ばぬあ通信 ―バヌアツ共和国 青年海外協力隊活動記―

青年海外協力隊としてバヌアツ共和国タンナ島で小学校教諭として2007年から2年間活動しました。未知の世界をあなたへ☆

no.12 10.27 アニワ島ホームステイ特集Vol.5

2007-10-27 22:17:17 | Weblog
=自然と暮らす=
こちらの家はココナッツの葉と竹、トタン板などを使って作ります。そしてトイレはブッシュトイレと言って囲いをつけた穴です。なんと私がホームステイに来るということでレオたちで私専用のブッシュトイレとシャワールームを作ってくれていました!しかも石鹸を準備していてくれました!ここでは石鹸も決して安いものではありません。私は自分の石鹸を持ってきていたので、それは使いませんでしたが、そんな細やかな心遣いが随所に見られました。シャワーと言っても、日本のように上から出るわけではなく、たらいの中の水をコップですくってかけるのです。ビスラマ語では水泳も体を洗うこともswim(スイム)と言います。レオは最初の晩「スイムはお湯にするか?」と聞いてくれました。みんなはどうしてるのかと聞くと、水だと言います。「じゃ水。」しかしレオはうーんという顔をしてこう言いました。「私達ブラックマンはそれでいいけど、ホワイトマンには冷たすぎるよ。」と。私はレオとエレスとローランド(レオのお父さん)に「気持ちはうれしいけど、私はみんなと同じ暮らしがしたいから、特別扱いしないで。もしつらいときは言うから今日は水でスイムしたい。」と言いました。アニワはバヌアツでもタンナと同じ南に位置するので朝夕はかなり寒くなります。確かに水でのスイムは寒かったけど、タンナだってそれは同じ。水スイムも楽しまなくっちゃね♪ここでも家族みんなの心遣いに感動しました。

みなさんはちょっと出かけるとき、何を持っていきますか??
私はあまりカバンを持つのが好きではないので、後ろのポケットに財布とハンカチ、右前のポケットに携帯電話、あとは家や車の鍵。
たぶんどんな人でも財布と携帯電話は欠かせないのではないでしょうか。さて問題です。マンアニワが出かけるときに必ず持っていくものはなんでしょう??

正解は、ブッシュナイフです!なんじゃそれ?わかります。その気持ち。ブッシュナイフとは先の反り返った大きな刃物で、サイズはいろいろありますがだいたい刃渡り50~60cmの蛮刀だと思っていただければ間違いないと思います。これを老若男女みんなブラブラ振り回しながら歩いているのです!!やっと歩くような小さな子もナイフをおもちゃのように持って遊んでいるし、大人はみんな大きくて思いブッシュナイフを器用に使いこなしていました。

みなさんは出先でのどが渇いたらどうしますか?
コンビニや自動販売機で飲み物を買うというのが一般的ですよね。さて、第二問マンアニワそんなときどうするでしょうか??

正解は木に登る、です。というと、ちょっと違うかもしれませんがのどが渇いたらココナッツやオレンジを木に登って取ってきてそれでのどを潤すのです。子ども達はおサルのようにするする10mくらいのココナッツの木に登ってフレッシュなココナッツを取ってきてくれるし、私がオレンジが好きなのをみんな知っているので、よくオレンジを取ってきてくれました。財布の代わりにブッシュナイフ。日本では考えられないですね(^^ゞ日本でそんなもの持って歩いていたらすぐ捕まってしまいます!!でもアニワではこれがないと何にもできない。逆にこれがあればなんでもできる。アニワではブッシュナイフは日本での財布のようなものなのです。

私は小さい頃から父や母から刃物の扱い方を教えてもらっていたし、ナイフの便利さを知っているのである程度ナイフに親しみがあります。日本でも私の父くらいの年代はみんなナイフを使いこなせるような気がします。今の子どもはどうでしょうか。日本だと刃物というと危ないということが先にたってしまいがちですが、ナイフは必要ないとしてもこの考えで全てを進めていくと、何もできない、何も知らない大人が増えていき返って危険な社会になるような気がします。アニワでは大人がしっかり大人の役割をしていました。悪いことをしたらしっかり叱るし、暮らすための技術をしっかり教え、カスタムとしての伝統をしっかり伝える。そして大人自身がいつもしっかり楽しんでいる。(中年層が一番いきいきしています(^^))幸せそうなアニワの子ども達を見ていると、今日日本で見られる過保護、過干渉は人をスポイル(駄目にすること)し、社会を弱体化させる気がしてなりません。アニワにはかつて日本にもあったであろう美しい暮らしがあるような気がします。

幸せってなんだろう。たくさん選択肢があること?便利な暮らしをすること?
レオは私にこう言います。「おれはホワイトマンを尊敬してるんだ。」と。自分達の暮らしや文化に誇りをもって生きているアニワの人たちは幸せだと思います。ホワイトマンにはホワイトマンの暮らし方があって、ブラックマンにはブラックマンの暮らし方がある。そうやって胸を張って話せる。うまく言えませんが、今まで出会ったどんな人たちよりも彼らは自身に満ちていました。アニワに入ってくる情報は日本の数万分の一です。でも、彼らは全てをわかっているかのようでした。
生きることとは何か。幸せとは何か。人間とは何か。
文字や写真では伝えきれない感動がアニワにはあります。私の表現力ではこの空気は伝えられそうにありません。いつか家族とアニワへ行くことができたらいいなと思います。

no.13(アニワホームステイ特集最終回)へ続く!!

写真は私専用のブッシュトイレ(なんと洋式でした!)、私専用のシャワールーム、ローカルハウス、とれたてココナッツジュース、木に登るスミット、ココナッツの外皮をむくレオとなぜかポーズを決めてるモリ、そして一才のナラム。手に持っているのは普通に切れるナイフです!