岩切天平の甍

親愛なる友へ

高木ブー

2007年05月04日 | Weblog

 紀伊国屋で大江健三郎を三冊。
「個人的な体験」
「われらの狂気を生き延びる道を教えよ」
「私という小説家の作り方」

 もう十年以上も前に、大江氏と食事を共にする幸運に恵まれたことがある。
某国営放送の企画で、氏とロバート・マクナマラの対談がもたれた前夜に、コロラドのホテルのレストランで、どういう訳か大江氏が僕の向かいに座ったのだ。コーディネーターのMちゃんが何を血迷ったか、こともあろうに大江健三郎に「イワキリさんはワインにとっても詳しいんですよ。」とのたまった。
「げっ、オレになんの恨みがあるんだよー。」と横目で睨む僕に「じゃあ、何にしましょうか?」と訊くサブちゃん…

 大江氏はリラックスしていらしたのか、やはり話にならんと思われたのか、高木ブーの話を始めた。
「高木ブーの娘さんがね、デートで遅くなって、彼氏が家まで送って来たんだって。そしたら、娘を心配した高木ブーが、表に出て待ってて、それを見た彼氏が娘さんに『何だってきみんちの前に高木ブーが立ってるんだい?』って訊いたんだってさ。」
生涯悔いが残る夜だ。
あの夜がもう十年遅く来ていたら…
思い出す度に「ばかばかばか!」と頭をたたく私。

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