読後感

歴史小説、ホラー、エッセイ、競馬本…。いろんなジャンルで、「書評」までいかない読後感を綴ってみます。

天の川の太陽

2009年02月06日 | 歴史小説
                    黒岩 重吾    中公文庫
 すごく面白かった。いわば「小説・壬申の乱」。
 主人公の大海皇子の人格・器量の大きさがいい。人情味があるのに決断力もある、火のように激しいのに自分を押さえて芝居ができるってのがすごいね。
 敵方の大友皇子も憎み切れないキャラ。年季が入ってれば強敵だったろうに。
あと中臣鎌足の底知れなさ、息子の死にも冷静に対処するところ、権謀家でも一味違う。中大兄皇子はずいぶん器が小さく描かれてるけど、秀吉みたいに権力握って性格変わったってことかな。
 蘇我赤兄、大伴吹負(こいつが案外使えなかった。負けてれば敗因)など、敵味方のセコキャラも満載。そして女性陣、讃良妃もいいけど、額田王の艶っぽさももっと見たかったな。
 大海皇子の吉野へのわびしい道のり、その後の脱出行と、反転してからの山野を埋める東国の兵馬のど迫力の対比が素晴らしい。終盤が最高です。