薩南示現流

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　津本陽　　　　文春文庫

　学生時代に後輩から薦められて読んで、実戦の描写に衝撃を受けた本。幕末に猛威を振るった薩摩の超実戦剣法・示現流の創始者、東郷重位が主人公。重位自身は安土桃山～江戸初期の人である。
　剣道有段者であり、試し切り等の経験もある津本氏の小説は、他にない剣戟シーンのリアルさが魅力である。実戦で使いにくい細かな技や駆け引きを省き、シンプルな打ち込みと踏み込み・胆力を鍛えまくる示現流の凄みが伝わってくる。大兵の男を肩から腰骨まで両断したり（ヒエ～！）、木刀で真剣を持つ相手の指を破壊したりと、すさまじいシーンが続くが、重位その人は温厚な性格である。
　上方で重位に示現流を伝えた善吉和尚は６つ年下、重位の一番弟子・長谷部四郎次郎は６つ年上と、学ぶのに年は関係ないことを教えてくれる。本書には幕末～明治期に材をとった、４編の短編も収録されている。
　余談だが、『週間ポスト』連載中の小池一夫氏の「新・子連れ狼」では、重位はなんと大五郎を連れて旅をしている。大五郎も水鴎流から示現流に転向　(^.^;

銀と金

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　福本信行　　双葉社コミックス

　現代のフィクサー・平井銀二と、若い相棒の森田鉄男が主人公。とにかく面白い。私などの感想より、さわりの粗筋で期待感を高めてください。

〔絵画鑑定編〕
　森田が、画商・中条に挑む絵画鑑定勝負。中条は、3枚のうちから本物を当てれば5億の絵が5千万で手に入る。ただし部屋は薄暗く、距離は５ｍ、そして1枚の絵には布をかけて隠されている（それが本物かもしれない）。4億円持参した中条は、１ｍ１億円で絵に近づく権利を「買う」ことができる。さて勝負は？

〔麻雀編〕
　超資産家、誠京グループのドン、蔵前に特殊ルールの誠京麻雀で挑む森田と銀二。
１牌積もるごとに金を払い、親はそのレートをアップする権利があり（ついてこれないと子はオリ）、追加金を払えば2度ヅモも可能という、金持ち断然有利のルール。銀二たちに勝機は？

〔競馬編〕
　農水族のドン・河野と銀二の、1レース丸々私物化しての300億のギャンブル。金と人脈にものを言わせて最高の６頭をそろえる河野。銀二側の６頭は、はるかに貧弱。ところがレース前、銀二は言う。「9割こちらの勝ちです」。

　他に株式仕手戦編、青天井ポーカー編、森田が綱渡りで生き延びる殺人鬼監禁編と神威（カムイ）編など。