つれつれたれたれ

日常のことなどのんびり書いていきます。

捕虜収容所の死

2008-04-30 | 読書


さて、久々の読書感想。今日は『捕虜収容所の死』を。


舞台は第二次世界大戦末期のイタリア。連合国陸軍将校専門の捕虜収容所。
イタリア側の目をかいくぐり脱走用トンネルを掘り進めるさなか、トンネルの中で死体が見つかった。
被害者は収容所中の人間に嫌われていた、スパイの容疑をかけられていた人物。
イタリア側が1人の将校を犯人として拘束した中、英国陸軍大尉:ゴイルズは脱走委員会から真相解明を命じられる。
刻々と変わる戦況の中、新たなスパイの存在が浮上する。
果たして脱走は成功するのか?そして事件の真相は?


面白かった!抜群に面白かった。
捕虜収容所という限られた舞台、探偵役のゴイルズの捜査手法は捕虜達の証言と思索。
偶然と一見関係なさそうな雑多な証言を組み合わせて築き上げる推理。
捕虜同士の反目。くすぶる不満。和解と友情。
登場人物が多い分、登場人物表が欠かせませんが、それでも面白い。
中心となる捕虜は英国陸軍の者が多いので、出身校を辿れば一応の身分証明が立つという点。英国陸軍が階級制度の上に成り立っていたというのが判ります。
捕虜収容所といっても、ラグビーやバスケットの試合をしたり、外国語の講義がなされていたり。収容所の内部は結構自由が認められていたようです。
作者は実際に北イタリアにあった捕虜収容所からの脱走経験があるのだとか。
その経験が遺憾なく生かされていて、読んでいてグイグイ引きこまれていきました。
残念なのが、私自身に捕虜収容所の知識がないこと。
そのために描写に判りにくい所がありました。
現代日本で書かれた物なら、きっと図版が挿入されていたことでしょう。