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『憲法考第十七回 第3章 國民の権利及び義務 その⑩』

2008-07-03 22:52:03 | 憲法考

『憲法考第十七回 第3章 國民の権利及び義務 その⑩』

第17条【国及び公共団体の賠償責任】

 何人も、公務員不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。

 譬え公権の行使及び不作為の上と雖も、其の行使及び不作為において不法性が認められれば、法人としての國や地方公共団体にも、「民間の法人の為した不法行為」と同じく、不法性を認め、賠償責任を負わすと言う民主主義国家の当然の理を謳った条文である。

 しかし、此の条項は法人として使用者責任を問う条文で、不法行為を為した公務員自身の不法行為責任から生じる賠償責任については何も謳われてい無い。公務員は、自身に広く決定権や自由裁量権を持たされていず、日常の業務以外の公務の行使には、極めて政治性が高く、其の決定には議会の承認を経無ければなら無いものもあり、其の決定を受けて為された公務員の為した行為は、必然、公務員個人の責任を問うことは出来無いであろう。しかも、議会の決定は、国民や住民から選ばれた者達がしたものであり、特別違法性が認められ無い限り、国民や住民の意思を反映したものとされ、もっと言えば国民や住民の同意の上で為されたものと看做されるので、其の決定に忠実に為された公務員が為した行為には、此の憲法の他の条項と競合し無い内容のものであれば、不法性は問題とされ無いと言うことが原則となる。此処に、憲法の一つ一つの条項が如何に重く捉えるべきかと言うことが解ることになるのだ。

 無論、こうしたことで無く、例えば公金横領などは、当然、刑事責任と共に、若し、そのことで横領した金以外に國民や住民に損害を与えたと認められれば、横領した公務員には当然相当な賠償が生じることになる。

 此の規定を適用すべき実例は様々なものがあり、其の裁判例も無数にあるが、それらについては、多くの著書や文献があるので各自研究されたい。此処では、昨今問題とされる重要な問題を取り上げるてみたい。

 其の問題と言うのは他でも無い。議会の議決も経ること無く、特別会計等を勝手気儘に役人が使って、國民に多大な損失を与える問題である。こうした事例は大抵の場合組織的に行われるが、計画段階から明確な組織決定機関(若しあれば、此の機関に属する者に最終的な個人責任を負わせばよい)も無しに、曖昧な基準の下に勝手に血税が使われているので、明らかに不正な支出と思われるものについても、個人として、組織としても誰も責任を問われてい無いのが今までの経緯であり。現状でもある。

 また、相次ぐ箱物行政などの無駄遣いは、國民生活に多大な影響を与える程の巨大な損失を国民や住民に齎している。國民は、議員を選ぶ場合、自らに損失を齎す議員だと分っていれば、他に特別な利得を求める者以外の者は、其の議員には投票はし無いだろう。無駄な事業を推進せんとする議員は國民や住民に対しての背任行為をしていると言うことになる。果たして、議員は國民の信認の下に選出されていると言い逃れるが、国民や住民の真意を無視して、莫大な建設費をかけ、未来永劫多額の血税や保険料を垂れ流し続けるような事業に賛成票を入れた議員には、相当の罰則と賠償を求める仕組みを造ることは、政治判断を萎縮させるとの言い訳も跳ね飛ばせる説得力がある。

 議員を弾劾するには国民や住民が弾劾し易い新しい法制を創設する等の仕組みを造る必要があるが、 問題は、過去の議員や役人の不法性に如何責任を取らせるかである。其の評価に長い年月が掛る事業には、其れに賛成した責任のあった者が、未だ生きていれば良いが、現行の個人主義を標榜する法制化では、亡くなっていれば責任の追及のしようが無いのだ。

 私が此のブログで何回も繰り返して言っている言葉の中には、「現代に存続させることが相応しくないと思われている制度や慣習には、悠久何千年の人類の叡智が隠れ潜んでいるものが多いのだ」との意味あいのものがある。大概、そうした責任ある者は多額の資産を残して亡くなって逝くものである。相続と言う概念に踏み込むことになろうが、これらの資産を相続する者は、亡くなった公人の責任も同時に相続するとの考え方は出来無いものか?政治屋や議員が萎縮することも問題であったとしても、此れだけ出鱈目を積み上げて、全て国民に負担させ、自らは『知らぬ川の半兵衛』を決め込むことを続けさすことを思えば、強ち無理な考えとは思え無いのだ。


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