現在、シマノではフリーハブボディの分解は非推奨(と言うより必要無しなのか?)になってます。
フリーハブボディ分解用のSST(専用工具)はとっくに廃盤。
ではなぜ現在でもフリーハブボディグリスは売られているのでしょう?
ボスフリー全盛時はフリーホイール機構がスプロケットに組み込まれてましたから今現在でもその時代の自転車のためにシマノはフリーハブボディグリスを販売しているのです。。。たぶん。
これが最近までわからなかったんですよね。
理解できなかった。
で、私の場合、チェーン洗浄時にスプロケットやディレイラー・チェーンホイールを含めたトランスミッション全部をまとめて洗浄しているのですが、フリーボディ内部の潤滑や洗浄はしていませんでした。
脚を止めるとチチチチって聞こえるこのラチェット。
昔はグリスアップしていただろうこの部品は今現在、本当にメンテナンスフリーなんだろうか?
近年の異常気象で北海道に梅雨ができたような条件では乗れるはずも無い自転車はメンテナンスを必要としませんので、
この時季にこの疑問を解明するために分解してみました。
エンド幅135mmでクロスバイク用に改造したR500で試してみます。
ロード時代とクロスバイク時代を併せて8500kmほど走ってます。
ハブベアリングは1500kmほどのサイクルで洗浄とグリスアップを行ってます。
フリーハブボディはもちろん1度も分解していません。
まずはハブベアリングの分解。
作業環境を整えます。
クッキー缶に洗浄液のペイント薄め液(シンナー)を注いでザルをセット。
ハケは硬め柔らかめの2種を用意します。
洗浄液が黒いのはキッチンペーパーやティッシュで濾過して使い回しているせいです。
反フリー側の玉押しにハブコンレンチ、ロックリングはモンキーレンチで緩めます。
外れたワッシャー・スペーサー・ロックリングはザルの中に投入。
フリー側からアクスルシャフトを押さえながら玉押しも外してザルに投入します。
アクスルシャフトを静かにザルに落とすとベアリングが見えます。
グリスはうっすら黒くなってます。
ピンセットでボールを外してザルに投入、片側に9個入ってます。
アクスルシャフトを持ち上げてホイールをひっくり返します。
アクスルシャフトを引き抜いてボールをザルに投入。
ハケで外した部品を洗浄します。
エアブローして紙皿で保管。
互いに少しづつ削り合ってビッカビカに磨かれてとても良い状態です。
こうなるとダストシールを除けばグリスの撹拌・剪断くらいしか抵抗が無くなります。
安いハブでもメンテしながら使い続ければ当たりがついて新品のハブよりもずっと良くなるのです。
ちょっと余談ですがシンナーを洗浄液とする理由は油脂溶解性が高く、かつ揮発が速く、シンナー内にグリスや油分が溶け込みそれをエアブローし揮発させた時に部品表面に油膜となって残るためにサビにくく、かつ新湯で再度洗浄することによってその効果自体をキャンセルできることです。
また、ホムセンで少量入手がし易いこと、安価なこともあります。
ただ、灯油などよりも引火性が高く中毒の恐れがありますので野外の風通しの良い場所で使うのは言うまでもないでしょう。
臭いの問題もあるでしょうから室内で洗油を使うのは昔の白鳥隊長くらいのもんでしょうね。
フリーボディ内部のフィキシングボルトを10mmのアーレンキーで緩めてフリーボディを分離します。
スペーサーを忘れずに。
さて、単品となったフリーボディです。
これを弄ってみましょう。
ここにダストシールが嵌ってますので精密ドライバーで外します。
ベアリングが見えました。
ここに新湯のシンナーを突っ込み洗って見ましょう。
洗浄液を濾過し回収します。
ろ材でクッキー缶を拭き取りエアブローして乾燥とゴミをとばしておきます。
ろ材は燃やしてしまいます。
パルプならば煙が出ることなく跡形もなく燃えてしまいます。
ティッシュだと黒煙が出ます。
昨今、住宅地露天で裸火を起こすのは良くはありませんがゴミ箱に引火性の溶剤が入っている状態はもっと危険な気がしますので充分注意して処理してしまいましょう。
新湯の洗浄液内にフリーボディを置いてハケでスポイトのようにベアリングに注いで行くと内部にシンナーが充満しました。
持ち上げるとシンナーが瞬時に抜けます。
ということは出口となっている部分の開口部面積もそれなりに大きいということになります。
であるならば、内部の部品の破損が無い限りこの状態で充分洗浄とグリスアップが可能であり有効だと思われます。
この方法で洗浄を完了させてみましょう。
洗浄液内でラチェットを作動させ洗っていると半透明の茶色いゴミが出てきました。
グリスが固形変性したものでしょうか?
キャブレター内部の腐ったガソリンのような風情ですが臭くはありません。
フリーボディ内部をエアブローし乾燥させスプレーグリスを吹き込みます。
シマノ純正のフリーボディグリスはちょう度0番に値する柔らかいグリスらしいので揮発したスプレーグリスの粘度とほぼ同じ。
ただスプレーグリスにもいろいろありますから平面上に吹いたグリスを2~3日放置して粘度を確かめてみてから使うと良いでしょう。
またカセットスプロケットのロックリング側のハブベアリング側の何処かに開口部があることがわかっていますのでここからグリス希釈成分が揮発するのを助けるためスプレーグリスを吹き込んだ後は2~3日放置することにします。
ベアリングボールの隙間にスプレーグリスのノズルを差し込んでスプレーすると下側からグリスが湧き上がってきました。
反対側からもグリスが出てきてます。
両端にグリスが行き渡ったようです。
さて、結論。
茶色いゴミの正体がなんなのかはわかりません。
細かい針状なものが多数でした。
また金属のようなものではなくどちらかというと樹脂っぽい感じでもありました。が、内部部品の磨耗片や破損部品のような感じでもありませんでした。
何かが劣化して出来た物っぽい感じでしたので何れにせよフリーハブボディもメンテナンスが必要なのだと思われます。
ただし、分解清掃はスプレーグリスを使用するならば不要だと感じましたが如何せん純正グリスでは無いのですから今後どうなるかはわかりません。
感触としては何の問題も無いと思っていますが。
天候もようやく回復の兆しが見えてきましたので近いうちにクロスバイクで試して耐久試験してみようと思っています。
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