今回は、DENに移籍するかもしれない、Ryan Fitzpatrickを調べてみました。決まる前に公開しないと、原稿を直さないといけなくなりますのでさっさと行きます。
このQBに皆さんが持つ印象はどんなものでしょう。
・Harvard卒でWonderlic Testを9分で回答
・ひげ
・名前の文字数が多すぎてJerseyの背中に並べるのが大変
・オードリーの若林に嫌われている
・Zeno Smith殴打事件後、NYJでまさかのブレーク
くらいでしょうか。
Fitzpatrickは2005年のドラフト7巡目、全体250位で(この年のQBとしては一番最後に)STL(Rams)に指名されて、NFL入りしました。全体1位が現KC(指名時はSF)のAlex Smithで、Aaron Rodgersが24位まで待たされてからGBに指名されたあの年です。
Harvard大卒の選手は非常に珍しくNFLにはこれまで数人しかいないとのこと(ちなみにNBAでは、現役のJeremy Linを含めて3人)。NFLのスカウティングコンバインで全員が受けるWonderlic Test(一種の知能テスト)を制限時間12分のところを9分で仕上げて、歴代のQBで最高点をとったそうです。まあつまり、頭がすごく良いわけです。このあたりの話は、いくつかネットに転がっているので興味がある方は探してください。
ただ、プレイぶりもクレバーかというとそうではないようで、パッサーレーティングはキャリア全体で80.8とそれほど高くありません。目立つ特徴があると、そこしか認識されないという副作用もあるわけで、筆者の友人の熱心なRamsファンによると、入団当時は「ハーバードを出た3番手QB」程度の印象だったといいます。
それでも1年目は、エースQBのMarc Bulgerが肩を怪我したこともあって3試合に先発しました。チーム2番手QBだったJamie MartinをリリーフしたWeek12の@HOUでは、310ヤードを投げてチームの逆転勝利に貢献しています。その後、3試合に先発するのですが、Week14の@MINで5INTというとんでもないことをやらかします。
STLで3番手QBとして2年過ごした後、CINに移籍。2シーズン目の2008年には、怪我を負ったPalmerの代わりに12試合で先発しました。その後のBUFで過ごした4シーズンでは、最後の2シーズンで全試合に先発しています。
TEN→HOU→NYJと1年ずつ渡り歩いたここ数年を見ている限りは、エースQBの座をライバルと争って勝ち取るパターンが多いようです。ともあれ、全体250位でスタートした選手としてはそこそこのキャリアといえるでしょう。
ただFitzpatrickが先発した試合の勝率はよくて5割、それほど強くないチームにいたこともあって負け越しが続きました。Statsから浮かび上がるのは、先ほども触れたINTの多さ。2011年シーズンは23回のINTを食らって、インターセプト王となっています。
2015年のNYJでも、Geno Smithと先発を争うものの2番手扱いでした。それが変わったのは、例の殴打事件ですね(前回も触れたので略)。開幕戦に先発QBの座を得てからは快進撃を始めました。
ここで、以前取り上げたパッサーレーティング算出式をもう一度取り上げます(ちょっと横道に逸れるので青字部分は飛ばしてもらっても大丈夫です)。
(a)………(パス成功率 - 30)× 0.05
(b)………(パス平均獲得ヤード - 3)× 0.25
(c)……… パス成功率 × 0.2
(d)……… 2.375 - (INT率 × 0.25)
パッサーレーティング=((a)+(b)+(c)+(d))/ 6 × 100
でしたね。
上の式を暗算できるよう書き直しみました。
(a)はパス成功率から30を引いて20で割ります。
(b)はパス平均獲得ヤードから3を引いて4で割ります。
(c)はTDパス成功率を5で割ります。
(d)はINT率を4で割って2.375から引きます。
そしてそれぞれが、「2.375」という満点にどれだけ近いかを比較することで、選手の成績をイメージできるはずです。
例えばある選手が試合で(b)のパス平均獲得ヤードが13.0という成績だったとしましょう。(13 - 3) / 4 = 2.5 ですから2.375という満点を上回っています。この時点で滅多にない成績であることがわかります。
2015年シーズンで試投回数が30を超えたQB全56人の平均値は、パス成功率が63.0% 、パス平均獲得ヤードは7.3ヤード、TDパス成功率は4.6%、INT率は2.4%でした。56人の平均パッサーレーティングは85.7でした。
上記の平均値と、Fitzpatrickの通算成績であるパス成功率60.1%、パス平均獲得ヤード6.7ヤード、TDパス成功率4.4%、INT率3.3%や、2015シーズンの成績であるパス成功率59.6%、パス平均獲得ヤード6.9ヤード、TDパス成功率5.5%、INT率2.7%と比べてみましょう。
パス成功率とパス平均獲得ヤードは平均より悪いくらいですが、2015年シーズンにTDパス成功率が伸び、INT率が下がったことがわかります。特に31回のTDを奪ったことで、TDパス成功率が大きく伸びました。これがNYJ躍進につながったと言えるでしょう。
実際、MarshallとDeckerという2人の1000ヤードRecieverとIvoriという1000ヤードRusherを従えたNYJの攻撃は好調でした。終盤の5連勝、特にWeek16にOTの末NEを破った試合は圧巻。Fitzpatrickはこの5試合で13TDを上げ、INTはわずか1でした。
ところが、勝てばNYJにとっては2010年以来のPlayoffとなる@BUF、4シーズンを過ごした古巣との戦いで悲劇が待っていました。2点差→5点差(つまりTDをとれば逆転)の4Qに、3ドライブ連続でインターセプトを喫したのです。
NHK中継の録画が残っていたので見直しましたが、前半は強風もあって絶不調。後半持ち直したものの、4Qのエンドゾーンに投げ込んだ、この日最初のINTとなったパスが残念でした。小雪が舞うBUFでの終戦には同情しましたが、この日のパッサーレーティングは42.7とシーズン最悪の出来だったことは反省点でしょう。
さてそのFitzpatrickが今季FAとなりました。Manningが引退し、OsweilerがHOUに去ったDENが交渉を進めているという噂があります。
しかしここで不安材料になるのは、持ち前のINTの多さ。Kubiak体制のDENは、下手なTOをやらかさないように慎重なプレイをQBに求めます。このスタイルにFitzpatrickが合致するのかはわかりません。
もし、FitzpatrickがDENに来たら、DENとHOUでは2シーズン前とQB(Osweilerは当時はManningの控えでしたが)が逆転する格好になります。そうそう2016シーズンはHOU@DENがありますね。現時点ではDENの開幕戦候補にNEかINDを推す声が強いですが、QBの入れ替わりが決まったら、開幕戦をあえてこのカードにすると面白いかもしれません。
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