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法律考 民法 【解除と対抗要件】

2013-02-07 17:46:04 | 憲法考

解除の類型

①「契約」⇒約定解除

②又ハ法律ノ規定ニ依リ当事者ノ一方カ解除権ヲ有スルトキ」⇒法定解除

③合意解除或いは解除契約⇒既存の契約において解除権をあらかじめ留保する約定解除と異なって、既存の契約の解消そのものを目的とする契約を締結すること

 契約の履行として物権の移転がなされ、その後契約が解除されたことにより物権の復帰的変動があった場合、これを第三者に対抗するために登記を要するか、の問題⇒法定解除と合意解除とは本質的に異なるものを含んでおり、別個に論じなければならない。

法定解除の場合に於ける学説の類型

①第一説、解除の効果について直接効果説を採用

 解除された契約自体から生じた法律効果が遡及的に消滅することを認める⇒当該契約により物権の移転を生じたときは解除によって物権は当然に復帰⇒民法が物権の変動につき「有因主義」を採ることの論理的帰結とされる。

 しかし、民法五四五条一項但書により、“解除前に”物権の移転を受けて“対抗要件を備た”第三者は保護される。

 “解除後の”第三取得者と解除者との関係⇒恰も、二重譲渡の場合と同しく「対抗要件の問題として解決」⇒先に登記を備えた者が優先します。

②第二説、解除の効果として「直接効果説」を採用⇒この遡及効に基づいて原状回復義務が生じる。

 ただし、“既に給付を受けていた者”の負う原状回復義務は債権的効力をもつに留まる⇒物権的効力を持たない⇒物権行為の「無因性」ないし「独自性」を認めることに基づく。   

 民法五四五条一項但書は“当然のことを注意的に規定したに過ぎないと考える”。

 解除と“物権の第三取得者ないし解除者との関係”⇒前説と同じく、“解除前に”物権の移転を受けて「対抗要件を備えた者」は五四五条一項但書によって保護される。

 解除者は解除によっても物権の復帰は登記なしには“解除後に”取引をした第三者に対抗が出来ない。

③第三説、解除の効果について「間接効果説」を採用

 「債権関係」は契約が解除せられてもなお存続

 解除は、“未履行の債務”については“履行を拒み得る抗弁権”を生じる⇒“既履行のもの”については“新たな返還請求権を発生させる”に過ぎ無い⇒解除そのものによって“第三者の物権取得を当然妨げることはない”

 五四五条一項但書は注意規定とみるべき。

 解除者と物権の第三取得者との関係

 解除があっても有効に存在する“第三取得者への物権の移転”と、この“物権変動を否定する前提”に立つことはない。

 解除前⇒解除によって生じた返還請求権の行使によって物権は文字どおり解除当事者間で解除者に復帰⇒その復帰的変動との競合という形になる⇒“解除における第三者保護の問題”ではなく、二重譲渡の場合と同じく“対抗問題”となります。

 解除後⇒対抗問題として処理される。

解除の効果についての解釈

 「直接効果説を妥当」とするか「間接効果説を妥当」⇒解除の効果に“遡及効を認めるか否か”、および、“物権行為の独自性ないし無因性を認めるか、これを否定するか”⇒「解除と登記の問題」、特に「解除前の第三取得者との関係」を考えるに当たって、重要な理論構成の差異を導く。

 第一説は直接効果説に立ち、解除による遡及的契約の消滅を肯定するゆえに五四五条一項但書に重要な意義を認め、解除前の契約目的物の物権の第三取得者は、まさにこの規定による第三者保護の対象として取扱われる。

 前述のように、第一説では解除前の第三取得者を“第三者保護の問題”としてとらえますが、第三取得者がこの保護を受けるためには対抗要件を備えなければならないものとしています。

 第三取得者が移転登記を経ない間に解除者が抹消回復の登記をなせば解除者が勝つ⇒第三者保護の問題として構成しながら実質はいずれか先に対抗要件を備えたものが優先するという対抗問題としてこれを処理している。

 仮に第三者保護として徹底するならば、解除前の第三取得者は登記なくして解除者からの追及から保護されるべきであり、そのことは、解除者がさきに登記を備えた場合と第三取得者、解除者とともに登記を備えていない場合とを問わないとすべき。

 この説は、第三者保護の問題と対抗問題とを混同しているとの避難を免れない。

 この説では解除に遡及効を認める⇒売買を例にとれば、解除により目的物の権利は買主に移転しなかったことになる。

 この説でも、解除後の第三取得者と売主との関係を対抗問題としてとらえることから知れるように、目的物の所有権は初めから全く移転しなかったのではなく、そこに解除による物権の買主からの復帰的変動を考えていることは明らかである。

 この説は「物権変動の有因性と結合」させて時間的に遡及させて、目的物の所有権は買主に移転しなかったのと同様の状態が生じると言う矛盾にぶち当たる。

 物権変動特に特定物の所有権移転において、債権契約成立時に即時所有権が移転のでは⇒契約解除と同時に所有権がいきなり復帰するとすることもおかしい?

 前者において、“物権行為の独自性ないし無因性を否定しつつ”も“所有権移転時期をなんらかの形式的行為にかからしめようとの努力”が今日それいいる。後者においても、「解除による返還請求権を行使したときはじめて所有権が復帰する」と構成すべきです。

第二説は、直接効果説に立つ

 “物権行為と債権行為を峻別”⇒解除そのものは債権的効果を生じるにとどまる⇒解除によって当然には物権は復帰せず、返還請求権に基づいて物権復帰のための「物権契約」のなされたときこれが生じる

 その論理的帰結として、解除前の第三者と解除者との関係は五四五条一項但書の第三者保護の問題ではなく、対抗問題として把握しなければなら無いのに、この説が、同規定をもって第三取得者保護の基礎としている⇒第一説と同じく、第三者保護の問題と対抗問題との混同がみられる。

 民法の解釈として、「物権行為の独自性ないし無因性を肯定することができるか」

 物権行為を要式行為として不要式の債権行為と峻別することをしない民法では、両者を厳格に区別する実益はなく、そのような理解の上に立っても、物権移転の時期を登記、引渡し、代金支払いなど、なんらかの形式的行為にかからしめて理論構成することは可能である。

 独自性否認ないし有因性を認める以上、直接効果説は当然放棄さるべきではないか?⇒解除の効果に関して遡及効を否定し、解除時までに生じた物権変動は有効に存在し、返還請求権が行使されたとき解除者へ物権が復帰的に移転するのでは?

 第三取得者への物権の移転と、物権の復帰的移転とは互いに登記なくしては対抗し得ない関係に立つ⇒第三取得者への物権移転が解除前であれ解除後であれ変わるものではない⇒第三説(この説が最も適切)

第三説への疑問

 第三取得者の主観的態様を考慮すべきでは?⇒解除の前後を問わず画一的に処理すべきでは?⇒この画一的とは、解除前のものであれ解除後のものであれ、第三取得者と解除者との関係を対抗問題としてとらえることを指すと思われる。

 第三取得者と解除者との優劣を決するとぎに第三取得者の主観的態様を考慮に入れる⇒第一説の解除前の第三者保護においての解除後の対抗問題として構成する立場を採用すること自体と直接の問題はない⇒第三説の欠陥ともなり得ない。

 背信的悪意者は民法一七七条にいわゆる第三者から排除されるとする判例が確立し、学説も大方の賛成を得ている。

 約定解除の場合は此れ迄、法定解除について述べたところと同様に考よい。ただ、解除権の留保をあらかじめ登記したときは、後の物権取得者に、解除による契約の遡及的消滅を対抗し得る。


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