真夜中のつぶやき <murmur to oneself at midnight>

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痛みの中の救い『鈍色の空、ひかりさす青』

2010-04-24 | 読了本review
本日はルチルの新刊で

崎谷はるひさん『鈍色の空、ひかりさす青』
 高校生の受様は学校でも家庭でも暴力を振るわれ、堪え忍ぶ日々を送る。
 自身で組み立てた改造銃の引き金を引く日を自分の救いと信じている事
 だけを支えにしている。そんな日々が弁護士の攻様との出会いで変わる?!

同人誌作品をベースにしていますが
初期設定にかなり手が入っているので「新作書き下ろし」らしい

亡父の執着で背に桜の刺青を負う美貌の弁護士と
学校でも家庭でも暴力に曝され心身に傷を負う高校生の出会いに
違法ドラックに絡んだ暴力団の抗争問題に絡めて
お互いに大切な相手だと自覚するまでとなりますが

現在の社会的な問題を複雑に絡ませたお話で
主役カプが落ち着くだろう事以外は
最後まで先が見えない波乱にとんだ物語でした

受様は不良の多い工業高校に通う高校生です。
受様の学力ならもっとレベルの高い高校を狙えたのですが、
父と二人で暮らす受様はここしか選択できませんでした。

それでもその高校は職業的な実地授業が多く
就職率も高いという話だったのですが
実態は遊ぶ為の金欲しさに暴力と盗みを肯定し、
他人からの搾取が蔓延した学校で
受様も級友の一人のターゲットとなって以来
暴力にさらされる日々を送っていました

しかも受様は
家庭でも父親から虐待を受けていたのです
そんな受様にとっての唯一の支えは
自分の力で改造銃を本物に近づけていく事だけでした。

対する攻様は
ヤクザの父に背一面の刺青を追わされながらも
組とは無関係な弁護士となった男です。

二人の出会いは
どこにでもあるはずの一瞬の邂逅でした。

そぼ降る雨の日、
受様は級友の暴力でボロボロ状態で
軽く攻様とぶつかっただけでよろけ
攻様は受様の眼鏡を壊してしまいます。

自分のせいだと謝る攻様でしたが
元々級友の暴力で傷ついていた受様は
優しく気遣う攻様に対して驚いてしまい
逃げ帰ってしまいます。

しかし受様の学校は
攻様が関わるある事件に深く関係した為
二人は否応も無く引き寄せられます。

それぞれに重い事情をもつ二人の道が交わる時、
どんな未来が開かれるのか

二人を取り巻く様々な要素の複雑な要素を
全てを解き解して二人の気持ちが繋がるまで
どちらの視点もほど良くミックスして進むので
一緒にワクワク、ドギトキしつつ
一気に読ませられました

受様の受けている校内暴力やいじめや家庭内虐待、
改造銃、覚せい剤常習、
攻様の追っている違法麻薬の売買、
暴力団同士の抗争等、
力加減の無い思いテーマで進みますので
痛いのが苦手な方は注意が必要ですが、
現実には創作以上の痛さも有ると思います。

多くの方に読んで頂きたい良作でした