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1ナノヘルツと10ナノ秒の世界(天変地異と連鎖反応)

2014-11-08 21:28:08 | 少し理屈ぽいこと
とあることが気になった。

どのような意図があって言ったのは
分からないが,田中原子力規制委員会長が,火山学者の皆さんの成果が十分ではないと言う風にも取れる発言をしたとかしないとか。

その発言自体には興味はわかなかったのだが,別のことに興味がわいた。

何に興味が持っかを書く前に,『人の考えられる時間の長さ』について,先ず,記述したい。

日本では計量法において,時間の基本単位には『秒(記号は s)』を使うことになっている。補助単位として,分や時,または,ミリ秒(ms)やマイクロ秒(μs)も使えるが,基本は,sである。

では,1sの定義は何かというと,その定義は,『セシウム133の原子の基底状態の二つの超微細構造準位の間の遷移に対応する放射の周期の9 192 631 770倍の継続時間』となっている。これは,何を言っているかと言うと,時間という物理量を直接測る指標がないので,電子の振動により出てくるエネルギーの回数を数えて,時間にしている。周波数に直すと,9.192631770ギガヘルツとなる。ギガとは10を9回かけたこと,即ち,10の9乗である。

1sというのは,とても人の感覚に合っている。例えば,

(1)人の正常時の脈拍は毎分あたり,60回程度であろう。1分は,60sだから,1sに1回の脈となる。ガリレオが振り子の等時性を発見したときに時計替わりにしたのが,自身の脈だという逸話が残っている。

(2)脈拍と関係があるのかどうか,分からないが,人が普通に歩く時の1歩もだいだい1sに1歩であろう。

(3)生物学的(もしくは医学的)な意味があるのかも知れないが,高級自動車のばね上共振周波数は,1ヘルツ近く,かつ,1ヘルツ未満であることが一般的である。1ヘルツは1sに1回の振動のことである。このバネ上振動数よりも低くしすぎると,車酔いが起き易くなり,周波数を高くすると,ゴツゴツと感じて,ともに,乗り心地が悪いとなる。

(4)例が自動車ばかりで恐縮であるが,自動車が旋回(つまりコーナリング)する際に,クルマを上から見ると自身も回転している(これを,ヨー運動と呼ぶ)。ヨー運動も共振現象を起こすのであるが,その共振周波数も約1ヘルツである。プラスマイナス0.2ヘルツ程度の差はあるが,約,1ヘルツである。これが何を意味しているかというと,ドライバーがステアリングホイールを1sに1回以上の動かしても,クルマは人の言うことを効かなくなることを意味する。昔(今は知らない),よく行われた実験は,ステアリングホイールをプラスマイナス30度ずつ交互に回し,その回す速さを変えて,クルマの挙動(横加速度)を測る実験である。この実験をすると,1ヘルツ以下では,クルマは,ステアリングホイールの動きに合わせて動くのに,1ヘルツ以上になると,ステアリングホイールの動きに合わなくなる。スポーツカーは,この応答する周波数を少しでも高くしたものだある。しかし,クルマのヨー運動の共振周波数は,ホイールベースとタイヤによりほとんど決まってしまうので,市販車では,1ヘルツが2ヘルツにできると言うものではない。一方,ロケットの運動は10ヘルツ以上で進行方向を制御される。


他にも例はあるかも知れないが,1sというのは,人の生きている環境に非常に密接な時間である。

しかし,人にとって,10年というのは,一つの区切りとなるほど長い時間である。そして,30年となると,相当に長い時間となる。

30年という時間を導いたところから,やっと,本題に入る。30年も時間があると,何が,起きてもおかしくはない。景気変動はもちろん,天変地異も戦争も起きる。今日は,米ソ冷戦の象徴であったベルリンの壁が壊れてから25年だということだが,30年も経たないうちに,今は,中近東がとても複雑なことになっている。

電卓(できれば関数電卓)を叩いてみて欲しい。

1s×60(これで1分)×60(1時間)×24(1日)×365(1年)×30(年)=946,080,000 sとなるはずだ。時間の逆数は周波数になるから,30年というのは,0.000000001056993ヘルツ=1.056993 (nHz)となる。 ここで,やっと,10のマイナス9乗のナノ(n)の世界が出てくる。

30年とは,1ナノヘルツ(nHz)の世界なのである。

一方,原子力発電所の原子炉の中で起きている現象はというと,一つの中性子が一つのウランに衝突し,そして,次のウランに衝突する時間は,Wikipedeaの記事であるが,約10ナノ秒(ns)なのである。周波数に直すと,100,000,000ヘルツ(Hz)=0.1 GHzである。

なにを言っているのかというと,地震や戦争,その他もろもろのリスクは,nHzの時間スケールで起き,原子炉の中の物理現象は,0.1GHzの世界で起きている。

桁数のみの差で,17桁違う世界である。 桁数の単位だと『10×1億×1億=10京』となる。

火山学者の人たちが研究しているのは,1ナノヘルツの世界の物理現象である。原子炉を制御するためには,0.1ギガヘルツの世界である。

それぞれの分野の二人の学者がそれぞれの専門について話しをしたとすると,話している時間のスケールが全く異なる。

30年に一回しか採取できないかも知れないデータを基に,10ナノ秒の現象の制御に利用しようと言うのは,余に,無理がある。それぞれの,専門でのベストエフォートな成果を出すしか無い。

ただし,10ナノ秒で起きる現象を研究している人たちの方が圧倒的に有利である。 なぜなら,人の感覚の1sよりも短い時間で実験が可能だからだ。かつ,繰返しの実験も出来る。だから,原子力発電所は建設され,運用されている。 これが,人の感覚と遠い,30年に1回実験できるかどうかの現象であったなら,実現はされていない。

30年に一度しか起きないため,懲りない人の問題は,『戦争』であろうか。



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