Fantasy Football(ファンタジーフットボール)戦記

NFLのFantasy Football(ファンタジーフットボール)のほかMLBやNBAについて語ります

川崎のぼるの名作「フットボール鷹」を読んでみた、1977年当時のNFLがこんな状況だったとは

2020年01月26日 20時33分06秒 | Jersey

とあるきっかけで、アメリカンフットボール漫画「フットボール鷹」を全巻(講談社漫画文庫で6巻、KCコミックスなら10巻らしい)読むことになりました。

フットボール鷹をご存じない?1977年から川崎のぼる先生が週刊少年マガジンに連載していたアメリカンフットボール漫画ですよ。某サイトによると、1977年第3・4合併号~1979年第14号で連載だそうですから、43年も前に連載が始まった漫画です。という筆者も、ついこの間まではこの漫画の存在を知りませんでしたが。

川崎のぼるといえば、梶原一騎原作の「巨人の星」(1966~71年の連載、連載開始は53年前!)の作画担当として一世を風靡した漫画家ですね。もうとっくに巨人の星は完結していて、1977年ころはなぜか大人向け週刊紙である週刊読売で「新巨人の星」を連載していました。そして、かつて巨人の星を連載したホームグラウンドというべき週刊少年マガジンでは、並行してフットボール鷹を描いていたのです。

執筆時期が重なっているためか、主人公「夕日野鷹(ゆうひのたか)」は“新巨人の星のころの星飛雄馬”になんとなく似ていて、スリムながら筋肉が発達している細マッチョの体形をしています。性格は星飛雄馬ほど内省的ではなく、同じころちばてつや先生が週刊少年マガジンに連載していた、「おれは鉄平」の上杉鉄兵を少し物分かりよくした感じでしょうか。それでもさすが川崎のぼるだけあって、熱くなると目に炎が宿る描写もあります。

巨人の星と「あしたのジョー」(原作は高森朝雄名義だが、本当は梶原一騎)の作画で一世を風靡した後、梶原一騎の原作から離れた川崎のぼるとちばてつやが、試行錯誤しながら新たな道を切り開いていた時期の漫画が、フットボール鷹でありおれは鉄平であると考えればよいでしょうか。あら、見事に話がわき道に逸れましたね。

さて主人公である鷹は、アメリカンフットボールのポジションとしてOL(Offensive guard)とRBとQBを経験します。Jersey Numberはポジションごとに変わり、#65→#32→#12と変わっていきます。この漫画の監修はTOUCHDOWNの編集長だった後藤完夫さんだけあって、こういう細かい(ポジションごとに着用できるJersey Numberが変わる)ところはしっかりしています。

では、主人公が着けることになった#65を1977年当時に着けていたOffensive guardのスタープレーヤーは誰だったのでしょう。筆者の持つ書籍「ANY GIVEN NUMBER」とWikipediaを動員して、これはどうやらTom Mackだったのではないかと推測しました(ほかにも#65を着けていた有名選手はいましたが、活躍した年代やポジションが違っていました)。

Tom Mackは当時の(STLに移転する前の)Los Angeles Rams一筋で、1966~78年にわたりOffensive guardを務め、11回もPro Bowlに選出されています。後藤完夫さんによる文庫の第4巻のあとがきによると、川崎さんと後藤さんを含む一行はこの連載前の1976年に米国のNFLを取材していたとのことなので、Mackのプレイぶりを目の当たりにしていたのかもしれません。

そして#32を着けたRBはというと、O. J. Simpson(1969~79年が現役、以下同)とFranco Harris (1972~83年)が、連載時期に重なる有名RBです。当時の知名度でいうとSimpsonの方が上ですが、劇中で主人公の鷹が有名RBとしてSimpsonとHarrisの名を挙げているので(ほかに二人のRBの名前も上げていますが、どちらも#32ではありません)、二人の合わせ技ということでよいですかね。

そして#12を着けたQBといえば、殿堂入りした#12を着けたQBのうちの5人が連載開始時点の1977年時点で現役でした。Terry Bradshaw(1970~83年)、Joe Namath(1965~77年)、Roger Staubach(1969~79年)、Bob Griese(1967~80年)、Ken Stabler(1968~84年)ですね。当時は今よりも「一流のQBは#12を着ける」時代だったといえるでしょう。

では、連載1年目の1977年がどういうシーズンだったかというと、5月に開催されたDraftで全体1位でRickey Bell、全体2位でTony Dorsettが指名されています。

作中では、Bellではなく主人公のライバルに当たる選手(髪型が巨人の星の花形満をほうふつとさせる)がドラフトの全体1位で指名されたことになっています。ちょっと細かいですが、作中の別のシーンで作者がBellに触れたときに、うっかり「今年ドラフト1位で指名された」と書いてしまっていますが、これはご愛敬ですね。

なお、1977年シーズンはルーキーのDorsettとStaubachを擁したDALがSuper Bowl XII(第12回、開催日は1978年1月15日)を制し、チームとしては2度目の栄冠を手にしています。Dorsettは1年目のレギュラーシーズンに1007ヤードを走り、12TDを獲得。NFL Offensive Rookie of the Yearを獲得しました。

作中でも、「ことしスーパーボウル優勝のダラス・カウボーイズ(略)あそこにはすでにスーパースターのR・Bトニー・ドーセットがいる」と主人公がつぶやいています。1977年1月に始まった連載が進むうちに、現実の世界も状況が変わっていったことが分かります。

最後に、あまり出番がないまま終わってしまったのですが、この漫画にはラスボスに相当する選手「ジム・ダンディ」という選手が第1話から出てきます。栄光の12番のJersey Numberを背負ったスーパースターで、子どもにも女の子にもあこがれのまとで、フィールドをはなれているときははなやかで優雅でカッコいい。主人公が少年時代から大学生になるまでスーパースターの地位を維持するという選手寿命の長さも持ち合わせています(追記:なんと6巻にジム・ダンディが「スーパーボウルV7をねらう」とまで書いてありました)。主人公もダンディにあこがれ、#12をあしらったセーターを着ています。

川崎のぼるがまさか40年後を想像したわけではないでしょうが、現代の「ある選手」が思い浮かびますね。よく見ると、ジム・ダンディという文字列も似ていますねえ。なお、このダンディは最終回にも登場しますが、主人公とは対戦しないまま、大きな目標として終わります。なぜ直接対決まで描かれなかったかは今となっては知る術がありませんが、もしかしたら連載漫画にありがちの「あれ」に遭ったのかもしれません。

最後に、主人公の夕日野鷹の体格について。原作中にはっきり175センチ=5フィード7インチ、70キロ=154ポンドと書いてあります。作中で、フットボールプレイヤーとしては軽量であることを欠点としてみなす描写も出てきます。

現役のNFLの小型RBとしておなじみのTarik Cohenが168センチ=5フィート6インチ、82キロ=181ポンド、Darren Sprolesが168センチ=5フィート6インチ、84キロ=185ポンドですから、この二人をさらに細身にしたサイズしかありません。これでは大柄な#Dの選手に軽く吹っ飛ばされますね。作中ではそのハンデを克服する過程も描かれていますが、ちょっと無理がある設定かもしれません。

そして終盤に主人公は、ある理由からQBにポジションチェンジをするわけですが、小柄なQBが好まれないNFLではさらに希少種となります。現在NFLのQBとして最も身長が低いKyler Murrayは178センチ=5フィード10インチながら、体重が93キロ=207ポンドあります。

あしたのジョーでちばてつやが、ジョーのライバルとなる力石徹の初登場時に大きく描きすぎたため、作中で力石に極端な減量を強いることになったと聞いたことがあります。これと同様にフットボール鷹の連載が続いていたら、鷹もQBとして自らの軽量を克服するための努力をする羽目になっていたかもしれません。いまだと、あまりおいしくないプロテインを我慢して食べまくるが、重量化して小回りが利かなくなった自分に愕然とするとかあるんでしょうかね。

と、細かいつっこみはしましたが、フットボール鷹は昭和時代のフットボール漫画の傑作といえます。Kindleなどの電子書籍で今でも読めるようなので、お暇な方はお読みになってはいかがでしょう。皆さんご存知のフットボール漫画「アイシールド21」とは全く別の、フットボール漫画の世界を楽しめるはずです。

2015年シーズンからアメリカンフットボールのFANTASY FOOTBALL を楽しんでいるトーマスといいます。NFLだけでなく、MLBやNBAについても語ります。

AFC東 BUF バッファロー・ビルズ NFC東 DAL ダラス・カウボーイズ
MIA マイアミ・ドルフィンズ NYG ニューヨーク・ジャイアンツ
NE ニューイングランド・ペイトリオッツ PHI フィラデルフィア・イーグルス
NYJ ニューヨーク・ジェッツ WAS ワシントン・レッドスキンズ
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CIN シンシナティ・ベンガルズ DET デトロイト・ライオンズ
CLE クリーブランド・ブラウンズ GB グリーンベイ・パッカーズ
PIT ピッツバーグ・スティーラーズ MIN ミネソタ・バイキングス
AFC南 HOU ヒューストン・テキサンズ NFC南 ATL アトランタ・ファルコンズ
IND インディアナポリス・コルツ CAR カロライナ・パンサーズ
JAX ジャクソンビル・ジャガーズ NO ニューオリンズ・セインツ
TEN テネシー・タイタンズ TB タンパベイ・バッカニアーズ
AFC西 DEN デンバー・ブロンコス NFC西 ARI アリゾナ・カーディナルス
KC カンザスシティ・チーフス LAR ロサンゼルス・ラムズ
OAK オークランド・レイダース SF サンフランシスコ・49ers
LAC ロサンゼルス・チャージャース SEA シアトル・シーホークス

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