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自分を救うためとはいえ、自分を裏切った女を許せるか。本稿をご覧の男性の方々、いかがだろうか。かくもいささか複雑な男女の関係を描いた作品が、今回紹介する"THE GETAWAY"(1994年米国。邦題『ゲッタウェイ』。)である。
なお、最初に一点注意を付しておけば、本作は、1973年にスティーブ・マックイーン主演で上映された不朽の名作である。しかし、今回紹介するのは、1994年にアレック・ボールドウィン(『レッドオクトーバーを追え』『マーキュリーライジング』『アビエイター』など)主演で作り直されたリメイク、である。拙者はマックイーン版を未だに観ていないが、リメイク作品を観て、この作品を好きになった。それ故、今回は、リメイクの方を紹介する。
米国のとある刑務所に、一人の男が収監されていた。男の名は、ドク・マッコイ。評判高き強盗のプロで、かつての仲間に裏切られた故に、塀の中にいた。彼の腕を買い、ある犯罪組織のボスが、彼を釈放させる。目的は、ドッグレース場の売上金を彼に強奪させること。塀を出て、仕事仲間でもある妻と再会した彼は、組織が用意した仲間と共に、強奪を成功させる。
しかし、強奪した金を届けた先で、彼は、衝撃の事実を知る。自分を刑務所から出すために、妻は、自分を裏切っていた。秘密が発覚した妻は組織のボスを殺害し、二人は逃亡を図る。刻一刻と追っ手が迫る中、妻の裏切りを責め続ける男と夫に許しを乞い続ける女の逃避行が、続く。
マックイーン版を観た人のレビューによると、同じ脚本家がシナリオを担当した事実もあり、相当程度忠実にリメイクされているようだ。その評価は、人によって綺麗に分かれている。オリジナルのマックイーン版の方が良いと評する人もいる他方で、リメイク版にも高い評価を与える人もいる。
しかし、マックイーン版を観ていないものの、拙者としては、リメイク版も良い作品だと思う。妻とはいえど、自分を救うためとはいえど、自分を裏切った女を許せるか、という何とも難しいテーマを軸にしている点が、良い。マックイーン版では相当激しいDV(90年代に作られたリメイクでは、この辺が薄められている。時代を感じさせる。)が行なわれているようであり、第三者的な立場であれば、妻に同情する人も多いだろう。
翻って、「もし自分がこの夫の立場であれば」と考えると、そうも単純にはいかない。いくら「あなたのためにしたことよ」と言われても、あっさり許せやしないだろう。一生許せないかもしれない。かくもやっかいな空気が充満した中、ボロボロになりながらも歩き続ける夫婦の姿に、少しばかり目頭が熱くなる。ある意味非常に渋い、なかなか良い作品だと思う。今度こそ暇を作って、マックイーン版も観たいところである。
ちなみに、最後に出演俳優について説明しておくと、主演は上述の通りアレック・ボールドウィンである。妻役をキム・ベイジンガーが演じ、リメイクよりマックイーン版を好む人でもこの配役に高い評価を与えるほど、優れた演技をしている。また、ジェームズ・ウッズやマイケル・マドセンといった定評のある俳優達が、しっかり脇を固めている。特に、マドセンの演技は、ベイジンガー同様に、マックイーン版以上に高い評価を受けている。
一般的に、リメイクは難しいと言われる。オリジナルが素晴らしい作品であれば(言わずもがな、だからこそリメイクされるわけだが。)あるほど、製作サイドには、オリジナル以上のクオリティーが求められる。それ故、失敗するリメイク作品も多く、よほど自信がない限り迂闊に手を出し難いものである。本作は、賛否両論あれど、個人的には好きな作品である。