



「イキガミ」 間瀬元朗 小学館 1~4巻(以下続刊)
「生きることの大切さ」を認識させるため、全ての国民に小学校入学時「国繁予防接種」が義務付けられた。だが、その予防接種の注射器の中には命を奪うナノカプセルが混入され、それにより1000人中1人の若者が、18歳から24歳までの、あらかじめ設定された日時に命を奪われることとなっていた。
しかもその運命を知らせる死亡予告通知書(イキガミ)が彼らの元に届くのは、死のわずか24時間前・・・今まで健康で何事も無く生きてた若者にある日突然届く1枚の非情なる宣告書
「明日の今頃は君は死ぬんだ」と告知された人々は残る24時間をいったいどう生きるのか?!
アヤネさんが教えてくれ、興味があったのでさっそく購入したところ、偶然にもその翌日にまちるださんも読んだと知ってなんか不思議な感覚。人を惹きつける漫画というのは何かあるんですね。
さて、国家繁栄の為に公的殺人が行われていくというストーリーのこの漫画。読んで、ふと思い出したのが星新一さんの「生活維持省」(「ボッコちゃん」所収)という、ショートショート。
あれもまた平和で秩序ある国民生活を維持するため、コンピューターが公平に選んだ人間を生活維持省という国家公務員が間引いていく(殺していく)話なんですが、あれは選ばれた人間が苦痛を感じないように知らされる間もなく、殺人が行われるのに対し、こちらは死までのタイムリミットが教えられ、その当人達が死と言う恐怖と向き合い迎える24時間と、薄々この体制は間違っていると認識しながらも、自らの命を守るためにはその思いを表に出してはならないと葛藤し続ける「逝き紙」配達人である主人公の心の揺れが一層のドラマを生み出しています。
自分の命があと24時間だと宣告されたら、人はどう生きるか・・・
そして人は何の為に「生きる」のか・・・
そんなことを問いかけしている様に思えてなりません。
まちるださんと同じく、私も誰しも「自分が生きた証」を残したいと思うのではないかとチラリと思ったり。
それがとんでもなく立派なことじゃなくても、そして形に残らないものでも誰かの記憶の片隅に残っていたい、そんな風にも思うけど、日々をぼーっと生きている自分にはそれはそれで難しいのかなとも思ったり
まぁ私ならヘタレなので、オロオロしている間にタイムリミットを迎えそうな気がしますが(苦笑)
ちなみに星さんの「生活維持省」でのラストはその公的殺人を行っていた役人本人がコンピューターに選ばれ、その国を揚げてのシステムになんら疑問すら思わず「争いの無い時代に、こんなにも生きられて良かったな」という言葉を残し終わっています。
読んでいる側はその言葉に疑問すら持たない憐憫さと洗脳される事の恐怖を感じる終り方となっていますが、はたしてこの「イキガミ」はどのようなラストを迎えるんでしょう??
いつの時代も「国民全てが公平に責務を負う」となってても、必ず例外はいるんですよね(例えば国の中枢にいる方とか、要人とか)また暗部に気づく登場人物も出てくることでしょう。そしていつの世にも必ず「間違い」に気づく人もいるはず。
4巻ではようやくこの「国繁法」に異議を唱える人が出てきましたが、そういう部分が今後どのような形となって出てくるのか、そして「逝き紙」を配達し続ける主人公の心の葛藤がどのような形になって表に現れるか、これからの構成によって「ありがち」になるか「傑作」になるか分かれ目のような気もします。今後の続刊に注目です
そして最新刊の帯を見たところ2008年秋に映画化がされるとの事。
どういう話を持ってくるのか、そして現行ではまだ連載中のこの話をどうまとめるのかも楽しみですね