しばらくぶりに上ったみかんの丘。風はすっかり秋だ。今年の夏の天候は悲惨だった。米の作況指数がマイナスだと言う。昔なら飢饉になるところだ。丘のみかんも虫や病気にずいぶん傷められたが、それでも早生の木がそろそろ色付き始めていた。畑を見回ってみると、また何本か駄目になりそうな木が有る。いつも世話をしてくれるおばさんの娘さん夫婦も、今年はブドウのハウスが忙しい。それにこの天候だ。自然に抗うのは並大抵ではない。
大工仕事を一段落させて外に出てみると、期待した通り晴れ間が広がっていた。
今月は大切なチャンスを二度逃している。今夜こそ撮らなければ。長い間ちゃんとした星の写真を撮れていない。もうずいぶん前から僕は本来の自分らしさを失くしていた。イライラもピークだ。星が撮れないと言うと、運も有りますからね、と同情してくれる人が居る。でも違う。もちろんいい写真は撮りたい。ただ、僕が撮る天体写真なんかよりはるかにきれいな写真はネットでいくらでも見られる。そうじゃない、僕はこの丘で星と繋がっていたい。僕が星の写真を撮るのは、ここで星と繋がっている、その証拠が欲しいだけなのだ。