金蔵は処方箋調剤薬局の中で所在無げに待っていた。そこにブリジットバルドー似の女がいるのに気づき視線を女の尻に向けた。彼はにんまりし、念力で秋波を送った。だが女はそれに気づかずすぐ調剤室の中に消えていった。
途端に彼の表情は曇った。スケベそうな柔和な目が一変、今度は獲物を物色する刺のある視線に変わった。
周囲をしきりに見まわす彼のその様子は、まさに挙動不審者そのものだった。
そんな中、突然体の動きが止まった。彼の燃えたぎる目はある一点に注がれていた。『のび~るフィット「ライフリー」』
金蔵の斜め前の棚にそれは置いてあった。
おじいちゃんの愛用品、添え書きにお出かけパンツとある。
それは109で若いねーちゃんに教えてもらったパンツとはえらい違う代物だった。
「阿仁野さん」「阿仁野金蔵さん」「金蔵さん」何度も呼び出す声に彼は気が付かない。
「漏れ防止薬一年間分で~すよ」
それを聞いて我に返った彼は、「はいはいはい。阿仁野ですが」
「それと申し訳ないんですが、うちには漏れ防止薬はありましたが、ひごずいきは置いてないんです」
周りの好奇な視線が彼に注がれた。