ギリギリ探偵白書・２０１

　ギリギリ探偵白書
　「息子の敵」



わたぼん　「サザビーさん、今日、面談、お願いしますね」

サザビー　「そんな予定あったっけ？」
　
わたぼん　「いえ、僕の知り合いなんですけど」

サザビー　「へぇ、誰？」

わたぼん　「僕の大学時代の教授のお兄さんの娘さんのダンナさんの・・・」

サザビー　「つまり、知らない人って事ね」

わたぼん　「そうとも言いますね」

サザビー　「で、何時に来るの？」

わたぼん　「ええ、もう来てます」

サザビー　「うっ・・・突然、得体の知れない頭痛が・・・」

わたぼん　「はい、バファリン。さ、行きましょう」

サザビー　「ちっ・・・」


　相談者は男性だった。
　この男性は、２年前に結婚し一人の息子がいる。

　調査は、その息子に関する事だった。


サザビー　「ほお、虐待・・・」

依頼者　　「はい、先日、久しぶりに息子とフロに入ったんです
　　　　　　そしたら・・・」

わたぼん　「いったい、誰が・・・」

　（それを調査するんでしょ！）

依頼者　　「息子は幼稚園に通っているので、もしかしたら」

サザビー　「そうじゃないでしょ。
　　　　　　一番、疑っているのは奥さんですよね」

相談者　　「う・・・」

サザビー　「じゃなきゃ、いきなり探偵社なんかには来ないでしょう」

相談者　　「し、しかし、妻がそんなこと・・・」


　調査は、まず、依頼者の家に隠しカメラを仕掛ける事から始めた。
　依頼者の立会いのもと、数カ所にカメラを仕掛けた。


サザビー　「んじゃ、明日あたり、その幼稚園、見に行こか？」

田中　　　「僕、通り道なんで、現直しますよ」

サザビー　「じゃ、そっちは田中に任せるか」

わたぼん　「ダメです。どうせヒマなんですから」

サザビー　「無駄だよ、幼稚園なんか見たって良い事ないよ」

わたぼん　「幼稚園でイジメられているかもしれないでしょ」


　翌日、私は、わたぼんの運転する車で、その幼稚園に向かった。

　そして、幼稚園の前の道にさしかかった時
　幼稚園前で警察官と、もめている人間がいる。


わたぼん　「くっ・・・あのブー」

サザビー　「ヤレヤレ、静かに通り過ぎよう」

わたぼん　「ラジャー！」

　
　警察官の横を静かに車で通過する。


田中　　　「・・ら、待ち合わせだって！」

警察官　　「ふ～ん、最近、連れ去り事件が多いからね」

田中　　　「だからぁ、信じてよぉ」

　（アデュー！田中）

わたぼん　「ふ～。危ないところでしたね」

サザビー　「どうするんだよ、これからの調査・・」


　その日は潔く撤退する事にした。

　（まったく、無駄足だぜい）

　それから、依頼者と打ち合わせ、隠しカメラのテープを回収した。
　そして、そのテープに映っていたものは・・・。

　無残にも散らかったオモチャ。
　取り込みっぱなしの洗濯物。
　料理をする奥さんの後姿。

　子供に暴力を振るっている姿は映っていない。
　それどころか、仲の良い母子である。


依頼者　　「良かった、妻ではなかったんですね」

サザビー　「では、誰が・・・」

わたぼん　「それを、これから調査するんでしょう」

サザビー　「その後、お子さんに変った様子は？」

依頼者　　「すみません、私が帰ると、もう寝てまして」

サザビー　「では、奥さんにも話を聞きますか」

わたぼん　「でも、それじゃ、ダンナさんが疑った事が・・・」

サザビー　「そんなもん、悪い探偵に騙された事にしとけば・・・」

依頼者　　「大丈夫です。息子の方が大事ですから」


　後日、夫婦一緒に、事務所にやってきた。
　そして、ダンナさんが、腕のアザに気付いた日の行動がわかった。


奥さん　　「はい、その日は幼稚園が休みでした」

わたぼん　「では、それ以前に・・・」

奥さん　　「いえ、私は仕事でしたので・・・」

サザビー　「お子さんは一人でお留守番？」

奥さん　　「いえ・・・、あの、預けたんです」

わたぼん　「幼稚園は休みなんですよね」

奥さん　　「あの・・・、お義母さんに・・・」

依頼者　　「なっ！！まさか・・・」
　

　その後の調査で、ダンナさんの母親が虐待している事がわかった。
　息子は、奥さんの連れ子で、ダンナさんの子供ではなかった。

　ダンナさんは自分の子のように、かわいがっていた。
　しかし、おばぁちゃんは、そうではなかったのかもしれない。



　　　　　　　　完



　メールマガジン「ギリギリ探偵白書」の復刻版です。

　ギリギリ探偵白書は、過去に行った調査を本人了承のもと掲載しています。
　尚、調査時期や調査対象者・ご依頼者様の個人情報は本人様の請求以外は開示いたしません。
　また、同作品に登場する人物名は全て仮名です。


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