大学生の頃、
鈴木祥子さんの曲をよく聴いていた時期がある。
“どこにもかえらない”とか、よくエンドレスでかけていたものだけど、
相当キテいたな、と思う。
“どこにもかえらない”ではなく、“どこにもかえれない”という、
理由のわからない喪失感を抱えていた。
それまで、わたしの内面に確かに存在していた、
懐かしい何かを、喪ってしまったと感じていた。
***
今年の五月、愛知県の東北にある、鳳来町に行く機会があった。
三大東照宮の一つとされる、
鳳来山東照宮を訪ねるために。
鳳来山東照宮のある鳳来寺山は、薬師如来の古い霊場で、
家康公ゆかりの地でもある。
母君がそこで祈願して、家康公を授かったのだ。
そのために家康公は、真達羅大将の生まれ変わり…
また、薬師如来の化身とも言われた。
家光公はその由縁を知って心動かされ、
ここに東照宮を建造することを発願する。
それは家光公存命中には叶わず、
一代経た家綱公になってようやく完成したのが、
鳳来山東照宮である。
***
その日は雨で、一面、深い霧に包まれていた。
駐車場から東照宮へは山道をしばらく行く。
普通なら怖いような状況だが、わたしはなんだか幸せだった。
その雨が、親しいものに感じられたから。
東照宮に着くと、随神が、
秀吉や信長ではなく、神々であることを知った。
確か、白山と熊野…そして山王の三権現だったと思う。
***
その日のわたしは、
鈴木祥子さんの“優しい雨”という曲を、繰り返し心に聴いていた。
なぜかとても幸せで、
大学の頃に物悲しく聴いた曲とは、なにか違うもののように、
感じていた。
あの頃、喪ってしまったものを、取り戻したように。
鈴木祥子さんの曲をよく聴いていた時期がある。
“どこにもかえらない”とか、よくエンドレスでかけていたものだけど、
相当キテいたな、と思う。
“どこにもかえらない”ではなく、“どこにもかえれない”という、
理由のわからない喪失感を抱えていた。
それまで、わたしの内面に確かに存在していた、
懐かしい何かを、喪ってしまったと感じていた。
***
今年の五月、愛知県の東北にある、鳳来町に行く機会があった。
三大東照宮の一つとされる、
鳳来山東照宮を訪ねるために。
鳳来山東照宮のある鳳来寺山は、薬師如来の古い霊場で、
家康公ゆかりの地でもある。
母君がそこで祈願して、家康公を授かったのだ。
そのために家康公は、真達羅大将の生まれ変わり…
また、薬師如来の化身とも言われた。
家光公はその由縁を知って心動かされ、
ここに東照宮を建造することを発願する。
それは家光公存命中には叶わず、
一代経た家綱公になってようやく完成したのが、
鳳来山東照宮である。
***
その日は雨で、一面、深い霧に包まれていた。
駐車場から東照宮へは山道をしばらく行く。
普通なら怖いような状況だが、わたしはなんだか幸せだった。
その雨が、親しいものに感じられたから。
東照宮に着くと、随神が、
秀吉や信長ではなく、神々であることを知った。
確か、白山と熊野…そして山王の三権現だったと思う。
***
その日のわたしは、
鈴木祥子さんの“優しい雨”という曲を、繰り返し心に聴いていた。
なぜかとても幸せで、
大学の頃に物悲しく聴いた曲とは、なにか違うもののように、
感じていた。
あの頃、喪ってしまったものを、取り戻したように。