を植えた。育ってくれるだろうか。

苗は植えて数ヵ月後、驚くほどたくさんの花を付けた。
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