読後感

歴史小説、ホラー、エッセイ、競馬本…。いろんなジャンルで、「書評」までいかない読後感を綴ってみます。

立花宗茂

2006年10月21日 | 歴史小説
                            八尋舜右  PHP文庫
 私が一番好きな戦国大名は尼子経久、そして武将ではこの立花宗茂なのです。さてこの本は、宗茂ひとりを描いたのではなく、宗茂の養父にして落雷で半身不随になりつつも数々の合戦を指揮した鬼道雪こと立花道雪、岩屋城の壮絶な討ち死にで有名な実父の高橋紹運、そして宗茂の3者が主人公といっていい。
 とりわけ高橋紹運がわずか8百人足らずで島津4万の大軍を2週間も支えて全滅した岩屋城の戦いは、主人公を差し置いて本書のクライマックスといえる(この時間稼ぎのおかげで秀吉の援軍が間に合い、島津の九州統一は頓挫する)。これほどの人材群をいかせずに家を滅ぼした大友は、わが出身地の大名ながら罪は重い。秀吉から「お前の所には、代えがたい宝(人材)がいるではないか」といわれるシーンが重い。島津軍が引き上げると、宗茂は秀吉軍の到来を待たずに追撃して戦果をあげる。
 宗茂が九州の陣で本多忠勝と引き合わされ、秀吉から「皆の衆、これが東西の勇将じゃ」といわれて顔を赤らめるシーンや、宿敵だった島津義久と出会う「昨日の敵は今日の友」的なシーンはたまらない。
 関が原で西軍につき、貧乏浪人となった宗茂だが、本多忠勝の仲立ちで大名に復帰する。関が原や大阪の陣で徳川につきながらも没落した大名が多かったことを考えると破格の人望だったのだろう。