私は、今、所謂先進国で、ある共通した現象が起きているように感じています。
そして、その方向性の先には一つの結果が自然にもたらされていくような気がします。
ギリシャ、5兆円以上の国家資産の売却をしなければ、資金の供給を受けられないとECBやIMFから言われています。
しかし、実際にそれだけに相当する金額の資産売却が出来るかどうかわかりません。
仮に出来ても、いつまでそれを続けることが出来るかどうかわかりません。
今、ギリシャの国債の利回りは17%を越えています。
マーケットは、もうギリシャが破綻しているとみなしています。
なのでギリシャが国債を発行することは当面出来ないでしょう。
他の国々の資金をあてにするしかない状態が続いて行きます。
でも他の国もいつまでも資金を供給し続けることは出来ないでしょう。
ポルトガルも同じです。
ポルトガルは、資金供給に必要な条件である財政削減に対して、議会でNOという結論を出してしまいました。
資金供給を受けるためには、給料、年金等が削減されてしまいます。
議会、即ち国民がそれはいやだと決めてしまったのです。
今一生懸命妥協点を探っていますが、すでに国民の気持ちはNOなのです。
現在私が住んでいるスペインはどうでしょうか。
国債利回りの推移を見るとギリシャ、アイルランド、ポルトガルとは、一線が引かれており、三カ国に比べるとマーケットの評価は受けていると言えます。
しかし、その金利はじりじりと上がって来ています。
先週の地方選挙で、サパテロ首相率いる、社会労働党が大敗してしまいました。
国民は、財政削減で市民の首をしめる与党にNOと言ったのです。
マドリッドの象徴とも言えるソル広場には、選挙前に多くの人々が集まり、野宿しながらの抗議運動が続きました。
そして与党を批判して来た国民党が圧勝しました。
この選挙結果に国民は喜びましたが、今後財政削減のペースが落ちる可能性は高いでしょう。
一方で、お金の出し手はどうでしょうか?
ドイツの国民、いつまで財政の弱い国を支援するのかと、最近メルケル首相が突き上げを受けるようになって来ています。
他の国のために自分の日々の生活が苦しくなるのは、いやだと声を上げ始めています。
メルケルさんもそうした国民の声には耳を傾けざるをえません。
そうしないと、選挙で負けてしまうからです。
これも国民によるNOですね。
なので、選挙で勝っても負けても他の国を金銭的に助けていくことはどんどん難しくなっていくでしょう。
ユーロの欧州では、お金の出し手も、お金の受け手も、国のために、自分の生活が苦しくなるのは、もうNOだと言っているのです。
米国を見てみましょう。
5月16日付けで、法律で決められた15.2兆ドルという政府負債の枠に達してしまいました。
8月始めまでは、やりくりすると言っていますが、それまでに上限枠を拡大する決定は行われるのでしょうか。
今までは、そのようにして来ました。
しかし、財政の逼迫によって自分たちの生活が犠牲になるのはいやだと言う国民の支持を受けたティーパーティという党が勢力を伸ばしています。
それも国民がNOと言っている動きですね。
以上見て来たように、今どこの国でも国民がNOと言っています。
中東の民主化の動きが、どのように世界経済に影響を与えるのかどうかわかりませんが、
これも国民によるNOですね。
その中で、唯一そうではない国があります。
日本です。
日本の政府債務のGDP比は世界でもトップの200%です。
今、国民の生活は厳しくなって来ています。
そんな中でも、アンケートを取ると、増税やむなし、という人が過半数を占めます。
それは、国民の団結力を示すものであり素晴らしいことだとは思いますが、私は、今増税することは、間違いなく国民の財布の紐を締めることになるので、税収は増えないと思います。
むしろ減少する可能性が高いと思っています。
ただでさえ、被災地の方々への配慮もあり、国民の間に節約の気運が高くなっています。
そこで増税したり、財政支出を締めすぎると、政府の収支はもっと悪化していくでしょう。
なので、どちらの道を選んでも、結局同じ結論をたどっていくのではないか、と思えてしまうのです。
即ち、国家破綻の連鎖、経済破綻の連鎖です。
そして、その事は、実は、私たちの無意識の中で、すでに決めたことのような気がしています。
次の新しい時代を築いていくために。