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上野佳恵著『情報調査力のプロフェッショナル ビジネスの質を高める「調べる力」』

2009-03-25 18:40:07 | Weblog
「調べる力」は、天賦の才ではない。鍛えることによって向上させることが可能である。著者は、そのように確信している。企業、人物、業界、消費者動向など、ビジネスに主要分野で必要な情報を入手するためのプロの実践スキル。世界有数のコンサルティング会社マッキンゼーのリサーチ部門で、著者は磨かれた。その敏腕情報調査ウーマンが、本書で数々の秘訣を公開している。本書は、保険業はもとより、いかなるビジネスの現場で働く人にも十分に応用できる。本書の目次は以下のとおり。

序章 プロフェッショナル・リサーチャーの作法
第1章 調べる仕組みとは
第2章 ビジネス情報ニーズの範囲
第3章 企業と人物について調べる
第4章 基本のリサーチ(1)「企業」「人物」
第5章 業界について調べる
第6章 基本のリサーチ(2)「業界」「消費者」
第7章 情報のプロフェッショナルへの道

 本書の著者上野佳恵(うえの・よしえ)氏は、現在は東京・文京区で、リサーチ関連サービス・コンサルティングを行う(有)インフォナビの代表取締役であり、かつ日夜ビジネスとして情報調査を実践している。そもそも、この(有)インフォナビも、2004年に上野氏が自ら設立したもの。その前身である(有)マーケティングドゥも上野氏が切り盛りしていた会社である。上野氏は津田塾大学で国際関係論を専攻。貿易に関する卒業論文を書く課程で情報調査の難しさや面白さを実感する。ジェトロのライブラリーを知ったことが、後年の職業に結びついたようだ。大学卒業後、調査の仕事をしたくて、(株)日本能率協会総合研究所に入社、同社のマーケティング・データ・バンク(MDB)部門で顧客向け情報提供サービスに携わる。その後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに転職。社内向けリサーチ業務の傍ら、インフォメーション・サービスグループのリーダーとして東京・大阪・ソウル各オフィスの情報センター整備、トレーニングなどを手掛けてきた。更に、独立して情報調査ビジネスを立ち上げた。この会社を通じて、シンクタンク研究員やコンサルタント等を相手に、ビジネスとして情報調査業務を実践してきている。この間、20余年。まだ、男女機会均等法が世に出る前に4年制大学を卒業生が、自分の力で“仕事”を“ビジネス”を掴んでいった。そのプロセスが、本書の最終章(第7章)に書かれている。この部分は、理論ではなく体験が書かれていて、極めて読みやすい。序章(プロフェッショナル・リサーチャーの作法)、第1章(調べる仕組みとは)あたりを読んで頭が疲れたら、次に第7章を読むことをお勧めしたい。
本書は、著者の体験を踏まえたうえで編まれた情報調査ビジネスの入門書。年齢、男女、組織上の地位に関係なく、一読すれば得るところが多いに違いない。特に、企業や人物についての“調べ方”、業界についての“マーケティング調査”(事例はペット産業)の手法は、役に立つであろう。本書は、読みっぱなしにするのではもったいない。折に触れて何度も読み返すことをお勧めしたい。

(2009年、ダイヤモンド社、1500円+税)