ギリギリ探偵白書・141


 ギリギリ探偵白書
 「ストーカー大男・第1話」




その日は事務の日だった。
月に2度くらいであるが、事務の日を決めて、事務作業を一気に行う事がある。

それは、現場に飛び回る私の事務仕事が溜まる一方だからだ。

そんな日は朝から何となく足が重たい。
というのも、書類の溜まっている数を知っているからだ。

(・・・数字と睨めっこに、誤字脱字のチェックかよ)

電車に揺られ、いつもより早めに
事務所に着くと、扉が閉まっていた。

(あれっ?田中は来てないのか?)

私は右のポケットから鍵を出し、鍵穴に鍵を差し込もうとした途端
突然、扉が開いた。

(うわっ!!)


田中   「・・・あっ、すみません。。。」

阿部   「いてぇーな、もう少しゆっくり開けろよ」

田中   「・・・・すみません」


デスクの周りには、書類が山積みになっている。

(はぁ~、コレを見ただけで、やる気がなくなっていく・・・)


田中   「大変ですね、代表。それで、今日なんですけど・・・」

阿部   「・・・昼は弁当でいいぞ。一気にやるから」

田中   「いや、事務じゃなくて、仕事です」

(仕事?事務も立派な仕事だぞ。)

田中   「・・・あっ、事務も仕事でしたね・・・」

阿部   「現場は無理だぞ。今日は早く帰るって言ったからよ」

田中   「あのっ、夕方ぐらいなんですけど・・・」

阿部   「だめ、人員はちゃんと割いてるでしょ」

田中   「それが・・・」

阿部   「とりあえず、暇なら手伝ってくれ」

田中   「・・・わかりましたよ・・・」


事務仕事は急ピッチで進んだ。
まるでロボットのように次から次へ!!

(何だか気合いが入ってきたぞ!!)

(じんせーい、ラクありゃ♪・・・あれ?)


阿部   「おいっ、テレビ消せよ」

田中   「いいじゃないですか、昼抜きで働いてるんですから」

阿部   「昼抜き?お前、ポテチ何袋、食ってんだよっ」

田中   「5袋くらいですが・・・」

阿部   「何カロリーだよ?全く。昼抜きは俺だぞ」

田中   「何だかカツが食べたいんですよねぇ~」

阿部   「・・・そういや、お前、現場がどうとか言ってなかったか?」

田中   「あっ!!やばっ、もう4時過ぎだ!!」


田中はダッシュで事務所から出て行った。
ちょうど、その頃事務処理が全て終わり、私はその日行われている
調査の現場主任に連絡を始めた。

そして・・・、


阿部   「おっ、山○か?田中は到着したか?」

山○   「まだです・・・。あれ?代表はまだ事務所ですか?」

阿部   「は?今日は事務の日だぞ」

山○   「え?そうだったんですか。じゃあ、どうしよう・・・」

阿部   「どうした?」

山○   「実はストーカーなんですけど。見るからに強いんですよ。
      しかも、全部の段をあわせると6段」

阿部   「田中の寝技で何とかしろよ」

山○   「ダメですよ。180センチ、100キロ越えの巨人ですよ」

阿部   「おいおい、おりゃ、164センチの57キロだぞ」

山○   「今日あたりで押さえないとヤバいんですよ」

阿部   「・・・あああ、わかった、わかった」

山○   「急いで下さいね。1時間ほどでストーカーが来る予定だと
      今、尾行班から連絡がありましたから。んじゃっ!」

(え?1時間って、すぐ出なきゃ間に合わないじゃないか)


しかし、調査の内容がわからない。
私はパスワードを打ち込み、調査資料から該当する調査のファイルをクリックした。

依頼者は20代女性、1年前に夫と離婚をし、独り暮らしを始めた。
その頃から、無言電話が始まったが、仕事に専念し
資格の学校に通っていたため気にしなかった。

ところが、次第に無言電話の回数が多くなり、さらには玄関レバーに
使用済みコ○ドームがついていたり、ポストのカギが捻じ曲げられていたりした。

さすがに恐怖を感じ、電話番号を変更したり、あちこちに相談したが
解決するには至らなかった。

そして、T.I.U.へ相談にきたそうだ。

ストーカーの特定を行うと、すぐに元夫が浮上し
いたずらをしている現場の撮影にも成功した。
そして、その継続性を立証できる証拠収集が十分に進んだ。
しかし、依頼者様の希望により、話し合いによる解決が目標となった。

場合によっては、取り押さえる必要がある。

しかし、調査スタッフ田中のメモによると、ストーカーの元夫は

「柔道2段、空手2段、よくわからない古武道みたいなもの2段
 離婚原因は度重なる暴力、非常にキレやすい♪」

となっている。

T.I.U.で収集した証拠の写真を見る限り、確かに筋肉が
服の外から浮いて見えるような体つきに、狂気の眼光が鋭い。

(暴れたら、頑張るしかないよな・・・。仕事だしな・・・)

私は事務所の前に置いてあるバイクに跨った。
バイクなら30分で現場に到着するはずだ。

1200ccのバイクのエンジンは快調で
車ばかり乗っていた私の体には風圧が厳しく襲ってきた。

(・・・このバイク、こんなに重かったけなぁ・・・)

私は予定より10分程、遅れて現場に到着した。

すでに、そのマンションには田中の車と調査車両が一台停車していた。
しかし、中には誰も乗っていない。

(ヤバッ、もう始まってるかも)




        続く



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 ギリギリ探偵白書は、過去に行った調査を本人了承のもと掲載しています。
 尚、調査時期や調査対象者・ご依頼者様の個人情報は本人様の請求以外は開示いたしません。
 また、同作品に登場する人物名は全て仮名です。


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