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『破綻国家の内幕』

2006-05-01 00:54:01 | Weblog
東京新聞取材班『破綻国家の内幕』

サブタイトルに、公共事業、票とカネ、天下り、利権の構造といったキーワードが並ぶ。
本書は元々東京新聞の連載企画として一九九九年十二月にスタートした。当時は小渕内閣が公共工事を中心に大型予算を組もうとしていた時期である。記者たちは、当時の政治の状況に関して “強い危機感”を持つ。これが新聞連載開始の引き金になった。東京新聞(中日新聞)社会部の記者たちは、政・官・財の厚い壁に阻まれながら全国各地に飛び、地道な取材と読者をはじめとする多数の協力者のもと連載を続ける。この連載は好評だった。二〇〇二年夏に角川書店から単行本として刊行され、更に二〇〇五年になって角川文庫の一冊として出版される。
目次を見てみよう。ここでは目次の概要を紹介するより、どんなテーマが並んでいるかを見ていただきたい。

天下り官僚の聖域
諫早湾干拓事業の真相
林業土木事業をめぐる利権構造
建設業保証会社をめぐる権益
近畿郵政局の選挙違反事件
ノルマに苦しむ郵便局員
東北ゼネコン談合の病理
道路ビジネスをめぐる談合疑惑
遠のく地方分権

納税者として、国民として腹が立つばかりである。それにしても、記者たちの取材の肉迫ぶりは素晴らしい。本書に記録されている“事実”の数々を一人でも多くの人に知ってほしい。これが本書を「本とのつきあい」に紹介した動機である。例えば、「建設業保証会社をめぐる権益」(一〇四ページ以下)を見てみよう。
建設業保証会社というのは、一般にはなじみがない。簡単にいうと、公共工事に関する保証ビジネスを行う会社である。官公庁から工事業者に前払いされた工事代金の保証を行う。これが建設業保証会社の業務だ。東日本建設業保証株式会社(本社:東京)、西日本建設業保証株式会社(本社:大阪)、北海道建設業信用保証株式会社(本社:札幌)の三社が地域独占のかたちで並立している。問題なのは天下り。旧建設省時代から東日本建設業保証社と西日本建設業保証社に多数の大物キャリア官僚が社長や役員のポストについている。北海道建設業信用保証社は、旧北海道開発庁からの天下りを受け入れる。一九九九年の数字をみると、東日本建設業保証社の保証料収入は百八十億円。一方、事故による弁済は二十四億円強で、その割合は約13.5%ときわめて低い。西日本建設業保証社の数字を見ても、11.9%、北海道建設業信用保証社に至っては4.0%に過ぎない。保証料を下げる気配はない。これら3社は、巨額の寄付金を他の旧建設省関連の公益法人に対して行う。これら公益法人には、多数の天下り役員が送り込まれてきた。よくあるパターンである。このようにして、国民の支払った税金は無駄に使われていく。
(二〇〇五年、角川文庫、六六七円+税)