友人の彫刻家、前芝さんからダンボ・アート・フェスティバルの案内が届いた。
彼のワークスペースがあるDUMBO(Down Under The Manhattan Bridgeの略)地区は近年アーティストが集まる倉庫街、かつてのソーホーのような場所だ。この週末にここで活動するアーティスト達が一斉にスタジオを解放して大展覧会を開こうという趣向で、年々賑やかさを増している。
前芝さんの桜材の木肌を生かした彫刻は、抽象とは言えとても有機的で、まるで生き物のようだ。フェスティバルに参加している作家の中でも群を抜いて際立っている。
前芝さんのホームページから
「僕は今まで自分の存在においてほんの一面にしか過ぎない“生”だけしか見て来なかった事に気づいた。そして(より良く生きるためには)もう片方の“死”についても考えなければならないのだと悟った。
いかに生きるかだけに捕われていた僕の彫刻は僕自身の反映だ。
彫刻の中で、形や実体だけに捕われて来た僕は、その周りを創造することを考え始めた。
“いかに死ぬのか?”僕の彫刻にとってこの質問は“いかに空間を作るか”と言う事だ。」
以前、彼の大型の作品に買い手がついた事があった。かなりの金持ちらしいその客は所有するビルディングのロビーで展覧会を開いてくれたが、そのパーティーのあとで購入をキャンセルしてきた。本当の所は分からないけど、お世辞にも社交的とは言えない前芝さんがパーティーでうまく立ち回れなかっただろう事は想像に難くない。
あちこちのスタジオでふるまわれるワインを片手に陽気な来客達を、おそらく彼はそんな事には興味無いのだろう、無言で眺めている。
僕は「営業しなきゃだめじゃない。」なんて笑いながらも思っている。
作家は誰もいない部屋でひとり、作品のことを考えたり木に向かい合っている時が幸福の全てで、あとのことはまあどうでもいいんだろう。
TBのつもりでURLを入れてみました。
テキストもお写真も難しい問題ですが心にしみます。