2018年2月7日(水)、米上院の共和党と民主党は、債務上限(歳出上限)を2年間で3千億ドル(33兆円:1ドル=110円)引き上げることで合意した。
政府と財務官僚が予算案を作成する日本と異なり、アメリカでは議員が予算を作成している。アメリカでは、政府には予算を作成する権利も予算案を議会に提出する権利も認められていない。
ところでアメリカでは財政悪化に歯止めをかけることを目的として、政府債務に上限を設ける法律が存在する。これは、1985年のグラム=ラドマン=ホリングス法からはじまったもので、その後、同様の法律がいくつも作られている。現在は、2011年に作られた財政管理法が、軍事と非軍事それぞれについての歳出上限を定めている。
今回、上院の両党は、この歳出上限を以下のように引き上げることで合意した。
(1)2年で債務上限(=歳出の増加可能額)を3千億ドル(33兆円)引き上げる。
(2)軍事費の上限を今年度に800憶ドル(8.8兆円)、来年度に850億ドル(9.4兆円)引き上げる。
(3)軍事以外(裁量経費)の上限を今年度に630憶ドル(7兆円)、来年度に680憶ドル(7.5兆円)引き上げる。
これが両院で認められると、これにもとづき今後数週間のうちに今年度(2018年度)の予算案が作成、可決される見込み。
なおニューヨーク・タイムズによると今回の合意には、インフラ投資を200憶ドル(2.2兆円)増額することのほか、オピオイド(薬物)対策などを60憶ドル(6.6千億円)、育児支援を58憶ドル(6.4千億円)、退役軍人の病院などを40億ドル(4.4千億円)、ハリケーンなど災害対策費を900億ドル(10兆円)増額することが含まれている。
昨年成立した大型減税により10年で財政赤字が1.5兆ドル(160兆円)増加する見込みであるが、それに今回決まった33兆円が加わることになる。
長期金利などへの影響をしっかりみていきたい。
なお暫定予算が2月8日(木)に切れるが、前回の政府閉鎖の前後で、民主党の支持率が大幅に低下するほか、トランプ大統領の支持率が急上昇した(一部の調査では支持率が50%まで跳ね上がった)。このため、今回、民主党は政府閉鎖をもたらすような行為には慎重だと言われている。
子供の時に米国に入国した不法移民の方々の在留権をみとめたDACAについての話し合いは、予算などとは別に進められる予定になっている。