底冷えに耐えかねて長等商店街に駆け込んだ。私はめでたい名前の食堂に入りきぬがさうどんを頼んだ。そしてお茶の入った湯飲みを両手で握り徐々に指の感覚を取り戻した。
きぬがさ(衣笠)とは食べやすい大きさに刻んだ揚げを卵とじにしたものだ。大津は京都から近いので食文化も強い影響を受けているのだろう。
店主が言った通り「ごく普通のうどん玉」だが、雪の日にはご馳走になる。卵をフワフワに仕上げているのは流石だ。広島では馴染みのないメニューをこれからは自分で作ろうと思った。
長等商店街の人は挨拶がきちんと出来ていた。それは慇懃という感じではなくまったく自然だった。私は故郷の商店街が寂れた要因を遠回しに教えられて恥ずかしくなったのである(笑)

