読後感

歴史小説、ホラー、エッセイ、競馬本…。いろんなジャンルで、「書評」までいかない読後感を綴ってみます。

黒衣の女

2007年02月09日 | ホラー
                   スーザン・ヒル   ハヤカワ文庫NV

 これは怖い。サイコ・ホラーもサイエンス・ホラーもスプラッタものもそれぞれに好きだけど、こういう幽霊ものもやっぱり凄いなと思う。
 前半は、沼沢地方の美しい自然描写が見事で、亡霊かなって思える黒衣の女もひっそり静かで、しんみりした民話風の話かな?って思う。ところが、夜になって雰囲気は一変!夜中に沼地にさまよい出た(こいつはアホか!)主人公が聞く、馬車が流砂に飲まれる音、ポニーのいななき、子供の悲鳴。閉じられた子供部屋から聞こえる謎の音…。
 そしてクライマックス。ついに開かれた子供部屋、愛犬を沼にいざなう口笛。再登場した黒衣の女は、恐るべき怨念のかたまり。さらに怖い後日譚。若き主人公は婚約者に振られたものとばかり思ってたが(これ以上はネタばれ)。
 本書は映画ではなく演劇として、その後も親しまれたという。たぶん正解。ホラーものの映画化は、監督や俳優がよほど緻密に作りこむか(サイコ、たたり、シャイニングなど)、開き直ってドタバタB級ホラーにするか(こっちが打率高し)のがいいかも。