"ちょっと外から見た日本"

今、スペインに住んでいます。
大好きな日本のこと、
外からの視点で触れて見たいと思います。

“大きな森のおばあちゃん” 天外伺朗著

2011-04-19 02:21:19 | 日記
天外伺朗さん、その本を読まれた方も多いと思います。

もともとソニーにいらして、フィリップスとCDを共同開発したり、有名なロボット、AIBOの開発をされたりと、まさに先端技術の研究、開発に携わっていらっしゃいました。

ソニーにいらした頃から、このネームで、多数の著書を出され、2005年には同社を退社されています。

“ここまできた「あの世」の科学”とか“宇宙の根っこにつながる生き方”等、有名な本がたくさんありますね。

表題の本は、その天外さんが、実際の話をもとに童話にしたものです。


この本の前書きと、あと書きは、龍村仁さんが書いていらっしゃいます。

以前の日記でも触れたことがありますが(http://blog.goo.ne.jp/tera-3/e/007483d6dfc7443c329a4b5057a2a0d1)、龍村さんは、自主上映映画“地球交響曲シリーズ”の監督です。

この童話は、その“地球交響曲第一番”に出演された、象を研究し、愛してやまない、ケニアのダフニー・シェルドリックさんから聞いた話をもとに、天外さんが、書かれたものなのです。


象の大脳は、体に対するその大きさの比率は、人よりも大きく、しわの深さやその複雑さは人と変わらないそうです。

しかし、当たり前ですが、象は、人のように、その頭脳を使って、車を作ったり、宇宙開発等の技術開発をするわけではありません。

では、その優れた脳は、一体どのように使っているのでしょうか。

龍村監督は、前書きで次のように述べています。

“私達人類の知性は、自然の成り立ちを科学的に理解して、自分たちが生きやすいように変えてゆこうとする知性です。

これに対して象や鯨の「知性」は自然界の動きを私達より、はるかに繊細に決め細かく理解して、それに合わせて生きようとする、いわば受身の「知性」です。”

“受身の知性”、いい言葉ですね。

便利さをとことん追求し、享受し、ここまで走り続けて来た私たちが、

今、本当にそれでよかったのかな?と感じるような出来事に直面している中、

これからの時代のキーワードともなりうる言葉なのではないかと思います。


象は、普段は家族単位に分かれて生活をしているそうです。

しかし、1年に1度のお祭りがあって、その時には、何百キロと離れていた象が、千頭、二千頭という大きな群れとなって集合するのだそうです。

他にも、象が大集合する時があるそうです。

それは、“象が危機に瀕しているときです。水もなく、食べ物もなく、生きているのが難しくなったときなのです。”


この本では、その時の様子を描いています。


象の中で、一番知恵があるのは、おばあちゃん象です。

誰よりも経験が豊富なので、おばあちゃんのところに、たくさんの象が集まってくるのです。

エレナは、子どもの象です。

大干ばつで、食べ物も飲み物も無くなってしまった時、おばあちゃんが提案した遠い場所にみんなで移動することになりました。

移動の途中、そこにいた象たちも群れに加わってくるので、大変な数の群れになってしまいます。

たくさんの犠牲者を出しながらも、なんとかその場所に着きます。

エレナも、おかあさんたちに励まされながら、なんとかそこにたどり着くことが出来ました。

その場所は、緑豊かな場所で、確かに食べ物がたくさんありそうですが、

ここにいる象全員が、一度に食べると、三週間しか持たない量しかありませんでした。


最初に、おばあちゃん象と、年寄りの象が、森に入ります。

そして、なぜかおばあちゃん象、そしてその後、年寄りの象たちは、順番にいなくなってしまいます。

“おなかがいっぱいになったので、お昼寝をする”のだと言って。

そして、おばあちゃんは、エレナに、50年後に会おうと言い残します。

おばあちゃんを追いかけようとして、おかあさんに止められたエレナは、その後、おばあちゃんたちと、二度と会うことはありませんでした。

同じように、“昼寝に行く”象が毎日順番に出たため、群れの数は次第に減って行き、残った象たちは、旱魃の間、そこで無事に過ごすことが出来たのです。


それから50年後・・・

エレナがおばあちゃん象になった時、以前と全く同じように大旱魃になってしまいました。

今度は、エレナが、大群を引き連れて、以前おばあちゃんに連れていった場所に向かうことになりました。

しかし、エレナは、その場所に、これだけの大群が食べて過ごすだけの食べ物がないことは知っています。

途中、不安になりながらも、もういないおばあちゃんの声に励まされながら、ようやくその場所に着きます。

そして、着いた時、そこには奇跡の光景が・・・・・。


おばあちゃん象たちが倒れた場所から、食べ物となる植物が生えて、それが広範囲に渡ったため、巨大な森となっていたのです。

おばあちゃんたちが、“お昼寝”する前におなかいっぱい食べたことにも、大きな叡智が隠されていたのでした。


私は、仲間の為に、自己の命を捧げる象たちの姿に感動すると同時に、

人と、あらゆる動物、あらゆる植物、土、空気、全ての自然や地球、そして宇宙・・・。


自分が、全ての生命と、ゆるやかに、しかし、分かちがたく繋がっていること、

そして、私もその一部なのだ、ということを考えていました。


大きな森のおばあちゃん 3版
クリエーター情報なし
明窓出版


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