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ラプラスの悪魔と決定論と不確定性原理とカオス理論

2018-05-05 13:42:09 | 科学
映画「ラプラスの魔女」を観て劇中でも触れられていた「ラプラスの悪魔」に関連して
「カオス理論」について思いを馳せることがあったので、書き留めておく。

「ラプラスの悪魔」とは、フランスの数学者、ピエール=シモン・ラプラスによって
提唱された決定論的な超存在のこと。

ラプラスは「知性」と記したが、のちにドイツのデュボア・レイモンが「霊」と表現し、
何時しか「魔物」(=デーモン)となった。

物質の力学的状況のすべてを把握し得るならば、
それがもたらす力学的結果(=未来)を完全に知ることができるだろう、ということ。

そして、未来を導く計算は古典物理学による。

ところで、ニュートン力学が人知の及ぶ範囲ではかなりの精度で正確に成立するものの、
量子論や相対論が影響するような領域では成立しないことは中学生でも知っていることで
そのような領域ではラプラスの悪魔の知見は成立しえない。

とはいえ、ラプラスの生きた18世紀から19世紀には量子力学も相対論も
生まれてなかったのだから無理はない。

古来、物理学者は世の中はすべて整った理論、美しい数式で表せるはずだ、と考え、
諸現象を単純化、モデル化し、数式化して解き明かしてきた。

複雑な現象も単純なモデルの重ね合わせによって解き明かせるという考えだ。

これに対し、カオス理論では、厳然たる法則性のある現象でも初期値のほんのわずかな差が、
指数的に拡大し、未来には大きな差となって現れること(いわゆるバタフライ効果)を示し、
どれだけ正確に計測しても完全に誤差がないことは無理なので、結局長期的には
未来予測は不可能となる(長期予測不可能性)ことを説いた。
例えば、ある物理的数値を100万分の1、1億分の1の精度では測れても、
100兆分の1の精度では測れないとすれば、完全に正確には分からない。
その結果、100兆分の1以下の誤差の(実際とのずれがある)ものを
法則に則って正確に計算しても未来には大きな差となり、予測は外れてしまう、ということ。

さらには、現在値を完全に正確に測れたとしても「複雑なカオス」においては、
未来予測が不可能であるとの理論もある。

一方、量子論においては、位置と運動量を同時に確定的に決定できず、
その誤差の積が原理的に一定値以上になる(不確定性原理)ため、
全ての物理数値を確定的に決定づけることが原理的にできない。

ここで「原理的に」と書いたのは、「不確定性原理」を説明するのに、
いわゆる「観測者効果」が用いられることがあるからで、「観測者効果」とは、
観測者が物理量を測定しようとするとき、被測定物に何らかの物理的影響を与えずには
測定できないから、測定者が与える影響の最小値が一定値以下にできないとするもの。

しかし、この説明は間違いで、原理的に位置と運動量が同時には確定的に決まらない
のが不確定性原理であり、観測するかしないかに関わらない。

もっとも物理現象は観測されて初めて現象を認識できるわけだから、
観測と無縁ではいられないのも事実。

つまり、厳密な意味での「ラプラスの悪魔」は存在しないが、
測定誤差の範囲内での正確性と短期に限定しての未来予測は可能。

これは例えば、光速に近い超高速度では、単純な速度の加算は成立しないが、
(ex:光速+光速=光速)、通常の速度域においては単純加算で構わないのと同じ。
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