植物の名前には、どうも違和感があるなあと感じるものが少なくありません。ヘクソカズラなどは典型的な例です。ママコノシリヌグイなどはいかがでしょうか。ヨメタタキ(タラ)もそう。もちろん別称も含んでいるのですが、いくらなんでもこれはひどいと感じてしまいます。命名された古い時代の感覚を見事に(?)残し続けているのです。
冬から春にかけて地面を覆う、愛くるしく思えるオオイヌノフグリの花。花はじつに可憐で、この群落を見るとホッとしてしまうほど。でも、オオイヌノフグリはちとかわいそうじゃありませんか、というわけでホシノヒトミという名を新たに付けようと話がずいぶん前に持ち上がりました。「なるほど、ホシノヒトミとはなんとも言い得て妙!」と、拍手を送りたくなる話題に思えます。
それで、ここではホシノヒトミの名を採用します。
今、公園ではホシノヒトミの小群落が見られます。この花は晴れた日、太陽の光を浴びて開き、日没の頃閉じて散る一日花です。
冬の今咲いて、たった一日だけ咲いて,受粉はどうするのでしょうか。ふしぎと言えば、ふしぎです。花をよく見ると、花弁には青い色が付いています。オシベ・メシベの根元には蜜腺があります。色も蜜も、もちろん虫を招くための道具です。
開いた花をよくよく観察していると、ハエのなかまを中心にして昆虫がとまって蜜を吸っていることがあります。これでホシノヒトミの作戦は功を奏していることになります。冬に昆虫を見かけることは少ないのですが、昆虫が現れる頃になると目に付き始めます。
頻繁に見るのはアリです。アリは甘い蜜が大好き。小さな花にアリが複数いることもあります。ですから、ホシノヒトミは虫媒花なのです。
ところが、おもしろいことに、昆虫の助けを借りなくてもたった一日だけで受粉が完了するという裏技も併せ持っているのです。結果、無駄花はなし、というわけです。
その裏技とは? 次回以降に取り上げます。
(h)