バルサンの効果は抜群だ。畳の至る所に、仰向けになったゴキブリ、シラミ、インキンタムシ、水虫が手足をピクピクさせている。まさに虫の息だ。
裸電球が蚊帳の中に灯り、べとべとした茶色のハエ取りテープが静かに垂れ下がっている。へばりついた百匹ほどのハエは、世紀末の形相を呈し喘いでいる。その表情は、僕の大先輩アニキン大魔王そっくりだ。彼は昔からこう言われ続けて来た。だが、意外とこの事実を知っている者は少ない。もちろん僕の性格からして、このことは表立てるわけにはいかない。
擦り切れ赤褐色に変色した畳の上に丸いちゃぶ台が無造作に置かれてある。その脇に、たくあんと田舎味噌仕立ての臭う味噌汁を置き、さらに強烈な臭いの納豆をごはんにかけ、おいしそうに食べるアニキン大魔王。納豆特有のネバネバ感に酔っている。そのネバネバが彼の口の周りを茶色に染めている。こちらに顔を向け、鼻をほじりながらニタっと笑う。そうしたかと思うと急に、値踏みするような視線を僕に向ける。
超高齢・元お嬢様たちには、この彼の表情がたまらないらしい。
現在、超高齢者マンションの理事をする彼は、自らを奮い立たせるためにユンケルとオロナミンＣを愛飲する。君は若くはない、だが老いてはいない、と言ってあげると、ヨダレをたらし喜ぶ。僕に全くそんな趣味はないのに彼は、好奇の目を向けてくる。鳥肌が立つ。お陰で僕は、三日間寝込む。
やがて彼は、僕は忙しいのら、、、、レレレとつぶやき、レレレのおじさんと一緒に外廊下で、逆立ちを始める。困ったもんだ。時々、バカボンのお父さんと一緒に公園のトイレを掃除することもあるようだ。これが彼の日課。行ってやりたいが、ぐーちゃんは忙しいのら。
容赦のない焼き尽くすような強烈な日差しは、今日も僕の肌を焦がす。
最近、馴染みになった保冷剤入りの帽子を被り、なぜか今日は違ったコースを歩む。
さて、これから鹿児島に行って、広島に向かおう。そして神戸に寄り、名古屋に行くという計画。を練ったが、すぐ断念した。
遅い昼食をとり、やってきたのはシアトルベスト!!!!!!!＾＾ いつものキャラメルラテホットショートを頼む。眠い。一瞬意識を失くし、頭がぐらっと前のめりになる。立ち直る。
