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空野雑報

ソマリア中心のアフリカニュース翻訳・紹介がメイン(だった)。南アジア関係ニュースも時折。なお青字は引用。

イスラエルがシリア難民を受け入れる

2017-01-27 19:23:41 | Newsメモ
 難民の保護は重要な、崇高な仕事だ!というのは、原則、誰も疑わないレベルのことだと思うが、さて新聞報道だと基本、悪辣な人権抑圧国家状態扱いのイスラエルが、リアルに敵国であるシリアの難民を受け入れる、しかも親を亡くした子供達を…!という場合、普段イスラエルを罵る趣味の人たちはどう応えるだろうか:

BBC Israel 'to take in 100 Syrian orphans' 26 January 2017

 …まあ、幼い子供たちを洗脳し、人質にしようとする悪辣な罠だと、これでもなお罵倒するだろうなあ、とは思う。
 しかしその点でも:

According to Israeli media reports, the children will initially get temporary residency status and allowed to stay indefinitely after four years

 …であり、緊急避難として4年間は受け入れておくということで、全面的に「洗脳」を狙ったものではない、と判定してあげるべきだろう。多少恩義を感じては欲しい、しかし思想の自由は確保できそうな程度か(プログラムからの離脱もできるわけだろうし)。

 というか、たかが100人くらいが、シリアに対する盾になるか、ということもある。

 このシリア内戦の件ではイスラエルは、中立を維持しており、この問題で積極的なプレイヤーとして現れてはいない。イラク戦争のときといい、イスラエルは中立すべきときには正しく中立を守る。非常に理性的な対応である。

 今回も、基本的には人道的配慮と評価すべきだろう。と同時に、「あの」イスラエルから人道的配慮を示されるシリアの辛みもあらわになろうというものだ。

 しかも、まずは子供たちを―といいつつ、あとで家族親族が見つかれば、そっちも受け入れってことにしてもいいかもーって考えてるよ?とのことで、西欧諸国並みの対応である(orphanedとは、この際、”家族とはぐれて”程度で理解するものなのだろう)。

 …非難のしどころのない、見事な対応である。

In recent years, Israel has treated more than 2,600 casualties from the war, in hospitals in Israel or in a military field hospital on the occupied Golan Heights

 勿論、占領地でやる…というのはシリアにとってはイヤ気なものだろう。実効支配者が誰か、丸分かりだし。しかしシリア側にとっても「我が国民は我が国土内で医療サービスを受けた」と言えるにはいえる。ぎりぎりの、見事な采配ではないか。シリアの面目はあんまり立たないけど。敵国に、自国内の内戦被害者を強行救助されるって、どこまでの間抜けか、というあたりで。

 なおメモ:

BBC The victims of Syria's war finding care in Israel 25 November 2013 By Kevin Connolly

In the maternity unit at the Sieff Hospital in the Israeli city of Tzfat, the safe arrival of every baby feels like a minor miracle

 …「こどもの命をまもる、イスラエルさんGJ!」ということになるよなあ。一応、”阿吽の呼吸”でシリア側も歩調を合わせているようだし。あえてよかった探しをすれば、この点だろう。…まあ、イスラエルに保護されていると知られると故郷の家族の身が危うくなる、というあたり、この雪解けの「厚み」も限度があるが。

 まあ、「 "Some beautiful relationships have started between the staff at the hospital and the people that we treat. Most of them express their gratitude and their wish for peace between the two countries."」という気持ちを大事に育てることができればいいねえ、と。

 …日韓の場合、朝鮮戦争で一緒に掃海作業してたわけであり(勿論この「外征」「国外派遣」は超法規的な極秘命令だったわけだ)、前線の感情はそれなりに近いものがあったようだが…うん、まあ。

 なお、「負傷も病気も差別せず治療」しているとのこと:「Dr Embon says that policy of not discriminating between the sick and the hurt is entirely consistent with what he sees as the values of his country and the ethics of his profession」。

 つまり、イスラエルの同胞を殺したかもしれない「テロリスト」も、これからイスラエルにテロを仕掛けるかもしれない「テロ組織構成員」であっても、識別票をつけたシリア兵であっても。「"I don't expect them to become lovers of Israel and ambassadors for what we do here, but in the interim I expect they will reflect on what was their experience here and that they will reflect differently on what the regime tells them about Israelis and Syrians being enemies."」。

 イスラエル国家をどう悪く言おうとも、この前線の英雄を非難できはしまい。これこそ、我らの同胞のなすべき行動なのだから。

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