読後感

歴史小説、ホラー、エッセイ、競馬本…。いろんなジャンルで、「書評」までいかない読後感を綴ってみます。

ミザリー

2007年06月22日 | ホラー
               スティーヴン・キング 文春文庫

 私が最も怖かったホラーは、短編では曽野綾子さんの「長い暗い冬」、長編ではこれ。どちらもお化けや超常現象は出てこない。だからこそ怖い。
 交通事故で足がグチャグチャになる重傷を負った主人公の人気作家。熱狂的なファンの元看護婦に救出されるのだが。彼女は、書きかけの新作の原稿を見て「あなたはこんなもの書いちゃいけないわ」って、コンロにくべて火刑(^.^; さらに人気シリーズの原稿でヒロインが死ぬのを発見して激怒。「私のミザリーを殺すなんて(▼▼メ)
 自力では水も飲めず用便もできない状況が、まず圧倒的に怖い。実際「渇き地獄の刑」「小便垂れ流しの刑」みたいな状況もある。中盤で彼女の過去が明らかになった時は、「ここまで異常者に設定しなくてもじゅうぶん怖いのに」と思ったけれども、後半を見て納得。もっともっと怖い、いや痛い刑罰が待っているのでした。
 

ジョッキー

2007年06月12日 | 競馬
                         松樹剛史    集英社文庫

 東京で見つけて、帰りの電車の中で読んだ文庫本です。面白くて、ついつい一気に読んでしまった。
 あとがきに藤代三郎さんが書いている通り、レースシーンがいい。主人公のフリーの中堅騎手が乗る、中山の、阪神の、福島の、条件戦がいい。最後は例によってGⅠになるんですが。もちろん競馬初心者が読んでも、十分楽しめる。
 ただ、どのレースも主人公がうまく乗って、人気より上の着順にもってくるんで「だったら、こいつが干されるわけないだろ」って思ってしまう。そこで出てくる、ロートル馬が格上挑戦した重賞レースの厳しい現実。でも、これも伏線なんでだよね。
 登場する「横暴な馬主」ってのは、いくらなんでもデフォルメしすぎだろうと思ったり、ひょっとしてあんな人もいるのかもと思ったり。