不肖Tamayan.com駄弁録

「英雄は自分のできる事をした人だ。凡人はできる事をせずに、できもしない事を望む。」byロマン・ロラン

『刑事貴族』

2006年09月02日 01時00分06秒 | 徒然駄弁-映画編
 今日は、映画カテゴリーに入れてはいるものの、一つのTVドラマについて語ろう。今回語るのは、『刑事貴族』(でかきぞく、と読む。)、である。昨日、事情があって、日付が変わってから夕食をとった。テレビをつけ、たまたま回したチャンネルで、何とも懐かしいドラマが放映されていた。それが、『刑事貴族』、である。
 このドラマは、随分古い刑事ドラマで、それほど高い人気を誇ったドラマでもない。1990年春に放映が始まって以来、主人公が三度代わり、プロデューサーも変わった。かような事情があってか、全体的に視聴率が伸び悩み、92年末をもって終了した。第一話放映直前に終了した『あぶデカ』や、その後一世を風靡する『踊る大捜査線』とも異なり、社会的にブームを引き起こしたわけでもない。
 しかし、『刑事貴族』には、意外とファンが多い。三代目主人公水谷豊編ではあるが、何度となく再放送され、かくいう拙者もよく観ていた。少し検索してみたところ、"Wikipedia"にも載っていた。件のサイトによると、ビデオ・DVS化を望む声も強いという。上述の通り長期間放映されたわけでもなく、決して高い人気を誇ったわけではないにも関らず、今でも根強い人気を誇っている。
 特段目を引く特徴も無いのだが、勝手にその人気の源を推測すれば、主人公の交代に伴う雰囲気の変化にありそうである。初代は舘ひろしが務め、その何とも渋いハードボイルド路線が、人気を博した。続く二代目を何と郷ひろみが勤め、これまた暗い影が射した役を演じていた。そのあまりの暗さ故が仇となったのか、二代目は、僅か半年で終わった。
 三代目を水谷豊が務めるようになると、ドラマのカラーは、一変した。水谷の軽妙なキャラによって、随分コミカルさが増し、先二代になかった「笑い」が生まれた。「あーら、お恥ずかしいったらありゃしない」、「散ってくれ!」など、口癖のように使われた台詞を、放映されていた当時真似した記憶がある。とにもかくにも、一つのドラマシリーズで、かくも主人公が代わってカラーが変わったものは、他に例がない。
 かような変化が、このドラマの個性を創り上げていたように思う。脇を固める面子は大体同じなのだが(それでも、時折大幅入れ替えがあったが。)、主人公が代わって、周りの人間達の空気も変わる。署内のセットも同じで、出演している役者が同じでも、主人公が代わるだけで随分と変わるものだと思わされる。それ故、なかなか飽きが来ず、手堅い人気を誇ったのだろう。
 こうした事情を裏読みすると、このドラマは、実のところレベルが高かったのである。主人公の変化に合わせるのは、演じる側としては大変なのだろう。しかし、それを見事に合わせる演技力は、素晴らしい。また、一つのシリーズでこれだけヴァリエーションを作れるのも、評価出来るところである。不安定な製作事情がもたらしたものではあるが、災い転じて福となったところもあったということだろうか。
 十年以上ぶりに再放送されていた『刑事貴族』を観て、改めてその根強い人気に軽い驚きを覚えた。拙者は刑事ドラマフリークであるが故に、『刑事貴族』も、全て観た。再放送された時も、結構観ていたものである。繰り返せばそれほど目を引く特徴は無いのだが、放映されるとついつい見入ってしまう。『刑事貴族』、そんな静かな且不思議な魅力を持ったドラマである。
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