大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

メキシコ、労働法を改正: USMCA批准のハードル取り除かれる

2019年04月21日 | 日記

 2019年4月11日、メキシコ下院は471対1の大差で労働法の改正案を可決した。

 ウォールストリートジャーナルによれば、改正のポイントは2つ。

(1)これまでは政労使で構成する労働調停委員会が、労使紛争の裁定、労働組合の承認をおこなってきたが、これを独立・中立の第3者機関に変える。

(2)労働者に秘密・直接投票組合役員を選び、労働協約の受け入れ可否を決める権利をみとめる。

 メキシコでは1940年代から2000年まで制度的革命党による事実上の一党独裁がおこなわれてきた。

 そして労働調停員会の労働者代表は制度的革命党と協力関係にあるメキシコ労働組合連盟(CTM)によってほぼ独占され、政府に批判的な労働組合の承認や活動を抑圧してきた。

 またそれと関連して、メキシコの連邦労働法には組合規定の策定や役員の選出についてルールがなく(組合自治を尊重するという建前)、これまでは一般の組合員が関与しない形で役員の選出や労働協約の批准がおこなわれてきた。この仕組みによって長年、制度的革命党に忠誠を誓う組合幹部が労働組合を支配することが可能だったといわれている。

 こうした仕組みについては以前からILO(国際労働機関)などから是正勧告などがだされていたが、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の交渉においてアメリカとカナダは批准の条件としてこうした仕組みの是正を要求。今回の法改正によりその条件が満たされることになる。

 ナンシー・ペロシ米下院議長(民主党)は、メキシコで労働法の必要な改正があるまでUSMCA批准の投票をおこなわないとしていた。

 

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