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空野雑報

ソマリア中心のアフリカニュース翻訳・紹介がメイン(だった)。南アジア関係ニュースも時折。なお青字は引用。

あまりにも面白いので観察せざるを得ない。

2015-09-29 00:01:35 | Weblog
 何が起こっているかって、「言論人」と「活動家」との立場・解釈の違い、とでも言えばいいか。
 で、それを超利用しまくってヒャッハーやった連中ってのも歴史上超見ますよね、とか。









 そりゃあ、アレだ。
 言論を暴力で圧殺するのは卑劣の極み。このようなことを認めては、民主主義社会が成り立たない。だからこそ我々は、それこそ必死になって暴力を抑圧し、物理的暴力に限らず、物理的暴力を想起させてひとを威圧することをも暴力と呼んでこれも抑圧しようとしてきたのだ。

 だから、言論人としての奥田愛基を殺害しようだなどと、それは決して許されることではない。

 でまあ、こういうのも想起すると、言論を物理的暴力で圧殺しようなど、あってはならぬではないか、と思わされるのではないか:



 …学説的に、論理的に考えた結果、こうならざるを得ないというようなことを言って「うるせえ死ね、むしろ殺す!」と言われたら、その…。

 …では、なんでこの憲法学者を殺そうとか思えちゃうのだろうか? 
”国のカネを使わせてもらってケンキューとかしてる癖しやがって、国の役に立たないなんて国賊だ! いや、国賊がただ黙って日陰者として生かさせて頂く、って言うならまあ寛大な俺様は許してやらんこともない。しかしマイナスの存在の分際で、そのマイナスにしかならない意見を権威あるふうに喋るだぁ?! いたいけな学生を洗脳でもしようってのかこの野郎! 天罰ぶちかましてくれるゥッ!!!”
 …だろう、さっと。多少穏健なジハーディストならこんな感じの思考を辿ると思いますが。

 ということで、ポイントのひとつは「権力の行使」。
 
 次のチェックポイント。件の学者は、書いてあるとおりまずは学者であって、論文を書くのが重要な任務なのである。先端的な内容を適切な時期に一般に還元するのも重要な任務。

 なので、意見を持つこと自体は「思想の自由」とか、彼の場合はむしろ「学問の自由」ということで、別個の概念で守られるべき領域のことになる。では、それを逸脱した場合はどうか?




 ゲンダイソースで語るのはアレだが、ゲンダイ扱いのところまでゐっちゃったかーという言い方もある、そんな某先生とかの場合。この場合は「学問の自由」なのだろうか? 彼の発言は、彼の学問的成果であって、決してフェルキッシャーベオバハターあたりの攻撃に晒されてはならないものなのだろうか? おお、そうだ! ハイゼンベルクへの攻撃など、愚劣のひとことではないか? そうだ、山口先生への「批判」とは、ハイゼンベルクを(追放されるべき)ユダヤ人に比するような卑劣な歴史的犯罪者のそれに等しいの…だろうか?









 …いやぁ。惨めにもわが身の安全を図りながらも、将来のドイツ科学会のためにドイツに残り、そのために友人のほぼ全てを失ってなお生き続けたハイゼンベルクと、時代劇かなにかの主役?になりきってノリノリ熱演の山口氏を同じ枠に入れていいものか? 思いっきり役割に酔ってますが。いや結構前からそういう人でしたよ、という意見もあるかもしれないが。

 となると、すくなくともああした活動をしている状態の山口氏には、学者としての権利保護はあまり主張できた義理ではないっぽい、と感じられるわけである。だってあれ、学者の学術成果の発表には見えないもの。いや、演劇科ならあれでいいんだろうけど。

 では話を奥田愛基に戻そう。彼は何ものなのか?
 学者ではない。専門の訓練を受けているわけではないし、専門の業績があるわけではなかろう。
 言論人―うんまあ、TVにコメンテーターで出てきたし、その枠なのかもしれない。しかし彼に、言うに足る評論、エッセイ…はあるのだろうか?
 いや、彼の持ち味は演説と、集会の組織者たるところにある。


 …そこで『ああ、そんな種類の歴史上の人物を知っていますよ!』とか言わないように。


 演説を行う点では「言論人」の枠っぽいが、「集会の組織者」というのは言論人の中核的な属性ではない。では演説と組織とを中核的なスキルとして持つ、政治分野の人をなんと呼ぶか?

 …「運動家」「活動家」だろうな。

 となると、そりゃアンタ、我々学者がする程度のカワイイ政治や運動やなんかじゃない、かなーりディープな世界がそこに広がるのである。

 我々は証拠と論理と生産性と―あたりで勝負する。究極にはこのアタマで仕事をするのであり、論文でものをイワせて我々は先端を行って先導し、付いてこれない者は置いてけぼりなのである。

 運動家、活動家は異なる道を辿る。その目的のためにはどうしても人々を動員せざるを得ず、人目をひかざるを得ず、これを大衆運動にもっていくには扇動さえせざるを得ない場面さえあり、してみると強烈な支持者を得る他方では強烈な反対者をもつ破目に陥る。

 ―ということで、活動家としての奥田愛基は「レベルがあがった! えいきょうりょくが5あがった! しきんちょうたつりょくが10あがった! さつじんよこく1をえた!」ということで、活動家としての貫目があがったのでその点では喜ばしいことと言わざるを得ない。

 ところで彼の活動というのは、少なくとも取り巻きさんたちが気に食わない国会議員の毛穴のひとつひとつに五寸釘を叩き込んでやりたいとか、”お前ら人じゃねえ”って概念的に殺害するとかというものであり、それに対して根源的な批判を加えて除名するでもなく排除するでもなく、『いやあ、ちょっと乱暴な隊員がいてねえ』と嘯く立場であれば


 …ああ、そこで『ああ、そんな種類の歴史上の人物を知っていますよ!』とか言わないように。


 …まあその、一緒くたにアレ扱いされもするかなーとか。

 ともあれ、言論人なら、山口二郎氏が自分の縄張りでアレなことを言うのに対して「恥を知れ! それでも言論人のつもりか! それでも学者のつもりか!」と言うべきだっただろう。そうした愚者を排撃すべきだっただろう。しかしそうした活動に対して、「概念的に殺害」するという解釈あたりで処理してきた関係上、だいぶ濁濁併せ呑むという立場に自らを置いてしまったのがいまの奥田愛基である。

 当然、政治の場面も基本的には言葉を用いて戦うべきものであって、彼に対する物理的攻撃、ないしその示唆は非難されなければならない。

 しかし、純粋な言論のみで戦うルールでプレイしていない以上、その規制を厳格なまでに守っているわけではない以上(守っていても殺人予告くらう訳であるが―憲法学者の例を参照)、なんというか、ビーンボールとか少林サッカーとかピンポンダッシュとか宿舎の前での夜通しパレードとか出てくるわなあ、と思われる。

 でもって、それはいわば勲章だろう、主観的には、とも思われるわけである。そりゃもう、いさことが起こったら「板垣死すとも自由は死なずゥ!!!」と叫んで死ぬべきところだ。なぜならそれは、己の死によって己の運動に絶対的な勝ち点を与えることになるからだ。むしろこれで一流の活動家扱いになって(合理的には)殺され難くなったんだから、安心してどーんとやれ、とか思うが。


 …コワいのはわれわれ一般人なわけでして。
 権力がないから、もし政治的理由で殺害されても、ただの殺人事件におさまり、暗殺にならないのですよね。ことが起こった場合、人知れず消されるだけなのです…。

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Unknown ()
2015-09-29 00:23:13
…さしあたり、こうした運動が盛り上がっちゃったのは政治不信に直接の根があるんでなかろーか。
政治不信は、直接には政権与党に対するそれということで展開してるけど、その裏返しで、有力(なはずの)野党に対する絶望も同時に進行しているのではなかろーか。
『政府与党のおっしゃる集団的自衛権解釈は憲法違反で間違っている! 決して認めることはできない! しかし我々は集団的自衛権行使に賛成である! だがその認容されるべき集団的自衛権行使に関する意見を言うべきときでは、今はない!』
そーやってハタチそこらの若造と一緒になってハンターイって叫んで踊って歌って…であって

…大人たちへの不信を強化してるんじゃないかなー、これ。
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Unknown ()
2015-09-29 00:31:17
奥田少年は、自民党の政治家さんたちに丸ごと反対する立場をとるわけだ。それなら、自民党の政治家さんたちの生きる目標とかなんとか、家族の生活も含めてかな(給料にも関わるしね)、まとめて否定することになる。たぶん、関係する企業さんとかのそれらもまとめて。

だから「坊主憎けりゃ」の理屈もあり、家族もろともの脅迫が出るのも、そりゃまあ想定の範囲内ではあろう。その点にかけては、この「戦争」は対称的なものでは、まあ、ある(いや奥田君の持つ権力は圧倒的に小さいので、そこを言えば非対称なんだけど)
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Unknown ()
2015-09-29 00:36:29
…で、ところで、この「ゲーム」の「プレイヤー」の中に、安全圏から高みの見物のひとたちがいますね。

脅迫犯?
いえいえ、脅迫犯氏はかっちり警察の捜査対象になり、運が悪けりゃしっかり逮捕されるでしょう。

自民党の多数の議員?
いやあ、陣笠さんがたは、下手に転ぶと失職の危機でしょうよ。ちゃんとそれなりのリスクは払っている。名のある人はちゃんと名指しで人格攻撃を受けている。

ところで「温かく見守る」とかって、ステキな表現ですよね。手出しせず汗をかかずにいられるってのがとっても低コストでステキですねー
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